第44話(第二章第2話) イベント告知
「その魔石とか、お姉さんが使っちゃっていいの。迷惑をかけたお詫び。私が許すの」
「い、いいのかなぁ……」
私がボス部屋で拾ったアイテムたちは、マーチちゃんの妹・弥生がこのゲームの鬼畜仕様によって一からやり直しになる際に落としたものであると判明しました。
マーチちゃんはもらっちゃっていい、って言ってますけど、他人のものを使うのはちょっと気が引けます。
私がこのアイテムたちの取り扱いに悩んで、とりあえず倉庫に保管しておこうかな、と考えていた時でした。
目の前に突然、スマホの画面のようなものが表示されたのです。
「ひゃわ!? な、なに……!?」
「……『イベント告知』って書いてあるの」
マーチちゃんが言うように突然現れたその画面には、「ゲーム内イベントの開催をお知らせします」という文字が記されていました。
今の時刻はゲーム内で③の午前0時になったところ。
このタイミングで「ギフテッド・オンライン運営」から送られるようになっていたようです。
「……運営?」
私はこの言葉の意味がわからなくて疑問の言葉が思わず口を衝いて出ました。
マーチちゃんが解説してくれます。
「このゲームはオンラインゲームなの。だから、プレイヤーの行動を管理したり、アイテムや敵キャラクターの出現率や細かな設定を行う人が存在してるの。この前導入された『決闘』システムもその『運営』がこのゲームを面白くするためにゲームのシステムをアップデートしたことなの。あとは、今は服のデザインを変更するくらいしかないけど、課金のシステムとか」
……なるほど。
オンラインゲームは、「運営」という方たちによって管理されている、と。
それで今回のこれは、その「運営」さんが、イベントを開催します、と宣言してきたということのようです。
私は画面をスクロールして送られてきたメッセージの内容を見てみることにしました。
『イベント告知!(5月1日:ゲーム内③0時‐現実12時)
いつもご利用いただきありがとうございます。
「ギフテッド・オンライン」運営チームです。
ゲーム内イベントの開催をお知らせします。
期間は、5月3日の0時から5日の23時59分まで。
内容は、「魔石集めイベント」となります。
「魔石集めイベント」
イベント期間中、入手できる各種魔石がイベント仕様のものに変換されます。
イベント魔石(以後、E魔石)をどれだけ集めることができたか、で競っていただくイベントとなります。
今回のイベントは個人戦ではなく、パーティ戦となります。
パーティを組んでいないプレイヤーの皆様は個人での参加が可能です。
・入手したE魔石を宿屋の受付に渡し、ポイントと交換しよう!
入手したE魔石はイベント期間中に宿屋の受付(NPC)に持っていくとポイントと交換することができます。
今回はパーティ戦ですので、パーティのポイントは併合されます。
このポイントをどれだけ獲得できたか、で順位をつけさせていただきます。
E魔石を持っているだけではポイントになりませんのでご注意ください。
また、このE魔石ですが、通常の魔石の4倍の価格で売却することも可能となっています。
もちろん、売れば当然のことながらE魔石はなくなり、宿屋の受付に持っていくことはできなくなります。
資金にするもよし、ポイントにするもよし、です。
予めパーティメンバーで話し合って決めておくとよいでしょう。
ポイントが高かった上位のパーティには「運営」からささやかではありますが景品をお送りいたします。
1位のパーティには「第一層全ダンジョンの宝の地図」を。
2位のパーティには「ステータスランダムアップグミ」を。
3位のパーティには「武器・防具ランクアップの秘玉」を。
4位から10位のパーティには「経験値4倍の砂時計」を。
11位から40位のパーティには「スキル変更の巻物」を。
41位から400位のパーティには「完全復活薬」を。
401位から4000位のパーティには「消費MP半減薬」を。
そして、イベントに参加していただいたプレイヤーの皆様には「宿代チケット×10」をプレゼントさせていただきます。
また、これよりイベントが終了するまで、課金によるアイテムの購入が可能となります。
課金によって得られるアイテムは品質が高いものとなっております。
イベントで上位を狙いたいという方はぜひご利用ください。
引き続き、「ギフテッド・オンライン」をよろしくお願いいたします。
「ギフテッド・オンライン」運営チーム一同より』
「魔石集めイベント」……。
多くの人がお休みであるゴールデンウィーク中の3日が始まった時から5日が終わるまでの三日間にわたって開催されるようです。
現実では三日でもこの世界では十二日間になるため、結構長い期間やるんだなぁ、という印象を私は受けました。
オンラインゲームのイベントが、平均でどれくらいの期間やるものなのかということを私は知らないので……。
私にとっては「初めてのイベント」ということになるのでどうすればいいのかわからずに迷っていると、目を輝かせているマーチちゃんの姿が視界に入ります。
「この内容のイベントなら上位を狙えるかもなの……! 内容がPvPとかだったら生産職には向かないから……いや、お姉さんならなんとかしそうな気がしないでもないけど……! でも、このイベントならボクにもできることがありそうなの! 一度でいいから上位にランクインしてみたいの……!」
マーチちゃんはイベントに参加したい様子です。
私はそんなマーチちゃんに言ってみました。
「……このイベント、全力でやってみる?」
「え!? いいの!? お姉さん、難しい顔してたからやりたくないのかも、って……! それか、家の用事とかで忙しいのかな、って思ってたの……!」
私が聞くと、マーチちゃんは嬉しそうに返してきました。
よほどこのイベントがやりたかったように見えます。
マーチちゃんの嬉しそうな顔を見ていると、私も嬉しくなりました。
彼女に楽しい経験をさせてあげたかったから。
……ううん。
彼女と一緒に楽しい経験をしていきたかったから。
「私、ゲームのイベントって初めてだから、どうしたらいいのかわからなかっただけなんだよ。それに、うちはお父さんが単身赴任中だから、どこかに行く、ってこともないし。だから、私の方は大丈夫!」
私がそう言うと、マーチちゃんは笑って
「! じゃ、じゃあ、二人でやってみるの! 目指すは優勝なの! ……ずっとベッドの上にいるのは退屈だから、お姉さんに会えるのはよかったの……(ぼそっ)」
こう返してきて。
こうして記憶にも記録にも残る私たちの初イベントが始まろうとしていました。
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