第8話 仲間探し
「で、どうするんだ。今の職場は」
「んー。必要があれば顔を出す感じにしようかなと思っています」
「……入庁したてってわけでもないだろうけど、若い職員がそんな自由なことしていいのか?」
「ま、そこは実績とコネということで」
「ふーん、まぁいいけど」
なんだかスグルはちょいちょい黒い面を出してきて怖い。話しのペースを握ってくるのも上手くて、気付いたらリベンジャーズを結成してしまったのだから。
「で、スグルはブレーン担当なわけだろ。これからどうしていくんだ? 実を言うと俺は戦闘能力しか取り柄がない」
「ウォフ」
ロキはやれやれと言った表情で首を左右に振る。しょうがないだろ。頭より体を使う派なんだ。
「えぇ、まずは仲間集めですね。リベンジャーズというくらいですから、テロ組織、できればエデンに対して報復を考えている探索者を集めたいです」
「……あー、反対。人数は少なければ少ないほどいい」
「理由を聞きましょう」
本音を言えば少なければ少ないほど、色々と楽だからだ。逆に増えれば増える程身動きが取りにくくなる。
「……裏切りものが入り込む可能性がある」
スグルにはあえてそんな理由を切ってみる。
「なるほど。可能性としてはありますね」
「だろー? というわけでリベンジャーズは俺とロキとスグルの三人でやっていく」
「僕はそれでも増やすべきだと思いますね。確かに国内の探索者の中でなら薙坂さんはナンバーワンかも知れません。ですが、それはダンジョン後進国である日本の話しです。世界のトップ探索者たちは推定ダンジョンレベル1万越えのダンジョンに当たり前に潜っていますから。そして、裏社会ナンバーワンのエデンの幹部たちはそのレベルです。構成員の数は何十万とも言われており、まさか薙坂さんは仇敵が一人で街を歩いているところにタイマンを仕掛けるつもりでしょうか?」
これは旗色良しかと思いきや、スグルが早口で捲し立ててくる。要約するとこうだ。薙坂十馬、お前ひとりで勝てるのか? と。
「いいか、スグル。できる、できないじゃない、やるか、やら──」
「薙坂さん、それは万能な言葉じゃありませんからね?」
「ハァ、分かったよ。ていうか、俺、スグルに言いくるめられてばっかじゃね?」
「そんなことありませんよ? 話し合って相談した結果なだけです。というわけで、実はもう僕は仲間の一人に目星をつけています」
「……用意周到なことで」
スグルはテーブルの上にタブレットを出し、何枚かのスライドを見せてくる。
「場所はダンジョン先進国の一つであるロシア。この地域にテロ被害にあった孤児を集めて、戦闘訓練を仕込む施設が存在します。もちろん公の施設じゃありませんから、中ではどんな非合法なことが行われているかも分かりません」
「……胸糞悪い場所だな」
「えぇ。そして、今回その施設の子たちがダンジョンレベル推定1万1000と言われている未踏破ダンジョンに挑んだとのことです。十五人のパーティの内、十三人が死亡。なんとかダンジョンボスを倒し、一人が生還。そして、もう一人はなんらかの理由で、取り残されているとのことです」
「なるほど。で?」
「助けにいきましょう。そして仲間に引き入れましょう。恐らく僕の予想が正しければその子はとびっきり強いです」
「…………俺、ロシア語喋れないんだけど?」
「安心して下さい。僕はダンジョン先進国の主要な言葉は日常会話レベルで話せますから」
「さいですか。ロシアね。けど俺探索者のライセンスも返しちゃったし、そもそも外国のダンジョンとか入ったことないから手順とか知らないぞ」
「任せて下さい。そのための僕ですから」
「頼もしいこって」
「ウォフ」
「はいはい。もちろんロキも頼もしいよ。俺には頼もしい仲間がこんなにいて果報者だよ」
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