第6話 エリア最難関ダンジョンを生き延びろ3
……本当に毒薬をつくらせたいみたいです。
ふと、周りを見てみると、頭蓋骨のような実ををつけた草が周りに群生していることに今気づきました。
ポーチに入れてみると、見た目からしてなんとなく想像がついてはいたのですが、
――猛毒草――でした。
とりあえず、集めておきました。
そして、私の所持アイテムはこんな感じに……。
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所持アイテム一覧
・フラスコ(黄プディンの粘質水)
・フラスコ(空)
・フラスコ(空)
・フラスコ(空)
・黄色い魔石×1
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・猛毒草
・
・
・
・
・
・
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……私は何をしているんでしょうか?
ポーチの中が悍ましいことになっていっています。
HPを回復する薬をつくって、戦っている人たちの役に立ちたかったのですが……。
あと、なんで黄色い魔石だけは「×1」と表記されているんでしょうか?
スタックが可能、ということ?
フラスコや猛毒草は纏められていないのに、これだけ?
基準がわかりません……。
所持アイテム一覧がヤバいことになっているのを見て、ちょっと気分が落ち込んでいた私でしたが、はたと思いつきます。
助けてもらう、という方法はアリなのでは!? と。
先ほど人がいたのです。
あゆみちゃんには敵視されてしまいましたが、他のプレイヤーさんからの協力を得られればここから脱け出せるかもしれません!
少なくても、一人でいるよりもずっと安全なはずです!
そうと決まれば早速行動しましょう!
私は周りに注意を払いながら、他のプレイヤーさんを探すことにしました。
十分から二十分探し続けて、なんとか一組目を見つけることができました。
剣を持っている人、盾を持っている人、弓を持っている人、杖を持っている人の四人組です。
武器が被っていないのは「役割」というものなのでしょうか?
全てが同じ武器だと踏破しにくくなる、ってあゆみちゃんから聞いたことがあります。
って、そんなことは今の私には関係ありません。
私は早速、彼らに寄っていって、このダンジョンから出るまで一緒に行動してもらえないかとお願いしにいきました。
「あ、あの! すみません! このダンジョンの出口まで案内していただけないでしょうか!?」
頭を下げて頼み込みます。
すると、剣士の青年が困ったように言ってきました。
「うーん……。君、生産職でしょ? どうしてダンジョンに入っちゃったの? しかも、この北のダンジョンに……」
私は少し答えあぐねましたが、正直に話しました。
「それは……。えっと、私、友だちに誘われてこのゲームを始めたんですけど、その、
私の答えを受けて、今度は弓使いの女性が言ってきます。
「あー……。一番の外れ職だものね、それ。リセットを求められたわけか。HP回復ポーションなんてプディンを三対狩って手に入れた魔石三つで買えるのに、四つの素材を調合しないとつくれないなんて手間だもの。しかも、その必要素材のうちの一つに魔石が入ってるんでしょ? だったら、プディンを狩れる職業にした方が効率的よ」
「そ、そうなんですか!?」
衝撃的な事実を教えられました。
HP回復ポーションは道具屋に置いてあって、魔石三個で買えるのだそうです。
彼女の言い方からして、プディンを倒すのはさほど難しくないように聞こえてきます。
『製薬』ができるメリットって、実はない……?
私が打ちひしがれていると、杖を持った少女が続きました。
「非常に申し上げにくいことなのですが、そうなのです……。薬師は攻撃力が弱いそうなので、自分では戦えず、お薬をつくる素材は他のプレイヤーに取ってきてもらうよう依頼することになると聞きました。しかし、所持できるアイテムの枠は四十までという制限があり、素材の一つである聖水はダンジョンの決められた一部にしかなく、しかも容器が必要で、プディンの粘質水に至っては蓋のできる容器が必要になるとのことなので、アイテム欄が圧迫されますから依頼を受けてくれる方は相当なもの好きしかいないみたいです。そのため、薬師はこのゲームでは需要がなく、一番の不遇職とされていて、もう誰も就いていないという話です」
「ええ……」
滅多打ちです。
弓の人の発言だけで既に精神的に参っていたというのに追い打ちを掛けられました。
泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目、傷口に塩を塗られた気分です。
呆然と立ち尽くす私に、盾を持った青年が背を向けながら告げてきます。
「薬師を続けていても利点なんてありませんから、あなたも早くやり直すことをお勧めしますよ? ……まあ、このゲーム、リアルに近づけてしまっているので、死ぬ時は相当痛いのですが」
「っ! ま、待ってください! 死にっ、死にたくないです……っ!」
離れていく盾の人に続いていく弓の人と杖の人。
私は唯一残っていた剣の人の腕に縋りついて懇願していました。
ですが。
「……このゲーム、四人よりも多い人数でパーティを組むとペナルティが発生しちゃうんだよ。だから、悪いけど……。それに、やり直した方がきっと君のためになるから。いい職に就けたら、その時はうちのギルドにおいで。僕がマスターに掛け合ってみるから。それじゃ……」
その人は、私の手を解き、行ってしまいました。
ぽつんと一人、その場に残されてしまった私は、しばらくの間何も考えられなくなっていました。
「……つ、次!」
それでもめげずに、私は他のプレイヤーさんを探すことにしました。
痛いと知らされて、余計に死にたくなくなったから。
探して、見つけて、頼み込みます。
しかし。
……………………
「は? 薬師ぃ? やり直した方がいいぞ、お前」
……………………
「あのねぇ……! 私たちは上を目指しているの! お荷物なんて抱えていられないのよっ! ……なんで薬師がこんなとこにいるのよ……」
……………………
「ごめんねぇ? 俺たちはほら、もう四人いるから。……ほっ、四人いてよかった」
……………………
「薬がつくれるって? 薬つくるために魔石一個やるくらいなら、その魔石店で売って金にするわ!」
……………………
「り、リアルの写真送ってくれよ。そ、それで、リアル少女なら、助けてやってもいいぜ? くひひ」
……………………
「入口にいた奴が薬師の女の子をPKしたら報酬を出すとか言ってたな……。それはお前のこと――って、おい、待て! 逃げんな!」
……………………
「入口にいた人が言ってたのってこの子!? ご、ごめんね!? 人助けはしたかったんだけど、あなたを助けたら私まで狙われそうだから! 薬師を助けただけでそれは割に合わないよ!」
……………………
大体十組くらいにお願いをしたのですが、結果はこの通り……。
私は心が折れかけていました。
ダメ元で声を掛けた次の組。
もう四人で組んでいるので断られるだろうと思っていたのですが……。
「いいぜ! 一緒に行こうぜ!」
「……えっ!? い、いいんですか!? あ、ありがとうございます!」
まさかの快諾をしてくれたのです。
よかったと心から思っていました。
このあとに、私にあんなことが待ち受けているとも知らずに……。
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