第28話 経験値の分散
マーチちゃんと別れたあとの私は最上階にある回復装置『レメディ』を使ってMPを回復し、黄プディン戦を行っていました。
帰還の笛をマーチちゃんに渡してしまったので即行で帰る手段はなくなってしまったのですが、そのまま帰るにはあまりにももったいなかったので。
フラスコ(猛毒薬E)を渡してしまっていたのを思い出したのは再びボス部屋に入ったあとでしたが、フラスコ五個でも前に比べれば多いので問題なしです。
実際、快勝しましたし。
あっ、今回は戦闘前に聖水を飲んでいます。
これでばっちり回復量アップです!
別れてからの一戦目は黄プディン三体。
二戦目も黄プディン三体。
三戦目に金プディン一体。
四戦目は黄プディン五体。
五戦目も黄プディン五体。
ここでMPが切れてしまったので一旦休憩となりました。
聖水を飲んでログアウトです。
……………………
夜、寝る前に少しだけやってみようと再開。
六戦目、黄プディン五体。
七戦目、金プディン二体、レベルアップ!
八戦目、黄プディン七体。
九戦目、黄プディン七体。
うーん……。
レベルが上がりにくくなっているような……?
レベルが高くなっているから必要となる経験値が上がっているのでしょうか?
とりあえず、ログアウトです(もちろん次の戦闘の準備をして)。
もう戦えるMPが残っていませんでしたから。
……………………
翌朝。
月曜日ですがいつもより早く起きたのでちょっとやっておきました。
十戦目、黄プディン七体。
十一戦目、金プディン三体。
MPがなくなったのでアイテムの整理をしてログアウト。
朝にやることを行い、学校に行く準備をして家を出ました。
学校に着いて、友だちと話したりして過ごしていると、先生が入ってきて言いました。
「埼京、今日も横道が休みだからあいつのためのノートを取っておいてくれ」
「あ、はーいっ」
あゆみちゃんの風邪、長引いているみたいです。
それもそうでしょう。
ゲームしてたんですから。
昨日、時間がある時にお見舞いに行ったら、もう大丈夫だ、って言ってたんですけど、どうやらぶり返したみたいです。
たぶん、病み上がりなのに夜遅くまでゲームをやってたんでしょう。
その光景が目に浮かびます。
私は先生にお願いされたため、その日はあゆみちゃんのためにもノートを取ることになりました。
ちなみに、先週の金曜日もあゆみちゃんは学校に来ていなかったのですが、その日はあゆみちゃんの友だち(男の子)がノートを取っていました。
……………………
帰りにあゆみちゃんの家に寄って一悶着あって帰宅します。
(ゲームをやりたい高熱があるあゆみちゃんと、ゲームをやらせたくない私の攻防が繰り広げられたのです)
(私は結局負けてしまいましたが……)
(どういう決着の仕方だったのかは聞かないでください……)
宿題や家事などやるべきことを済ませてログイン。
黄プディン九体戦(十二戦目)です!
やはりフラスコが五個使える状態だとそれほど難しくはありません。
難なく勝利を収めて、MPが少し足りないからどうしようか、と考えている時でした。
いきなりメニュー画面が開いてこそに「call」と記されたのです。
それは電話が掛かってきていることを知らせるものでした。
相手はマーチちゃんです。
「もしもし、マーチちゃん? どうしたの――」
『もしもし、お姉さん!? ど、どうなってるの、これ!?』
「……え?」
ひどく動揺している様子でした。
私も何かあったの!? と気が気でなくなります。
そんな私の元に画像が添付されたメッセージが送られてきました。
開いて見てみるとそこには――
========
名前:マーチ レベル:10(レベルアップまで26Exp)
職業:商人(生産職)
HP:27/27
MP:19/19
攻撃:25
防御:21
素早さ:17
器用さ:29
========
――爆上がりしたマーチちゃんのステータスが。
「おお……。上がってるね……」
『上がってるね! じゃないの! さっきログインしてみたら、知らないうちにレベルが10になってて! まさかと思うけどお姉さん、またレベル上げしてるの!?』
率直な感想を述べたら怒られました。
……え?
なんで?
「いやぁ……。折角ここまで来たから黄プディンを討伐して行こうかなって思って……」
『何してるの!? これじゃボクがやり……っ』
「……『ぼくがやり』?」
私が黄プディン討伐をしていることを素直に打ち明けると、彼女は私を叱責するように返してきました。
ですが、それは初めの方だけで、何かを言いかけた途端急にその勢いを失います。
言い淀んだ……?
突然言葉を止めたマーチちゃんに聞き返すと、彼女は慌てて言い直しました。
『え、えっと……! ぱ、パーティを組んでると経験値は分散される仕組みで……!
「そうなんだ! よかったよ!
――これでマーチちゃんのやられる確率が下がったってことだもんねっ!」
「えっ、ええっ!?」
パーティを組んでいると経験値は戦っていない方にも分け与えられるとのこと。
自分自身を卑下して、そんなのはもったいない! とか言い出したマーチちゃんに私は言ってやりました。
私にとってはこのゲームで初めてできた仲間です。
申し訳なく感じる必要なんてどこにもない、と。
私は友だちと楽しくゲームがしたい、ただそれだけなんだから。
私がそう言うと、マーチちゃんは何やらぼそぼそと呟いていましたが、やがて何故が観念して私に提案をしてきました。
『……気を付けることを教えたから、もう恩は返せたって思ってたのに……。レベル上げの枷になっちゃったなんて、そ、その分はちゃんと貢献してからじゃないと始められないの……! はぁ。わ、わかったの。ちょっと会って話せないかな? 可能なら街の宿屋の方に来てほしいの。その、内容が内容だから……』
初めてのお仲間からのお誘いです!
断るわけにはいきません!
「わかった! すぐに行くよ! ……といっても私、今北ダンジョンの三階にいるから街まで行くのに一時間半くらいはかかるけど」
『構わないの。待ってるの』
会う約束を取り付けて電話を切りました。
こういうのってなんだかすごくワクワクします!
私は急いで『スクオスの森ダンジョン』を駆け下りたのでした。
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