第2話 設定2
『ギフテッド・オンライン』では、ゲームを始める際に決めなければいけないことがあります。
基本設定である容姿と性別と名前とある程度の年齢。
役職設定(前衛・後衛・魔術・生産)。
→前衛・後衛のみ、戦闘スタイルの設定(斬撃・突撃・打撃・防御のいずれか)。
属性の選択(地水火風のいずれか)。
種族設定(人族・精霊族・獣人族・天魔族のいずれか)。
そして、スキル設定。
スキル設定は「このゲームにおける肝」らしいです。
私はあゆみちゃんに言われた通り、設定をしていきました。
「えっと、名前はセツで、年齢は十代後半で……役職は魔術、属性は水、種族は精霊で……。あとはスキル、だね。えーっと、
『回復力四倍』(四倍より大きくはできないため)
『私の周りにいる味方が常時回復し続けるスキル』
『復活魔法の習得』
で」
私は言われた通りにしたんだけれど……。
『認証できませんでした。それらのスキルは既に取得しているプレイヤーがいます』
「……え、ええ!?」
先に取られちゃってるからもう選べない、ってこと……?
き、聞いてないよぅ……。
完全に予定が狂っちゃった……。
私は「声さん」にお願いしました。
「あ、あの、ログアウトってできますか?」
『承知しました。ログアウトの処理を行います』
ゲームを一旦終了できないか尋ねてみると、させてもらえました。
何かが繋げられるような感覚を受けて、私の意識は覚醒します。
ヘルメットを取って、急いであゆみちゃんに連絡しないと……!
――プルルルル、プルルルル
私は電話を掛けました。
でも、出ません!
「……あ、ゲームの世界に行ってるのかも……っ」
何回か電話を掛けたあとに気づきました。
間違いありません。
あゆみちゃん、嵌ってるって言ってたし……。
そして、時刻は午後六時過ぎ。
私の家の門限はたった今すぎてしまったので、これからあゆみちゃんの家に行くこともできず……。
私はあゆみちゃんにメッセージを送りました。
「あゆみちゃんが言ってたスキルは選べなかった」ということを。
早く気づいてくれればいいけど……。
それから私は、お夕飯のお手伝いをする時も、お風呂に入っている時も、スマホと睨めっこをしていましたが、あゆみちゃんからの返信はなく……。
……………………
翌日。
「なんでゲームやってねぇんだよ!」
あゆみちゃんに怒られました。
これ、私が怒られなきゃいけない案件なのでしょうか?
なんでスマホ見てないんだよ!
……これくらい思ってもいいはずです。
「ご、ごめんね? その、あゆみちゃんが言ってたスキルが取れなかったから……」
「そうならそうともっと早く言えよ。……しっかし、取られてたか。じゃあ――」
私は言ってたよ、あゆみちゃんがメッセージ読んでないだけで。
なんてことを思いながら、私はあゆみちゃんの言ったことをメモしました。
……………………
家に帰って、勉強をして。
再挑戦。
『状態異常回復魔法取得』
――ダメ。
『体力ゲージを超過しての回復』
――ダメ。
『MP回復魔法取得』
――ダメ。
『安全地帯を生み出す魔法の取得』
――ダメ。
『オートヒール付与魔法の取得』
――ダメ。
『防御壁をつくり出す魔法の取得』
――ダメ。
『デバフ解除魔法の取得』
――ダメ。
『味方全体のHP全回復魔法の取得』
――ダメ。
『味方全体のMP全回復魔法の取得』
――ダメ。
『味方全体の完全回復魔法の取得』
――ダメ。
全部ダメ……。
言われたもの全てに、「他のプレイヤーが既に所有している」と返されました。
え? これどうすればいいの?
私はまた「声さん」に待ってもらうことにして、現実に帰りました。
現実に戻ってあゆみちゃんに電話を掛けますが繋がりません。
メッセージを送りますが、既読にすらなりません。
……あー、これ、またゲームの世界に没頭してる感じだぁ……。
嫌だよぅ、怒られたくないよぅ……!
……………………
翌日。
「お前、ふざけんなよ!? 二日も待ってるのに来ないってどういうことだよ!」
「ふぇええええっ!」
案の定怒られました。
私、鬼電もしたし、スパム並みにメッセージも送ったのに……!
「ご、ごめんなさいっ! で、でも、スキルが……っ」
「今日こそ絶対始めろよ! ヒーラーいなくて困ってるって言ってんだろ!?」
「で、でも、スキル……」
「いいな!?」
「ま、待って、あゆみちゃん! あゆみちゃん!?」
私の言い訳も聞いてもらえずに、あゆみちゃんは私から離れていってしまいました。
理不尽が過ぎるよぅ……。
ど、どうしよう……。
……………………
『回復力四倍』
――ダメ。
『私の周りにいる味方が常時回復し続けるスキル』
――ダメ。
『復活魔法の習得』
――ダメ。
『状態異常回復魔法取得』
――ダメ。
『体力ゲージを超過しての回復』
――ダメ。
『MP回復魔法取得』
――ダメ。
『安全地帯を生み出す魔法の取得』
――ダメ。
『オートヒール付与魔法の取得』
――ダメ。
『防御壁をつくり出す魔法の取得』
――ダメ。
『デバフ解除魔法の取得』
――ダメ。
『味方全体のHP全回復魔法の取得』
――ダメ。
『味方全体のMP全回復魔法の取得』
――ダメ。
『味方全体の完全回復魔法の取得』
――ダメ。
やっぱりみんなダメ……。
一旦ログアウトして、あゆみちゃんに相談しようとしたけど、こっちもやっぱり繋がらず……。
「うぅ……。言われた通りにできないよぅ……。みんな取られてるんだもん……。でも、今日始めないともっと怒られちゃうし……」
私はあゆみちゃんに言われたことを書いたメモ帳を見ながら考えました。
考えて、考えて……。
ふと、思いつきます。
「そ、そうだよ! あゆみちゃん、回復ができないからこのキャラをつくれ、って言ってたじゃん! だったら、アレでもいいはずだよ! そもそも私、戦うとかあんまり得意じゃないし……!」
あることを閃いた私は、ヘルメットをつけてゲームにログインします。
『ようこそお越しくださいました。設定はお決まりになりましたか?』
「はい!」
私は選択していきます。
========
プレイヤー名:セツ
性別:女性
年齢:十代後半
役職:生産
属性:水
種族:精霊
スキル:『薬系アイテムでの上昇値上限無視』
『薬系アイテムの品質を無限に向上できるスキル』
『私がつくった薬系アイテムの有効期限撤廃』
========
「これでお願いします!」
『確認中……。保有者がいないことを確認しました。それらのスキルの保有が認められます』
「やった!」
私が考えついたのは、回復アイテムをつくり出せる薬師になること。
これならあゆみちゃんの要望にも応えられるし、私は戦場に赴かなくて済むし、一石二鳥だよね!
『それではセツ様。「ギフテッド・オンライン」の世界をお楽しみください』
私はちょっとワクワクしていました。
私の発想の転換をあゆみちゃんに褒めてもらえるんじゃないか、って。
このあとに、何が待っているのかも知らずに……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます