第57話(第二章第15話) さらにその先へ3
百一回目。
ここからは三回に分けられていました。
まず、二十二体の緑プディンと戦ったあと、次に二十二体の緑プディンが追加され、最後に二十一体の緑プディンがやって来るという連戦です。
合計六十五体の緑プディンとの戦い。
分けてもらえていたのでそれほど難しくはありませんでした。
百二回目から百四回目まで緑プディン合計六十五体(二十二体、二十二体、二十一体)。
百五回目、錫プディン十七体。
百六回目から百九回目まで緑プディン合計六十八体(二十三体、二十三体、二十二体)。
百十回目、錫プディン十八体。
百十一回目から百十四回目まで緑プディン合計七十一体(二十四体、二十四体、二十三体)。
百十五回目、錫プディン十九体。
百十六回目から百十九回目まで緑プディン合計七十四体(二十五体、二十五体、二十四体)。
百二十回目、錫プディン二十体。
百二十一回目から百二十四回目まで緑プディン合計七十七体(二十六体、二十六体、二十五体)。
そして百二十五回目。
錫プディン二十体。
投げて、投げて、投げて、投げて……。
「ちぎっては投げちぎっては投げ」状態で、錫プディン戦は勝利しました。
錫プディンの数が変わらなかったので、このあとは青錫プディン戦が控えているものと考えられます。
気持ちを落ち着かせて、開いたゲートへ。
想定していた通り、ゲートが素早く閉まり始めたので迫ってくる相手と向かい合います。
私は七十五回目や百回目にやったのと同じ要領で青錫プディンに対応しました。
三体の青錫プディンを弾き飛ばし、一体の青錫プディンを放り投げます。
それで決着はつきました。
私がドロップアイテムを回収して外に出ようとした時です。
ゲートが嫌な動きをし始めたのは。
「うそ、でしょ……!?」
それは今さっきやられたばかりだというのに、出入口がまた閉じようとしていたのです。
私はハッとしました。
――青錫プディンの数が増えていなかったことに。
これ流れでいくと、青錫プディンより強いのが現れる可能性が高いのでは!?
嫌な予感がしました。
背中には嫌な汗が流れていて。
私は思わずゲートが閉まる前にこの部屋を出ようとしました。
しかし――
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ、ゴーンッ!
私が逃げることをこの部屋は許してはくれなかったのです。
あと一歩というところでゲートは閉まるスピードを速くして、私を閉じ込めました。
私は壁になってしまったゲートを叩きました。
けれど、全力で叩いてもびくともしません。
こんなに攻撃力があるのに……!
そうこうしているうちにヤバい敵がその姿を現しました。
空気が冷え切ったような感覚を受けて振り返って見ると、そこには青い魔石のような、それよりも濃い青の、まるで
私はその美しさに思わず見惚れてしまっていました。
ですが、そんな場合ではありませんでした。
「かは――っ!?」
そのプディンが一瞬消えたかと思ったら、私の身体は飛ばされて叩きつけられていました。
天井に。
まるでとんでもない威力のアッパーカットをされたような感覚です(相手に手なんてありませんけど)。
どうすることもできずに、あとは落ちるだけとなっている私に、そのプディンは追い打ちをかけてきました。
回転を加えながらジャンプをして、地面へと落ちようとしている私をさらに吹っ飛ばして来たのです。
私の身体は反対側の壁までものすごいスピードで移動して、ぶつかって止まりました。
「んぐ……っ!」
地面へと崩れ落ちる私。
そんな私にも、プディンは攻撃の手を止めてはくれません。
私に伸し掛かってきて、そこで暴れ始めたのです。
……ま、まずいです!
私の防御はこれでもかというほどに高めてありますからほとんどの攻撃の威力を大幅に抑えることができます。
しかしこのゲームは仕様上、ダメージを「1」より下げることができません。
多段攻撃は、HPがそれほど高くない私にとって避けなければならないものでした。
もがいてなんとか腕を振り回すと、プディンはそれに当たるのを恐れて、でしょうか?
すぐさま距離を取りました。
私の攻撃を受けるのはまずい、と判断しているように見えます。
私は考えました。
私の攻撃力はこのプディンをもってしても警戒するレベルなのだとするのなら、こっちから相手に突っ込んでいってどんな攻撃でもいいから一発当てられれば勝てるのではないか――と。
ですが、これには問題がありました。
相手の素早さが速すぎるのです。
瞬く間に私の背後に回り込んで、私を壁まで飛ばしてくる宝石のようなプディン。
「いぎっ!?」
この素早さの差が、一方的な展開をつくり上げていました。
私はプディンに一撃も与えることができず、壁や天井まで吹き飛ばされたり、地面に倒されてぐりぐりと潰されたりをされ続けました。
気づけば私は
――HP:13/76
……ピンチです。
ふらふらで肩で息をしていました。
対してプディンの方はというと、私が手も足も出ないことを悟ったからでしょうか?
「プギュギュギュギュ……! プギュ?」
身体を「く」の字に曲げて小刻みに震えながら甲高い鳴き声を発してきていました。
私のことを捉えながら(相手に目はないので、たぶんですけど)。
笑っているみたいです。
口がないように見えるのにどこから声を発しているのでしょう?
謎です……。
……っていうかこれ、私のことバカにしてませんか?
仕留められるのだからさっさと仕留めればいいのに、わざわざ攻撃を止めてその行動を取ってきていたのです。
完全に煽ってきていますよね?
もしかして、モンスターにも薬師は最弱だと思われているのでしょうか?
もしそうだとしたら、認識を引っ繰り返させてもらいたいと思います。
私は薬師以外をやったことがないので、モンスターが職業に対して何を思っているのかの正解はわかりませんが。
余裕があって私に時間をくれるみたいなので、有効に使わせてもらいます。
ポーチから『あれ』を取り出して、私は呟きました。
「……『ポーション昇華』」
私が何かをしていることに気づいたのでしょう。
宝石のようなプディンが仕留めにやってきました。
横からの攻撃。
それを私は甘んじて受けます。
使うタイミングはここじゃない、と判断したので。
壁まで飛ばされて、でも、倒れるのは気力で耐えて。
そうしているとプディンが、狙っていた攻撃をしてきました。
――アッパーカット。
「ぐふ――っ!」
ここです!
私は身体を天井に叩きつけられながらも、特大フラスコの中身を撒きました。
私に追撃をしようとジャンプして床から離れていたプディンは空中で身動きが取れません。
黒紫色の液体がプディンに掛かります。
「プギュ――ッ!?」
私が薬師だからつくれる猛毒薬(性能はスキルで上げていますが)を浴びた宝石のようなプディンは黒い粒子となって消えていきました。
私はそのあとに地面へと落ちていきました。
この作戦、あのプディンに猛毒薬が掛からなかったら、猛毒薬が溜まったところに私が落ちることになるかもしれなかったので成功してよかったです……。
近くに転がっていた粘質水を拾って相手の正体がわかります。
――
「……きれいだったけど、性格はよくなかったかな」
私の愚痴が広い部屋に響きました。
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