第52話(第二章第10話) その先
今の私の防御力は「99,321,155」。
防御バフポーションL(Lv:11)のおかげで268万倍(正確に言うと2,684,355倍)になっています。
それでも「1」のダメージが入っていますので、使っててよかったと思います!
防御バフポーション様様です!
っていうか、こんなに防御力が高いのに「1」のダメージを負わせるって……!
どれだけ攻撃力高いんですか、
ですが、それだけの高さを誇っていたから攻撃力には自信があったのでしょうか?
青錫プディンはぴょんっと小さく跳ねて、その動きを止めていました。
まるで「なんで生きてるの!?」と言わんばかりに。
驚いているのは目に見えてわかりました。
相手が攻めてこないなら、私は準備を整わせることができます。
私が戦う態勢を取ったのを見たからでしょう。
私を倒すという目的を思い出した青錫プディンがこちらに飛び込んできます。
緑のオーラを纏わせていましたから、その動きはすさまじく速いものでした。
それでも、私の手にはこのモンスターに対抗できる術があって。
私はそれをものすごい勢いで迫ってくる青錫プディンに浴びせました。
これまでも幾度となく私を助けてくれた、私のメインウェポン――猛毒薬を。
――パァアアアアアアアアンッ!
青錫プディンが私から1メートルほど離れた位置で弾け飛びます。
残されたのは青錫プディンの粘質水と青錫のE魔石。
それらを拾うとゲートが開かれました。
戦闘終了です。
あっ、あと、この戦いで私のレベルは31になりました。
……………………
ボス戦、二十六回目。
ここからは未知の領域です。
青錫プディンを倒したあと、緑プディン戦にどのような変化があるのか、私の不安は小さいものではありませんでした。
緊張しながらボス部屋に入って、現れたのは
――緑プディン二十体。
区切りのボスを倒すと三体増えるという仕組みは変わらないでくれたようで、私はホッとしました。
私は猛毒薬が入った特大フラスコを構えて、速攻で決着をつけに行きます。
問題なく倒すことができました。
ボス戦、二十七回目。
油断してやられてしまっては目も当てられませんので、私は違うことが起きるかもしれないと警戒しながらボス部屋に入りました。
出現したのは変わらず緑プディン二十体。
イレギュラーに対応できるよう心構えをしながら倒しました。
それからも気を張っていたのですが……。
二十八回目、緑プディン二十体。
二十九回目、緑プディン二十体。
三十回目に至っては錫プディン五体。
戦闘終了後に開いたゲートを出ようとして再びゲートが閉まる、なんてことはなく……。
何度か出たり入ったりを繰り返しましたが、結果は変わらず……。
青錫プディン、三十回目には出てきませんでした。
続くボス戦三十一回目。
対する緑プディンは二十三体。
どうやら規則性を取り戻したようです。
広いボス部屋ですが、流石に相手が二十三体ともなると圧迫感を受けました。
猛毒薬があるため倒すのに問題はなかったのですが。
三十二回目、緑プディン二十三体。
三十三回目、緑プディン二十三体。
三十四回目、緑プディン二十三体。
そしてボス戦三十五回目。
青錫プディンが来るかも……! と危惧していた私でしたが、現れたのは錫プディン六体……。
しかも、終わったと油断させておいて再び閉じ込める演出もなく……。
……青錫プディンは三十五回目も不在でした。
……………………
青錫プディンが出てこなかったことで気が抜けていたのか、または、青錫プディンは経験値をたくさんくれるからその経験値はほしかったと少し残念に思っていたのか……。
兎に角、私は次に青錫プディンが出てきたらどうしようか、ということを考えてしまっていました。
その所為でやらかします。
目の前のことに集中できていなくて準備が
三十六回目。
緑プディンの数は二十六体。
猛毒薬があればてこずることはないと思われます。
そう――猛毒薬があれば。
私はすぐに決着をつけようとして、ポーチの中を見て愕然としました。
残っていたのは――
――特大フラスコ(猛毒薬L Lv:4)3/16
これ一本だけだったのです。
特大フラスコは二十七本もあったのに他は使い切ってしまっていました。
私は頭の中が真っ白になりました。
考えれば簡単にわかることでした。
このボス部屋までの道中でリスセフを十体倒していて。
それから緑プディン五体と四戦。
錫プディン戦。
緑プディン八体と四戦。
二体の錫プディン戦。
緑プディン十一体と四戦。
三体の錫プディン戦。
緑プディン十四体と四戦。
四体の錫プディン戦。
緑プディン十七体と四戦。
四体の錫プディン及び青錫プディン戦。
緑プディン二十体と四戦。
五体の錫プディン戦。
緑プディン二十三体と四戦。
六体の錫プディン戦。
その全てを猛毒薬で対処していたのですから。
問題なのは、私にはこれ以外の攻撃方法がないということ。
三回しか使えないのではどう頑張っても二十六体を倒すなんて不可能です。
私はパニックに陥っていました。
反応が遅れます。
「――あ、ぐっ!?」
緑プディンのヘッドバッドを食らってしまいます。
軽く叩かれたくらいの感覚でそれほど痛くはなかったのですが、痛みは覚えました。
頭の中が大混乱に陥っていると、背後から別固体の伸し掛かり攻撃を受けてしまいます。
「痛っ!?」
私は何かを悟ってステータスを確かめました。
すると――
――HP:44/46
「ええっ!? な、なんで……っ!?」
HPが減っていたのです。
私は直感しました。
青錫プディンの攻撃と緑プディンの攻撃で入るダメージが一緒だったということは、
――このゲーム、ダメージを「0」にはできない仕様なんだ、と!
威力がどうやって決められているのかは定かではありませんが、あの殺気に満ちた攻撃とこの明らかに緩い印象の攻撃がともに「1」のダメージになるということは、そうだとしか考えられません!
私は、顔からサーッと血の気が引いていっているのを感じました。
猛毒薬を増やしてくれるマーチちゃんはこの場にいなくて。
猛毒薬をつくろうにも材料がなくて。
攻撃できる手段を薬師は持っていなくて。
それでも、相手の攻撃は通るわけで……。
私は詰んでいることに気が付いてしまったのです。
相手を倒すことができないのですから、逃げ続けてもいつかはやられてしまうことになります。
ゲートは塞がれていますから、助けが来ることも望めません。
……ああ、ちゃんと持ち物を確認していたら……っ。
後悔が押し寄せてきていました。
悔やんでもあとの祭りなのですが。
涙が込み上げてきます。
視界が歪んで、緑プディンの攻撃を躱しきれなくなって。
気づけばHPは、あっという間に一桁になっていて……。
私は思いました。
――嫌だ! 死にたくない!――と。
こんなところで死んでなんていられません!
マーチちゃんと楽しい時間を過ごすんだ、と決めたのですから。
私はポーチの中を漁りました。
そして、この状況を打開できるアイテムを見つけます。
――『帰還の笛』
私は縋りました。
取り出して吹くと石でつくられた空間は消え失せ、干からびた噴水が目の前に現れます。
私はカラカラの街に転移できたのです!
「た、助かった……っ!」
足の力がなくなって、私はその場に崩れ落ちました。
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