第56話(第二章第14話) さらにその先へ2

 錫プディンは緑プディンの上位種ということですが、素早さに関して言えばそれほど大きな差はありません。

 下位種である緑プディンがあまり速くないため、強化されても……って感じなのでしょうか?

 今の私の攻撃力は異常なことになってしまっていますから、相手の素早さ以外のステータスはほぼ無視できてしまいます。

 ですので、錫プディン八体の相手をするのは緑プディン八体を相手にするのとさほど変わりません。

 今の私にとっては相手の数が多い方がきついため、さっきまでやっていた緑プディンを三十二体も同時に相手をする方が難しい気さえしました。



 最後の一体を投げて、戦闘終了です。

 思った通り、緑プディン三十二体戦の方が時間がかかりました。

 そして問題なのは、このあと、ですよね……。


 青錫プディン。


 錫プディンの数に変化が見られなかったということは、今までの感覚からすると恐らく出てくるでしょう。

 青錫プディンは錫プディンの上位種とのこと。

 ですが、その素早さは段違いに上がっています。

 素早さのステータスを無視できない私にとっては厄介な相手です。

 しかも、バフをかけて素早さを上げてくるのですからなおのこと。

 ああ、素早さも強化できればなぁ……。


 兎に角、気合を入れ直さなければ!

 私は頬を叩いてから、部屋の出入口へと向かいました。


 開いていたのに再び封鎖されるゲート。

 やはり現れたようです!

 私はすぐに振り返って、青錫プディンを掴むことに成功します。


「やった――あぐっ!?」


 何が起こったのかわかりませんでした。

 青錫プディンは捕えていたのに、突然左方向から衝撃を加えられて私は吹っ飛ばされたのです。

 壁に当たってようやく止まった私は、どうして私が飛ばされたのかをすぐさま確認しました。

 すると、原因がわかります。

 私の視界に収まったのは、



――二体の青錫プディン。



「……そっか。君も増えるんだね……っ」


 一体でも厄介なのに、それが二体もいるなんて……。

 このゲーム、どこまでもプレイヤーを一からやり直させたいように思えてなりません。



 私は二体の青錫プディンに苦戦を強いられました。

 一体をやっとのことで捕まえても、投げる前にもう一体に攻撃されて吹き飛ばされてしまうのです。

 私はそれを六回も繰り返していました。

 捕まえられずに攻撃を受けてしまうことも多かったので、HPは半分ほど削られています。

 早く打開策を見つけないと……!

 私の頭に『一からのやり直し』の文字がちらつきました。


「……そんなことになってたまるか……っ!」


 私は必死になって、攻めようとしてきた青錫プディンの一体を捕まえます。

 その個体を投げようとすると、タイミングを見計らったかのように襲ってくるもう一体の青錫プディン。

 それを視界に捉えた私は、深くは考えられなくなっていて……。


 もう、がむしゃらでした。

 力任せ(攻撃力任せ)に捕まえていた青錫プディンを振り回した私。

 それが襲ってきたもう一体の青錫プディンを弾いて壁まで飛ばし、消滅させます。

 この結果に驚いた私は手の力が緩んでしまって、振り回していた青錫プディンが腕からすっぽ抜けて飛んでいき、壁に衝突させてしまいました。


「プ、プギュウ……」


 悲しそうに鳴いて消えていく青錫プディン。

 私は二体の青錫プディンに勝ちました。

 勝ちました、が……。

 なんとも言えない勝ち方でした。


 ただ、二体の青錫プディンとの戦いを経て得たものもあります。

 私はこれまで教えられた通りの型で戦っていました。

 ですが、これは試合ではないので律儀に型を守る必要はありません。

 今の私は攻撃力が高く、パワーがあります。

 ですから、できることは多いはずです。

 例えばさっきみたいに、敵を振り回す、とか。

 このパワーを活かして臨機応変にやっていけば、もっとスムーズに相手を倒せるかもしれません。

 私は、戦闘時間を短縮する方法を考えることができたのです。



 続けます。


 五十一回目、緑プディン十七体。

 ……十七体?

 減っています。

 しかも、明らかにおかしい減り方です。

 私は警戒しながら全ての緑プディンを倒しました。


 私の感覚は当たっていて、十七体を倒し切ると追加で十八体の緑プディンが現れます。

 二回に分けたのは部屋の広さを考慮してのことでしょうか?

 私としては戦いやすくなっていいのですが……。

 ただ、こういう配慮がされているということは、これはバグではないということになるのでは……?

 私はゲームをあまりやらない方なので、詳しいことはわかりません。


 とりあえず、合計三十五体の緑プディンを倒すとゲートが開きました。

 今までと違うことが起きていたため、出る時にイレギュラーが発生することを警戒していたのですが、それはなくてホッとしました。



 五十二回目から五十四回目まで緑プディン合計三十五体(十七体と十八体)。


 五十五回目、錫プディン九体。


 五十六回目から五十九回目まで緑プディン合計三十八体(十九体ずつ)。


 六十回目、錫プディン十体。


 六十一回目から六十四回目まで緑プディン合計四十一体(二十体と二十一体)。


 六十五回目、錫プディン十一体。


 六十六回目から六十九回目まで緑プディン合計四十四体(二十二体ずつ)。


 七十回目、錫プディン十二体。


 七十一回目から七十二回目まで緑プディン合計四十七体(二十三体と二十四体)。



 そして七十五回目。

 ……錫プディン十二体。


「ああー……。これ、青錫プディンも増える感じかな? ……増えてるよね、きっと……」


 私は聖水を飲んで気合を注入し(ダメージを負った時の保険)、錫プディン十二体と対峙しました。


 錫プディン戦はすぐに終了し、ゲートが開いて私を誘ってきます。

 私は二、三回深呼吸を繰り返してから、ゲートへと足を進めました。


 ゲートが動き出して塞がろうとするのを視認した瞬間に私は身体の向きを変え、迫ってくる青錫プディンを捕まえました。

 そして、私に向かって突っ込んできていたその勢いも利用して青錫プディンを振り回します。

 最初に私に向かってきたプディンよりほんの少しだけ遅れて私を攻撃しようとしてきていた二体の青錫プディンを弾き飛ばし、掴んでいた最初の一体も放り投げると、戦闘は終了しました。

 やはり、青錫プディンは「ルールがある試合」ではなく「ルールのない勝負」での戦い方が求められるようです。



 続けましょう!


 七十六回目から七十九回目まで緑プディン合計五十体(二十五体ずつ)。


 八十回目、錫プディン十三体。


 八十一回目から八十四回目まで緑プディン合計五十三体(二十六体と二十七体)。


 八十五回目、錫プディン十四体。


 八十六回目から八十九回目まで緑プディン合計五十六体(二十八体ずつ)。


 九十回目、錫プディン十五体。


 九十一回目から九十四回目まで緑プディン合計五十九体(二十九体と三十体)。


 九十五回目、錫プディン十六体。


 九十六回目から九十九回目まで緑プディン合計六十二体(三十一体ずつ)。


 百回目、錫プディン十六体。

 それから青錫プディン四体との戦闘。

 七十五回目の時と同じことをして倒しました。

 一体残ってその個体に逃げ回られてしまったため、かなり時間がかかりました。

 本当に自分の素早さをどうにかしたいです……。

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