第33話 セツ印の攻撃バフポーション
「というわけで、できました! 攻撃バフポーション!」
「……初めてなの。モンスターに同情したの……」
予め製薬していた猛毒薬Eを使って赤プディンたちを倒した私は彼らがドロップした赤プディンの粘質水と赤い魔石を使って攻撃バフポーションを生成しました。
その際にマーチちゃんに何やら棘のある言葉をいただいたような気がしますが……無視です!
私は与えられたスキルを最大限活用しただけ! それだけなのです……っ!
この話は置いておくとして。
それとは別にちょっとした不満がこのボス戦ではありました。
それは、
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名前:セツ レベル:22(レベルアップまで19Exp)
職業:薬師(生産系)
HP:34/34
MP:14/48(+1)
攻撃:25
防御:30(×1.04)
素早さ:44(×1.04)
器用さ:51
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名前:マーチ レベル:10(レベルアップまで19Exp)
職業:商人(生産職)
HP:27/27
MP:19/19
攻撃:25
防御:24(×1.16)
素早さ:17
器用さ:29
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ボスを倒したというのにレベルアップしなかったということ。
このダンジョンを攻略したのに獲得した経験値はたったの「7」でした。
赤プディンは一体につき魔石を四個落としていることから『スクオスの森』にいた黄プディンと同じような存在であると考えられます。
赤プディンがくれる経験値も「4」と見ていいでしょう。
今は二人でパーティを組んでいますから、一人に入る経験値は「2」ずつになります。
赤プディンは二体いたので、合計で「4」ずつ。
『アホクビの住む洞』最上階に来るまでに、マーチちゃんを助けるためにアホクビを一体倒しています(ドロップアイテムを回収する暇はありませんでしたが)。
マーチちゃんによると、このゲームは経験値においてはパーティで割って小数点以下になった数は繰り上げられるそうです。
そのため、獲得経験値がなくなるということはなく、パーティを組んでいるとちょっとだけお得になるとか。
それで、アホクビを倒して入った経験値は「1」。
……え?
あのボス、プディンたちと同じ経験値しかくれてないじゃないですか……。
「……このボス、倒すメリットがあまりないですね……」
ボソッと呟いた私の言葉をマーチちゃんが聞き取って返してくれました。
「このゲーム、レベル上げが大変なの。ボスでこれだもの」
それ、どこかで聞いたことがありますね……。
どこででしたっけ?
……思い出せませんが、私はこのゲームでレベルを上げることが大変なことを実感しました。
……………………
MPが14しか残っていなかったため、『帰還の笛』で街に戻り宿屋に行きました。
ボスを倒したことでダンジョンの入口まで転移できる装置が出現したのですが、笛を使った方が一気に街まで行けるため移動時間が短縮できます。
まあ、街からダンジョンまでは十分くらいの距離なので差は微々たるものなのですが……。
宿屋のお部屋で私は攻撃バフポーションの品質を上げられるだけ上げてみました。
MP7消費して攻撃バフポーションLに。
……惜しいです。
あとMPが1あれば「L Lv:2」にできたのに……!
三十分休憩です。
その間にマーチちゃんはゲームの中で宿題をやっていました。
宿題のプリントが電子データとして入っているタブレットとパソコンをリンクさせることでそれが可能になるそうです。
やった宿題はタブレットの方にメールをする要領で送れば現実でも終わっていることになる、とか!
私も今度やってみよう!
四分の一の時間で宿題が終わることになるのでその分マーチちゃんと遊ぶ時間を増やすことができます!
ゲームばかりしていては怒られてしまいそうですが……。
私は宿題を終わらせてからゲームを始めていましたから、マーチちゃんが勉強をしているのを見ることくらいしかやることがありませんでした。
私よりもたぶん年下であろうマーチちゃんですが、私の助けを必要とすることはなく……。
手持無沙汰になってしまったので、私はちょっと実験をしてみることにしました。
そんなこんなで三十分後。
私のMPはというと――
――MP:48/48(+1)
やりました!
実験成功です!
本来なら、宿屋のお部屋にいるので「16」回復してMP30で止まるところなのですが、「18」も多く回復できていました!
……その、あまりにも暇だったので聖水を飲んでみたんです。
HP・MPの自然回復量をアップさせるアイテム『聖水』。
それを宿屋のお部屋で使ったらどうなるのかな? って気になりだしたら確かめたくて仕方なくなって。
聖水の方が優先されたら「4」しか回復しなくなってしまいますから、どうしようって思っていたんですけど、重複してくれたのでホッとしました。
さて、回復したMPを攻撃バフポーションにつぎ込みましょう!
「8」で「L Lv:2」。
「16」で「L Lv:3」。
……次は「32」必要なのでここまでです。
どうなったのか調べてみましょう!
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攻撃バフポーション(L Lv:3)
使用すると攻撃力が4,096%上昇する。
同一の薬を使用するとその分の数値が上乗せされる(プラスされる)。
但し、薬系アイテムは四つよりも多く重ね掛けすることはできない。
同種の薬を使用すると上書きされる。
×有効時間は四分 → 有効時間:無制限
×使用期限は生成してから四日 → 使用期限:無制限
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「……おおう……」
攻撃力4,000%アップということは、元の攻撃力の四十倍……。
……ヤバイモノができてしまいました。
私が呆然としていると、宿題が終わったのかマーチちゃんが顔を上げて私に尋ねてきました。
「……どうしたの、お姉さん?」
「マーチちゃん。これ、見てくれる?」
聞かれたので『攻撃バフポーションL Lv:3』をマーチちゃんに渡します。
「L Lv:3」だとMPが32ないと仕舞えないとのことだったので、私がアイテムの詳細を開いて見せました。
その説明文を読んだ彼女は三十秒ほど静止したのち、徐に口を開きました。
「……お姉さん。なんなの、このゴリラポーション? お姉さんはこのゲームを崩壊させたいの?」
「辛辣……っ!」
どうしたのって聞かれたから答えたのに、ひどい言われようです……!
私がつくった攻撃バフポーションに変な命名までされてしまいました……。
遺憾です。
……ですが、彼女が言っていることはごもっともかもしれません。
こんなものを使ってしまったら、このゲームを製作してくださっている方々の苦労を一瞬で台無しにしてしまうことでしょう。
私はマーチちゃんから返されたフラスコの中身をどうしようかと考えさせられることになるのでした。
「バッグに仕舞えなくてよかったの」
「……」
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