第20話 衝撃1

 薬師は武器を装備することができません。

 ですが、防具ならセットすることが可能でした。

 ただ……。


「……9,800G!?」


 これが武器・防具屋に行って商品の値段を見た時の私の第一声でした。

 Gとはこの世界の通貨でギオというそうです。

 防具一つにこの金額……。

 しかも防具をつけられる場所は頭部、胴部、脚部の他、装飾品も一つつけることができるため四箇所ありました。

 これを全部揃えるとなると39,200G必要となります。

 ちなみに、今の私の所持金は3,000Gでした。


 とてもではありませんが買えません。



……………………



 防具は今どうこうできる話ではなさそうです。

 ですので私は武器屋を出て、道具屋に向かいました。


 お店に入ってみると中は閑散としていました。

 棚やショーケースにいろいろなものが置かれていますが、それらの商品に触れることはできません。

 ちなみに、武器屋の商品は全て店員さんがいるカウンターの後ろに陳列されていました。

 お店の奥の方には帽子を目深に被ったエプロン姿のガタイがいい男性がいて、近づくと彼の上にNPCというテロップが表示されます。

 これは武器屋の店員さんもそうでした。 


「すみませーん。お買い物をしたいんですけど……」


 NPCの店主さんと思しき男性に話し掛けると目の前に画面が表示されます。

 これが商品一覧。

 武器屋の時もそうでしたが、お店の人に話し掛けると商品が見れるという仕組みみたいです。


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商品一覧

・HP回復ポーション(C)―――300G

・MP回復ポーション(C)―――1,200G

・攻撃バフポーション(C)―――500G

・防御バフポーション(C)―――500G

・素早さバフポーション(C)――350G

・器用さバフポーション(C)――950G

・攻撃デバフポーション(C)――500G

・防御デバフポーション(C)――500G

・素早さデパフポーション(C)―350G

・器用さデバフポーション(C)―950G

・猛毒薬(C)―――――――――100G

・麻痺薬(C)―――――――――200G

・幻惑薬(C)―――――――――250G

・悪心薬(C)―――――――――600G

・モンスター避けのお香(C)――1,000G

・帰還の羽―――――――――――550G

・容器(蓋ナシ・空)――――――200G

・容器(蓋アリ・空)――――――600G

やめる


========


 出ました、HP回復ポーション300G!

 魔石を三個売れば手に入れられるらしいので薬師が冷遇される所以となっている設定価格です!


 タップすると詳しく見れるそうです。


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HP回復ポーション(C)――300G

……使用すると最大HPの4%HPを回復する。

  密封された容器の中に入っているため容器を割らないと取り出せない。

  割れた容器は消えてなくなる。

  使用期限は購入してから四日。


 →買う       →やめる


========


 回復量4%……。

 これ、もうほとんど「1」しか回復しないじゃないですか……。

 しかもポーションはスタックされないわけですから確実に嵩張ります。

 ……あゆみちゃんがあれだけヒーラーがほしいと言っていたことと、このお店に人気ひとけがない理由がわかった気がしました。


 MP回復ポーションも調べてみましたが、回復量は同じく4%でした。

 MPの方は「1」しか回復しなかったとしてもスキルの使用で必須になるためまだ需要はあるかもしれません。

 しかし如何せん高いです。

 「1」回復するためだけに1,200Gは……。


 自身のステータスをあげられるバフ系のものの上げ幅は4%、相手のステータスを下げられるデバフ系のものの下げ幅も4%。

 有効時間は四分だそうです。

 これ、ステータスが弱かったら「1」上下するだけですよね?

 コモン品質の薬品の存在価値が悲しいほどにないのですが……。

 これも薬師が外れと言われる理由でしょう。


 ……あっ!

 私のお供、猛毒薬があるじゃないですか!

 あれだけ役に立ったのです!

 他のプレイヤーさんも一つは携帯しておきたいものに違いないですよね!


========


猛毒薬(C)――100G

……使用すると四秒につき最大HPの1%のダメージを与える。

  耐性ができてしまうため同じ対象に何度も使用することはできない。

  有効時間は四秒。

  使用期限は購入してから四日。


  →買う       →やめる


========


 以上が猛毒薬の説明文。

 ……うん?



――なのに、HP1%――?



「それ、実質1%しかダメージを与えられないってことじゃないですか!?」


 それも同じ対象に何回も使用することができないという制約つき。


「そ、そんな……っ!?」


 私は膝から崩れ落ちました。

 あの安心と信頼の猛毒薬さんがコモン品質ではこんなにも、その、あれな性能だったなんて……!

 お世辞にも使えるとは言えない酷さです。

 そりゃ、誰も買いませんよ……。


 品質が上がると時間も延びるんですね。

 私がつくった猛毒薬Eは二十五秒持ちましたから。

 このことを知らないで猛毒薬の性能を上げずにプディンたちと戦っていたら大変なことになるところでした……。

 弱い薬師わたしでは長期戦は不利だと判断して昇華のスキルを使っていたのですが、あの時の判断が黄プディンの粘質水を無駄に消費してしまう展開をも回避していたとは知りませんでした。

 グッジョブ、私の直感……!



 あと、このお店には猛毒薬に似た性質のアイテムが三つ売られていました。


 相手の動きを四秒間止める麻痺薬。

 四秒間相手の攻撃が外れやすくなる幻惑薬。

 そして四秒という有効期限がある、四秒につき最大MPの1%を消費させる悪心薬。


 正直、どこで使うの? ってレベルです。

 あっ、麻痺薬だけはピンチの時に上手に使うことができれば一発逆転ができるかもしれません。

 だた、どれも同じ対象に何回も使用できないっていう制約つきなんですよね……。



 そして使用するとレベルの低いモンスターと四分間遭遇しなくなるという「モンスター避けのお香」。

(水汲みチャレンジの時にほしかった……!)

 それと『帰還の笛』の下位互換に相当する「帰還の羽」。

(『帰還の笛』は使ってもなくならず、「帰還の羽」は使うとなくなるそうです)


 最後に容器!

 蓋ナシは液体を持ち運べるもので、蓋アリはそれに加えて生物(プディンの粘質水も生物枠らしいです)も持ち運べる代物です。

 ちなみに、容器の形は購入する際に選べるとのこと。


 これは是非とも補充したいですね!

 ただ、残念ですが今はアイテム所持枠にあまり余裕がありません。

 ……あっ!

 そういえば、道具屋ではアイテムが売れるんでしたね!


「あの、アイテムを売ることってできますか?」


 私は売却をやってみようと思いました。

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