第32話 やりたいこと
「おおっ! やったね! 特大フラスコが四つ~!」
「……こんなので喜ぶの、お姉さんくらいなの」
私はマーチちゃんに頼んで特大フラスコを三つ増やしてもらいました。
もちろんどんなスキルを持っているのかを他の人にはばれない方がいいということで宿屋のお部屋が行いました。
私が頼んだことなので3,000Gは私が払おうとしたのですが、マーチちゃんに先んじて支払われてしまいました。
こんな大金を持ってたら落ち着かないということで。
そんなことがあって、私たちは今、ダンジョンに来ています。
最難関ダンジョン『スクオスの森』ではなく、二番目に簡単だという南ダンジョン『アホクビの住む洞』に。
このダンジョンは現実ではあり得ない規格外に巨大な大樹の中がステージになっている感じです。
何もなかったら真っ暗になるはずなのですが、そこはゲームということで不思議な力で明るくなっていました。
そんな大樹の洞に住むアホクビとは頭はワニで脚がカニのハサミ、尾羽の部分がハチの針になっている身体はタカの形をしたモンスターです。
すごく凶暴そう……。
今回はこれが目当て……というわけではなく。
私の目的は、
――このダンジョンに生息する赤プディン、その粘質水と赤い魔石です!
というのも、私がやりたかったのはまだつくったことのない薬を生成することでしたから。
このゲームを始めてからというもの、『スクオスの森ダンジョン』にしか私は行ったことがなかったのです。
つくることができたのは猛毒薬だけ。
今では放り込まれた場所が猛毒薬を生成することが可能だったあそこでよかったと思っていますが、それはそれ。
折角薬師になったのですからいろいろな薬をつくりたいじゃないですか!
私が今つくることができるのは猛毒薬を除くと、HP回復ポーション、MP回復ポーション、攻撃バフポーション、攻撃デバフポーション、防御バフポーション、防御デバフポーション、麻痺薬の七種類。
それぞれの必要となるものはこちらです。
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HP回復ポーション作成:必要素材
・聖水・回復草・プディンの粘質水・魔石(緑or赤or青or黄)
MP回復ポーション作成:必要素材
・聖水・MP回復草×2・プディンの粘質水・魔石(緑赤青黄・各1)
攻撃バフポーション作成:必要素材
・聖水・ツヨ草・赤プディンの粘質水・赤い魔石
攻撃デバフポーション作成:必要素材
・聖水・ヨワ草・青プディンの粘質水・青い魔石
防御バフポーション作成:必要素材
・聖水・カタ草×2・青プディンの粘質水・青い魔石×4
防御デバフポーション作成:必要素材
・聖水・ヤワ草×2・黄プディンの粘質水・黄色い魔石×4
麻痺薬作成:必要素材
・聖水・麻痺草×2・緑プディンの粘質水・緑の魔石×4
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マーチちゃんに確認したところ、この第一層ではMP回復草、カタ草、ヤワ草、麻痺草の四種は手に入らないとのこと。
ですので、つくれるとしたらHP回復ポーションか攻撃バフポーション、攻撃デバフポーションの三種類となります。
まずは猛毒薬以外にも攻撃できる手段を得るべきなのではないかと考えた私は、この『草原エリアダンジョン2・アホクビの住む洞』に攻撃バフポーションの材料を取りに来た、というのがことのあらましです。
ダンジョンに入ってすぐにアホクビをデフォルメしたような赤い実をつけたツヨ草は採取できたのですが……。
――肝心の赤プディンが見つけられません!
考えてみるとレアなモンスターのような気がしてきました。
だって、『スクオスの森』に生息するとされる黄プディンはボス扱いだったのですから。
奥に行かないと会えないのかもしれません。
私たちは『アホクビの住む洞ダンジョン』を進んでいくことにしました。
一階にいたのはアホクビばかりでした。
マーチちゃんの解説によると、このアホクビは見た目通り攻撃力が高いとのことで私たちは彼らに見つからないように気を付けながら階段を目指しました。
レベルが高いのに隠れて移動することを選択したのはレベルの割に攻撃力が低いということと、攻撃手段が乏しかったからです。
猛毒薬を使ってしまって赤プディンを倒せなかったという事態は避けなければなりませんから。
ただ、ずっと見つからずに行動するというのは難易度が高すぎました。
二階に入って階段から離れたところでアホクビに見つかってしまったのです。
逃げる際にマーチちゃんがこけて大ピンチに……!
私は急いで戻って、マーチちゃんが増やしてくれていた猛毒薬Eを使ってアホクビを撃退し、マーチちゃんを背負って二階を走り抜けました。
三階。
一目見ただけでもアホクビの数が多く、降ろすのは危険と判断。
マーチちゃんを背負ったまま移動しました。
そして四階へ。
そこは見たことのある風景が広がっていました。
規模が小さいことと『レメディ』がないことを除けば、『スクオスの森』の最上階と同じような造りになっていたのです。
「声さん」に確認すると、今いる場所が
『どのダンジョンにおいてもボス部屋の前は
私はいざという時のために持っていた黄プディンの粘質水を使って猛毒薬を二つ製薬します。
それを猛毒薬Eにまで上げ、元々持っていた最後の猛毒薬Eを『L Lv:2』まで昇華させました。
それからマーチちゃんと顔を合わせて頷き合いました。
ドアの向こうへ行く意思を疎通させます。
私たちはドアに近づきました。
近づいてドアに触れると、それは自動で開きました。
そして、私たちの身体はボスの部屋に押し入れられます。
――背後から現れた大きなアホクビによって。
そのアホクビが羽ばたいて強烈な風を送りつけてきたことで私たちは有無を言わさずにボス部屋の中に放り込まれました。
私たちを突っ込んだあとから悠々と入ってくる大きなアホクビ。
そいつが入ってくるとドアが固く閉められます。
その振動で、なのでしょうか?
天井の方から赤プディンが二体ぷよんと落ちてきました。
待ちわびた邂逅ですが、喜んではいられません!
大きなアホクビが私を狙っていましたから……!
態勢を整えるように羽ばたいて大口を開けてこちらに向かってくるアホクビ。
私はとっさに『ポーション昇華』を行い、その口の中に薬をふりかけます。
――猛毒薬L Lv:3――を。
「――!?」
薬を飲まされたアホクビは急停止。
そのまま地面へと落下して倒れ込みました。
HPゲージは真っ黒。
猛毒薬さん、叫ぶ暇すら与えませんでした……。
黒い粒子になって消えていく大きなアホクビ。
……あれ?
これってボス戦、ですよね?
猛毒薬が強すぎて実感がわかないのですが……。
もう、あまり深く考えるのはやめましょう。
私にとっては有利に働いていると思うようにしましょう!
今はそれよりも……!
「会いたかったよ、赤プディンちゃん!」
「っ!」
私は赤プディンたちに笑顔を向けました。
しかし、何故でしょう?
モンスターの方が逃げ回り始めてしまうのは……。
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