第47話(第二章第5話) ボス周回1
「た、助かったの……」
マーチちゃんがその場でぺたんと座り込みます。
あのままリスセフに追われていたら危なかったでしょう。
猛毒薬を使う判断をしたのは正しかったと思います。
リスセフは私たちよりも速いので。
それに今までの経験上、逃げている最中に他のモンスターにも見つかって追い駆けてくる敵が増えてしまうことが考えられますから。
「つかまって?」
「うん……」
私はマーチちゃんに手を差し出して、彼女が立つのに協力します。
ここは安全地帯ではないので早く移動した方がいい、と思って。
移動をする前に、さっきのリスセフが落とした魔石を回収します。
それは緑の魔石でしたが、中にEという形をした金属のようなものが入っていました。
これがE魔石のようです。
MPを気にしなくてよくなったマーチちゃんに二つのE魔石(緑)を回収してもらって、私たちは再度ダンジョンを進み始めました。
それから……。
四時間かけて、私たちは「リスセフ遺跡」七階にある
いくつかの問題点を浮き彫りにさせながら。
問題点①、前回来た時がどれだけ運がよかったか、ということ。
前は一回も戦わずに安全地帯に来ることができていたのです。
それが今回は八十体のリスセフと戦う羽目に。
数えていたわけではありません。
特大フラスコが五本空になっているので、それで何体倒したのかがわかってしまったのです。
E魔石はその分ゲットできたのですが……。
問題点②、マーチちゃんのスキル『収納上手×1』が魔石に関しては全然収納上手ではなかったこと。
そのスキルは同一のアイテムを九個までスタックできるスキルなのですが……
――魔石まで九個までしかスタックできなくなる、という欠点があったのです。
その欠点を十個目を収納した時に見つけて……。
私のポーチは魔石なら百個以上スタックできることがわかっていましたから、魔石は全て私が回収することにしました。
マーチちゃんのMPの問題が解消できたのに、なかなか上手くいきませんね……。
問題点③、ここまで来るのに時間がかかること。
プディンを一体倒せば魔石を四つも落としてくれるので、私はここで魔石を集めようとマーチちゃんに提案していたのです。
しかしリスセフに襲われて、地形がわからずに道に迷っていた一回目よりも時間がかかってしまっていました。
実は、第一層の黄プディンの巣で魔石集めをしようと考えていたのですが、第一層のエリアボスを倒してしまってから、そこを通ってもボス部屋に招かれることがなくなってしまったのです。
そのため、似たような構造をしていて、ログアウト→ログイン→ボス戦を繰り返せそうな第二層の「巣」に目を付けたのですが……。
イベントには期間が設けられているため、移動時間が長くなるのはあまりいいことだとは思えません。
上位を狙っているのですから。
リスセフを八十体倒しているのでマーチちゃんのレベルが上がっています。
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名前:マーチ レベル:12(レベルアップまで49Exp)
職業:商人(生産職)
HP:30/30
MP:20/20
攻撃:28
防御:23
素早さ:24(×1.32)
器用さ:32
装備:『寒熱対策のローブ』
『防塵ゴーグル』
『速さのペンダントR』(素早さ16%アップ)
『速さのブーツR』(素早さ16%アップ)
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私もレベルアップしたいんですけど、あと95Expって書いてあるんですよね……。
マーチちゃんよりもレベルが11高いので経験値が八十入ってもレベルアップしません。
でも、持ち物は変わっていて……。
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所持アイテム一覧(セツ)
・帰還の笛
・特大フラスコ(聖水)16/16
・特大フラスコ(聖水)16/16
・特大フラスコ(聖水)16/16
・特大フラスコ(MP回復ポーションL Lv:4)16/16
・特大フラスコ(猛毒薬L Lv:3)16/16
・特大フラスコ(空)0/16
・特大フラスコ(空)0/16
・特大フラスコ(空)0/16
・特大フラスコ(空)0/16
・特大フラスコ(空)0/16
・緑の魔石×55
・赤い魔石×54
・青い魔石×78
・黄色い魔石×203
・黄金の魔石×52
・緑のE魔石×170
・
・
・
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こんな感じになってます。
私が持っている猛毒薬がなくなる前にマーチちゃんに特大フラスコ(猛毒薬L)を増やしてもらって、それに『ポーション昇華』を使ってL(Lv:3)まで引き上げてリスセフに対応してましたので。
この空の特大フラスコがボス戦前に増えてしまうのもちょっと問題です。
アイテムは持てる数が四十までと決まっていますから、手持ちを圧迫しかねません。
マーチちゃんに「(空)」を持ってもらう(自動的に増えてしまう)のはなんかもったいない気がしますし……。
兎に角、ここまで来たので緑プディン戦をやってしまいましょう。
「じゃあ、行こっか」
「……」
緊張しているマーチちゃんを連れて、私は最上階へと繋がる階段の方へと足を進めました。
ここも階段の左右と後ろが「スクオスの森」同様に囲まれていて一本道になっていますが、遺跡だからか茨ではなく分厚い石の壁になっています。
そして、階段まであと五歩といったところで地面から壁がせり出してきて行く手と退路を阻みました。
開かれるボス部屋へと続く右側の一部の壁。
私たちがその中に足を踏み入れると、石が通ってきた道を塞ぎ、緑プディンがおいでなさります。
その数五体。
これは前回来た時もそうでした。
「こっち!」
私は一番近い位置にいる緑プディンの方へと駆け出します。
マーチちゃんを狙われてはいけないので、速攻でけりをつける戦法を取りました。
素早く接近して猛毒薬L(Lv:3)を振りかける、という作戦です。
一体に猛毒薬を浴びせ終わったあと、すぐに周りを見渡して、マーチちゃんに最も近づいている緑プディンの対処に向かいます。
緑プディンBに猛毒薬を使用して、次にマーチちゃんに近い緑プディンCの元に。
これを繰り返して戦闘は終了しました。
途中、緑のオーラを纏ってくるものがいましたが、プディン系統はもともと素早さが早くないため(黄金、黒金を除く)、あまり気になりませんでした。
「……相変わらずひどい戦闘なの」
「あ、あはは……。で、でも、このゲームって死んだらダメ、でしょ?」
「まあ、それはそうなのだけど……」
戦いが終わって魔石を集めている私に、マーチちゃんが不満を漏らします。
私の戦い方がお気に召さない様子。
まあ、確かに、攻略も何もない力押しですもんね……。
ベータテストをやるマーチちゃんはゲームが好きそうですから、ちゃんと攻略して達成感を味わいたいのかもしれません。
私は苦笑いを浮かべて、
ただ、これが私の本心ですので、これからも使えるものは使っていこうと思います。
無事、最上階まで行けるようになった私たち。
マーチちゃんにはそこにいてもらって、私はまた七階へ。
安全地帯でログアウトからのログイン。
すると、
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
また閉じ込められました。
そして開くボス部屋へのゲート。
これも「スクオスの森」と同じ仕様のようです。
「……始めよっか、魔石集め!」
私は一人、気合を入れます。
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