第17話 経験値稼ぎ・続き3

 準備を整えてログアウトからのログイン。

 ボスの部屋に誘われて出現したのは予想した通りの黄プディン十一体。

 私は一心不乱に戦いました。


 まず四体を七秒でパーンし、間髪入れずに四つの黄プディンの粘質水を回収。

 すぐに猛毒薬を製薬し、スキルで猛毒薬Eに。

 つくったそばから一個ずつ使っていくか、四つつくり終えてから攻めに転じるかは相手の動き次第。

 今回は二個目をつくっている時に黄プディンの一体が動き出したのでその個体と、一番近くで様子を窺っていた個体に投薬しました。

 二十五秒回避に専念して黄プディンの粘質水を二個回収。

 残り五体になって相手の攻め方が緩やかになってきたのを確認し、猛毒薬の製薬、昇華を実行。

 猛毒薬Eを一個ずつ確実に黄プディンに掛けていき、回避に集中。

 二十五秒が経過して残りは一体に。

 黄プディンの粘質水を拾って猛毒薬をつくり、猛毒薬Eまで品質を上げて的確に浴びせる。

 残りの二十五秒、懸命に距離を取り続けて最後の一体がパーンします。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」


 MPの残量は「3」。

 ギリギリです。

 毎回、毎回、なんでこうも綱渡り状態なのでしょう。

 これをあと二回もやらないといけないとなると正直頭が痛いです。

 ですが、これも薬師を少しでも魅力的な職業だと思ってもらうため……!

 私、頑張ります!



「それにしてもMP3かぁ……。またしばらくはできないなぁ」


 十一体を倒すにはMP33が必要不可欠です。

 それは今回の戦闘ではっきりしました。

 絶対にいります。

 そうなると、こっちの世界で十五時間、現実世界で三時間四十五分は休憩ということになります。

 今の時刻が②の九時十三分、現実では朝の八時十五分から二十分くらい。

 MPが規定値に達するのがちょうどお昼ご飯のタイミングになりそうですね……。

 レベルアップでもMPは回復しますけど、そうするには経験値があと「42」必要になります。

 これ、次の戦闘が終了するタイミングで上がる感じですね。

 早く終わらせたいですけど、待つしかなさそうです……。


「あっ! 魔石!」


 考え込んでいたら黄色い魔石が消えかけていました。

 私が動き出したら点滅していたのが再びはっきりと存在するようになります。

 あ、危なかったぁ……!

 私は急いでドロップアイテムを回収しました。



 黄色い魔石などを回収し終えて安全地帯セーフティエリアに戻った私。

 不意に一本道の奥にある階段へと視線が向かいます。


「確かこの上が最上階、なんでしたっけ? ……まだ一度も見ていませんでしたね」


 気になった私は階段へと足を踏み入れました。

 すると、一階から二階、二階から三階へ行った時のように転移するような移動を体験します。

 目の前には広いスペース。

 奥の方にはドアがあって、その右横には謎の装置が置かれていました。

 一メートルほどの台の上で三十センチほどのハートの形をしたものがふわふわと浮いている、そんな装置です。

 これが街に転移することができるっていう装置かな? と思って近づいてみると、どうやら違うことがわかります。

 台のところに説明が書かれていました。


「……『レメディ』。触れるとHPとMPが全回復する装置……!?」


 ……え? なにこれ?

 なんでこんなものがこんなところに!?


 私、今まで自力で回復するのを待ってたんですけど!?

 回復できる手段があるのなら教えてほしかったです……。


 説明の続きによると、どうやらこの装置は使うともう一回使うためには一度ダンジョンの外に出なければいけないという誓約があるようですが。

 この階には転移装置があるって聞きましたから、それを使って街に戻ればまた使えるということですよね?

 ……私の場合、入口からダンジョンを出ることが叶わないので。

 ただ……。


「あれ? 転移装置が見当たらない……。ってことは、このドアの向こうにあるってこと?」


 どこをどう見ても転移装置らしきものは見つかりませんでした。

 ですから、ドアの向こう側にあるのではないかと考えて、ドアを開けて転移装置の存在を確認しようとした時――


「ひぃっ!?」


 ものすごく嫌な感じがしました。

 悪寒でした。



――このドアを今開けてはならない――



 何故だかそう思えたのです。


 私はドアに触れるのは危険だと判断し、折角あるのだから『レメディ』は活用させてもらってその場をあとにしました。



 三階に戻ってボス戦の準備です。

 猛毒薬Eを生成し、聖水を汲みに行き、猛毒薬を集めてログアウトをします。

 ログアウトしたら直ちにログイン。

 十六戦目開始です。



……………………



 十六戦目が終了するとレベルアップを果たしたので例の如く準備をして十七戦目へ。


 フラスコ四つを使用する戦闘方法に切り替えて正解でした。

 そうでないとあの数は対処しきれません。

 十五戦目からは猛毒薬Lを四個分使っていたのでわりかし早く戦闘を終えることができていました。

 金プディンの粘質水はなくなってしまっていましたが、黄金の魔石があったのでそれで猛毒薬Rを製薬して猛毒薬Lにまで引き上げていたのです。

 猛毒薬(C)からLにするとMPが十一体倒すまで持たないので。

 おかげで黄金の魔石を八個も使用することになってしまいましたが、一からやり直しになるよりはマシです。

 あとで補充できると信じましょう。


 今のステータスはこんな感じです。


========


名前:セツ     レベル:17(レベルアップまで76Exp)

職業:薬師(生産系)

HP:28/28

MP:5/38

攻撃:21

防御:25

素早さ:35

器用さ:42


========


 とりあえず聖水と猛毒草は集めてきましょう。

 次は恐らく黄金のプディン戦です。

 推定ですが数は五体。

 MPが足りません……。


 ……あっ。

 そういえば、黄金のプディンがくれる経験値は40みたいなんですよね。

 それなら二体倒すことができればレベルが上がってMPが回復するはずなのでMP6あればなんとかなるのでは?

 聖水や猛毒草の採取をしに行けば三十分(ゲーム世界で)近くかかりますからあまり待たなくでもよさそうです。

 というわけで水汲みチャレンジ、行ってみましょう!



……………………



 素早さが上がっているからでしょうか?

 二十分で戻ってくることができてしまったので十分間暇になってしまいました。

 ですが、作戦の確認をしていたらあっという間でした。


 黄金の魔石を使って猛毒薬Rを製薬し、Lにまで昇華。

 それを二つつくってアイテムの確認をし、ログアウトします。

 そしてログイン。



 十八戦目、スタートです。

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