第10話 覚醒
『レベルアップしました』
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名前:セツ レベル:3
職業:薬師(生産系)
HP:13/13
MP:15/15
攻撃:12
防御:12
素早さ:14
器用さ:15
スキル:『薬による能力補正・回復上限撤廃』
『ポーション昇華』☆
『有効期限撤廃(自作ポーション限定)』☆
ジョブ専用スキル:『製薬』(ジョブクラス:R)
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結局あのあと、残りのプディン二体は私を襲ってきたので猛毒薬を使って対処しました。
猛毒薬Lを二つ生成することはMPの関係上不可能だったため、品質を一段階下げた猛毒薬Eを二つ生成して。
この「L」とか「E」は、アイテムの品質を表しているそうで、下から
私はこれをステータス画面のジョブ専用スキルの後ろにいつの間にか追加で表示されていたアルファベットをタップしたことで知りました。
ジョブクラスもアイテムの品質と同様の階級で示している、とあったので。
というわけで、品質が下がってしまったわけですから、さっきと同じように、とはいかず……。
HPゲージが半分以下の黄色になるのに十三秒。
十パーセント以下の赤色になるのに二十三秒を要しました。
弾けるまでは二十五秒です。
……いえ、充分すぎますね。
恐らくですが、初期段階でゲットしていいアイテムではないような気がします。
モンスターたちも苦しんでいたみたいで動きが鈍くなっていましたから、避けやすくなっていましたし……。
これ、売るのは控えた方がいいのかもしれません……。
なんとなくですが、それが正解であるように思えました。
さて、プディン三体を倒したポーチの中の方はこんな感じに。
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・フラスコ(黄プディンの粘質水)
・フラスコ(黄プディンの粘質水)
・フラスコ(黄プディンの粘質水)
・フラスコ(空)
・黄色い魔石×10
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
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・
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ドロップしたのは全てで、黄色い魔石十二個と黄プディンの粘質水十二個分。
魔石は残りの二体のプディンを倒すのに二個使ってしまいましたから、手元に残ったのは十個です。
それは仕方ないにしても……。
……フラスコの数が少ないのが悩ましい問題ですね。
二個分は使っていて、三個分は回収しましたが、アイテム不足の所為で回収しきれなかった黄プディンの粘質水が七個分も地面に転がっていました。
どう足掻いても手には入れられないので諦めるしかないのですが、……ああ、なんてもったいないのでしょう……。
フラスコの数を早めに増やした方がいいかもしれません。
しばらく何もしないでいると、回収できなかったアイテムが点滅して消えていきます。
アイテムが完全に消失すると同時に閉ざされていた茨の壁の一部が消え、通れるようになりました。
その先を窺ってみると、階段へと続いていた一本道に出られるようです。
階段を上ろうとした時に前後を茨で塞がれて退くこともできなくなっていましたが、後方に出現した茨も取り除かれていました。
私は階段へと慎重に進みながら独り言ちました。
「ダンジョンから出られれば、ログアウトできるよね?」
と。
その時です。
『
という「声さん」の声が聞こえてきたのです。
私は驚きました。
「ひゃわっ!? え? えっ!? 『声さん』!? っていうか、ログアウトできるんですか、ここ!?」
『セツ様が私のことを「声さん」と呼ぶことを認識しました。……はい。どのダンジョンにおいてもボス部屋の前は
ここは
……それ、早く言ってよぅ。
ここに最初に来た時に教えてくれていれば、あんなことにはならなかったのでは?
ボスも一人で倒さなくてよくなったのでは?
なんて、どうしても思ってしまいました。
……でも。
これでようやく、ゲームの世界の私を殺さずに現実に帰ることができます!
私は「はい!」と答えかけて――
不意に何かが頭の中に舞い降りてきたような感じを受けます。
「ちょ、ちょっとだけ、待ってもらっていいですか?」
『構いません。ログアウトしたくなりましたら、「ログアウトしたい」と仰ってください』
「声さん」の許可を得たので、私はあることをしてから現実世界に帰りました。
……………………
…………
……
「も、戻って来れたぁ……!」
私は起きて、フルフェイス型のヘルメットを取り外し、身体を伸ばします。
見渡すと、そこには私の部屋がありました。
八帖ほどの大きさで、勉強机とベッドとラグと背の低い丸テーブルがある部屋。
「……ひぐっ」
安心感がすごくて。
私の視界は歪んでいきました。
緊張が解けた私は、しばらくの間泣き続けていました。
そうしていると、「ごはんよー?」と私を呼ぶ母の声が聞こえてきます。
落ち着く声で。
私は目元を拭って、時計を確認しました。
時刻は夜の七時。
日付も変わっていません。
随分長いこと向こうの世界にいた気がしていましたが、現実世界ではたったの二時間程度だったようです。
「はーいっ!」
私は返事をして、ダイニングへと向うために自分の部屋を出ました。
ダイニングでは、お母さんが食器を並べていて。
いつもの光景に、私の目にはまた涙が溜まってきました。
たまらず母の背中に抱きつきます。
「ちょっと、どうしたの? 刹那?」
「……ううん。なんでもない」
母のぬくもりを感じて。
つくってくれたごはんは美味しくて。
今日はたくさんひどい目に遭ったけど……。
これだけで私は、元気になれる――そんな気持ちになれました。
お風呂に入って、歯を磨いて。
今日はもうおしまいです。
ベッドに入って目を瞑ると、数時間前に体験したことが瞼の裏に映し出されます。
疲れているのですぐに眠れそうですが、その前に私はあの人に決意表明をしようと思い立ちました。
「……えっと、『私は薬師でやっていくよ!』と……」
メッセージを送る先はあゆみちゃん。
これはゲーム内の私を殺そうとしている彼への宣戦布告になるでしょう。
でも、変えるつもりはありません。
可哀想な薬師の立場を少しでもよくしたいって思ってしまったから。
五分ほど待っても既読は付きませんでした。
っていうか、前のメッセージにもついていません。
あゆみちゃん、まだゲームの世界に入り浸っているのでしょうか?
そんな状態で宿題はちゃんとやれているのか、と心配になります。
……ん? 宿題?
「……あ」
私の顔が蒼褪めていっているのがわかります。
今日はあゆみちゃんにどやされて、帰ってきてすぐにゲームをやっていました。
要するに、私は宿題をしていなかったのです。
「ふ、ふぇええええ……!」
夜の十時。
私はいつもなら寝ようとする時間帯から宿題をやることになりました。
……ぐすん。
ゲームは宿題を終わらせてからやろうと誓った夜でした。
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