戦う薬師のサイキョーセツ! ~フルダイブ型MMORPGギフテッド・オンラインの猛者~

日夜 棲家

第一章:ゲーム開始と初めての仲間

第1話 設定1

 フルダイブ型MMORPG『ギフテッド・オンライン』――



 それは、RPGというジャンルでありながら「3つまでしかスキルを持てない」という異質なシステムを採用したヘルメット型のゲーム機「ダイブ・トゥ・ドリーム」のオンラインゲーム。

 それも、その「3つしか持てないスキル」はゲームを始めた時、即ちキャラクターを設定する際にプレイヤー自身がとされていました。しかも、これには「他のプレイヤーが既に取っているスキルは得られない」という制約もあったのです。


 そんな癖の強いゲームの世界に、一人の少女が迷い込みます。……本人がやろうとしたわけではなく、幼馴染で友だちの男の子に誘われて始める、というスタートの仕方だったのですが。



 彼女の名前は埼京刹那サイキョウ・セツナ



 現実世界では虫も殺せない穏やかな性格の彼女ですが、のちにこう呼ばれるようになります。



――ギフテッドの猛者・戦う薬師バトル・ファーマシスト――と。



――――――――



「なあ、刹那ぁ」

「ん? なーにー? あゆみちゃん?」

「あゆみちゃんゆーな。オレのことはオードーと呼べっていつも言ってるだろ」


 学校帰り。私はあゆみちゃんに声を掛けられました。

 あゆみちゃんは、「あゆみちゃん」って呼ばれるのが嫌いみたい。

 あゆみちゃんは横道歩ヨコミチ・アユミちゃんなのに、いつも、苗字を音読みにした「『オウドウ』と呼べ」って言ってくるの。

 「あゆみちゃん」の方が可愛いのに……。


「それで? どうしたの、あゆみちゃん?」

「なんで直さないんだよ。……まあいいや。そんなことより! 今、『ギフテッド・オンライン』っていうのが熱いんだ! 刹那もやってくれないか!?」


 私が聞くと、あゆみちゃんはカバンからゲームの入ったパッケージを取り出して興奮気味に私を誘ってきます。


「え? でも、この前やったゲームであゆみちゃん、『お前は下手だからもう誘わない!』って、私に怒ったじゃん。私、また怒られたくないんだけど……」

「そいうや、そんなこと言った気が……。で、でも、今回のは大丈夫だと思うぜ! 今話題のフルダイブ型だから! 夢を見てるみたいに、自分の身体を動かす感覚でプレイできるんだよ! 刹那、運動得意だろ?」


 私はあんまりゲームをやったことがなかったから、以前、あゆみちゃんに誘ってもらった時にミスを連発して怒られてたんだよね……。

 あんな経験はもうしたくなかったから断ろうとしたんだけど、あゆみちゃんは折れなくて。


「頼むよ! オレ、『ギフテッド・オンラインこれ』、ベータテストからやってるんだよ! それなのにパーティに回復職がいない所為で次のエリアにいけなくて! お前、そういうの似合いそうじゃん! それに、発売したばかりだから今から始めても遅れは取らないだろうし!」

「う、うーん……。あゆみちゃんがそこまで言うなら……」

「おお! やってくれるのか!? よっしゃー!」


 私はあゆみちゃんの押しに負けて、そのゲームをやることになりました。


「刹那、パソコンは持ってたよな!? これ、ゲーム機の『DtoDダイブ・トゥ・ドリーム』とパソコンにダウンロードして使うソフト! ゲーム機は姉貴のだけど、大学生になって家出てった時に忘れて行ってたから、お前に貸してやる!」

「ええ!? イチ姉の!? い、いいのかなぁ……?」

「大丈夫だろ。姉貴、お前には甘かったし」


 あゆみちゃん、というか、あゆみちゃんのお姉さん・逸身イツミお姉ちゃんのものを貸してもらって。

 なんか、先が思いやられるスタートだよぅ……。



……………………



 家に帰った私は、勉強を終わらせて、ゲームを始めてみることにしました。

 ダウンロードの時間、すごく長かったんだけど……。

 パソコンが重くならないか心配……。


 ちょっとだけ調べてみたんだけど、『DtoD』は夢を見るみたいに行うゲームみたいだから、ベッドに寝転んでヘルメット(ヘルギアっていうみたい)を装着してみたの。

 すると、一瞬、何かが切り離されるような感覚を受けて……。

 気がつくと私は、



 満天の星空を眺めていました。



「……きれい」


 私が輝く星たちに見惚れていると、突然脳内に「声」が聞こえてきました。


『ようこそ。ギフテッド・オンラインの世界へ――』

「ひゃわっ!?」


 いきなりだったし、妙な感覚だったから変な声が出ちゃった……。

 飛び起きちゃったし……。

 ……うう、恥ずかしい。


 私は誰にも聞かれていなかったことを見渡して確認して、ホッとしました。

 少し、恥ずかしさが和らぎました。


 それから、心に聞こえてきた「声」のことを考えていると、また、妙な感覚が与えられます。


『ここでは「あなた」の設定を行うことができます』


 ……設定?

 疑問に思っていると、私の目の前に大きな姿見が出現しました。

 映っているのは毎朝確認している私の姿です。


『その姿身には、あなたがイメージするあなたの姿が映し出されています。

 その姿がこのゲームをプレイする時の「あなた」の姿になります。

 一から作り直してもいいですし、ここから少しだけ弄ることも可能です。

 念じることで姿を変えられますのでお試しください。

 決まりましたら「この姿でプレイする」と宣言してください。

 注意事項:ゲーム内で死ぬまで姿を変更することができません』


 説明がありました。

 どうやら、鏡に映っているその姿が私の分身となるようです。

 弄ってもいい、ということだったので、私はちょっと手を加えることにしました。


「えっと、ここと、ここは小さくして……背はちょっと高くしようかな……?」


 視線が気になる部分を小さくして、コンプレックスだった低い身長を二十センチほど伸ばしました。

 あ、憧れのモデル体型です。


 ただ、


『注意:現実世界とあまりにも乖離しています。思うように身体を動かせなくなる恐れがあります』


 と、心に響く「声さん」に言われてしまって、やむなく十センチ下げました。

 ああ、憧れのモデル体型が……っ。



「えっと、じゃ、じゃあ、この姿でプレイします……」

『最終確認です。よろしいですか?』

「は、はい」

『承りました。データを保存しています。しばらくお待ちください』


 結局、私は長身を手に入れられませんでした。

 で、でも、スリムにはできたし、一般的な身長までは伸ばせたし、ちょっとゲームをやるのが楽しみになってきました。



 それから、私はあゆみちゃんに言われたことを思い出しながら「キャラ設定」を詰めていくのですが、問題が発生しました。

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