第11話 レア
土曜日になります。
それも、第四の。
私の通う中学校では月の第一と第三、第五の土曜日が一日授業となる代わりに、第二、第四の土曜日はお休みになります。
要するに今日はお休みというわけです!
昨日の金曜日はいろいろあって、ゲームはできていませんでしたが……。
(あゆみちゃんが風邪を引いて学校を休んだため、お見舞いに行ったら風邪を引いているのにゲームをしていました)
(私は精神的に疲れていたのでゲームをやらない理由づくりのためにあゆみちゃんの看病をしていました)
(あゆみちゃんのご両親は共働きで忙しいので)
そんなわけで、気持ちもなんとかリラックスさせることができた私は、朝にやることを済ませてからゲームの世界にやってきたのですが……。
「……わお……」
入った瞬間、途端に階段の手前とそれに続く一本道の入口が封鎖されました。
そして、この前と同じ位置の壁が消えたのです。
……これ、もしかして、また戦う流れなのでしょうか?
私はステータスの確認をしてから、ボス部屋へと赴きました。
結論から言うと、やっぱり閉じ込められました。
そして出てくるプディン。
今回は一体のみでした。
でも、その身体は黄金に輝いていたのです。
前回出てきたプディンは三体とも黄色だったというのに。
……なんですかね、これ?
私が戸惑っていると、その黄金のプディンは私に迫ってきました。
頭と思しき部分を振り回しながら。
兎にも角にも。
やらなければやられるようなので、私は迷いを捨て去りました。
私は手元に出現させます。
以前、ログアウトをする前につくっておいたものを!
それを襲ってきた黄金のプディンにふりかけました。
それは――猛毒薬L レベル2――。
猛毒薬LにMP「8」注いでつくったものです。
わざわざ二階にまで聖水を汲みに行って。
ここまでの品質にするのにMPを枯渇させることになってしまいましたが、ゲームをやっていない状態でもMPは三十分毎に「1」回復するようです。
ボス部屋に入る前にステータスを確認していたのは、それを確かめるためでした。
掛けられた黄金のプディンはというと……。
「ど、どうかな!? 私の最高傑作……――って、うええええ……?」
一秒でHPゲージは黄色に。
そして二秒で、
――パァアアアアアアアアンッ!
……猛毒薬、強すぎません?
それとも、黄金のプディンは見掛け倒しなのでしょうか?
それほど強くない、的な?
薬師は弱いと言われていたので、きっとそうなのでしょう……。
なんて考え込んでいると脳内にアナウンスが響きます。
『レベルアップしました』
『レベルアップしました』
「えっ!? 一気に二つも!?」
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名前:セツ レベル:5(レベルアップまであと8Exp)
職業:薬師(生産系)
HP:15/15
MP:18/18
攻撃:13
防御:14
素早さ:17
器用さ:19
========
これが感覚でわかったステータスの変化です。
それにしても二つもレベルが上がるなんて……。
あのプディン、弱いのに経験値をたくさんくれるプレイヤーに優しいプディンなのでしょうか!?
そうかもしれません!
だって、レアっぽかったし!
まだいないかな? なんて辺りを見渡した時、黄金のプディンを倒してドロップしたアイテムが消えかかっているのを目にしました。
「ああ! そうだった! 待って、ドロップアイテム!」
私は急いでドロップアイテムの回収に向かいました。
そしてこちらが今の所持アイテム。
========
・フラスコ(金プディンの粘質水)
・フラスコ(金プディンの粘質水)
・フラスコ(金プディンの粘質水)
・フラスコ(金プディンの粘質水)
・黄色い魔石×9
・黄金の魔石×4
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・
・
・
・
・
・
・
・
・
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ドロップしたのは、黄金の魔石四個と金プディンの粘質水四個分。
黄金の魔石も金プディンの粘質水も今の私では扱えそうにないのですが、レアっぽかったのでつい取ってしまいました。
黄金の魔石は売れるとして、金プディンの粘質水は売れるのでしょうか?
わかりません……。
あと、聖水も切らしてたんですね……。
……あれ? あの状態でプディン三体と戦うことになっていたらヤバかったのでは?
私は猛毒薬頼みなのに、ここにはその素材となる聖水がないワケですから……。
「お、黄金のプディン一体だけでよかった……!」
猛毒薬をつくれずに、じり貧でやられていたことでしょう。
私、幸運でした……!
し、しっかりと準備をして、点検までしてから挑もう!
今回のことを、私は教訓にすると誓いました。
一歩間違えば死んでいたという事実に足の力がなくなって立てなくなってしまった私。
しばらく呆然としていると、金プディンの粘質水を入手するために断腸の思いで捨てた黄プディンの粘質水が点滅し始めて消えます。
そうすると、茨で閉ざされていた道が開く――というのがこの前の展開だったのですが、今回は違いました。
――ゴトッ
と。
ボス部屋の中央に金色の宝箱が降ってきたのです。
「えっ!? な、なに!?」
困惑する私に、「声さん」の説明が入りました。
『こちらはレアドロップ・希望の宝箱になります。このゲームに存在するアイテムの中であなたが望むものを一つだけ、開けた時に入手することができます』
なんと!
ほしいのもがなんでも一つ手に入れられるというのです!
私は迷わず選択しました。
「じゃ、じゃあ! 聖水で! ……あっ、でも、容器がないんだった。金プディンの粘質水捨てたくないし……。あっ! フラスコ! フラスコがほしいです!」
そう言って宝箱を開けようとする私を「声さん」が制しました。
『そ、そのようなものでよろしいのですか? もっとありますよ? あなたは薬師ですので武器は不要かもしれませんが、防具を強化できる魔術書だったり、スキルのランクを上げられる宝玉というものもあります。それこそ「帰還の笛」というアイテムも。使えば町まで転移することができる消費されないアイテムです』
私の求めたものがあまりにもひどかったのでしょうか?
ゲームの案内をしてくれている「声さん」に止められてしまったのです。
「声さん」は恐らくAIです。
「はあ、そうなんですか? でも、私が今一番欲しいのは……」
『承知しました。では、せめて特大フラスコにしてください。一つで同一のアイテムを十六個分纏めることが――』
「そんなのあるんですか!? ほしいです! それにしてくださいっ!」
『……はあ』
なんか、「大丈夫かコイツ?」みたいな雰囲気を「声さん」から出されました。
……なんででしょうか?
解せません。
ですが、「声さん」からのアドバイスのお陰で、私は特大フラスコを手に入れることができました!
ありがとうございます、「声さん」!
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