第59話 ユクラ(アンデッド)討伐?

スナフ「お前達、ユクラを森で倒したと言ったな? その後、死体はどうした…?」


ペキ「やってしまったようでござるな……」


スナフ「つまり? 死体はそのまま放置した…と?」


ペキ「ソノ様デゴザイマスル…」


スナフ「お前なぁ、新人研修で、魔物を殺したらちゃんと燃やすか埋めるかしないといかんと教わらなかったか?」


ペキ「うっかりしたでござる、面目ない」


マツ「すいません…私達も、襲われるなんて初めての経験だったので……人を殺したのも? 動揺して失念してしまいました……」


スナフ「まぁ、初心者にありがちなミスだな。それに、そこまで深刻な話でもない。ターンアンデッドでも使わない限り、埋めても燃やしても、(アンデッドに)なるときはなるからな」


スナフ「しかし、目撃されたアンデッドはユクラで確定か…。ならば……


…原因を作ったお前達できっちり始末をつけてこい」


ペキ「……でござるな」


マツ「ナイレンさんには……」


スナフ「わざわざ知らせんでいいだろ、身内が腐ってる姿なんか見たくはないだろうからな」


スナフ「思い出は美しいままのほうがいい。歳をとってそう思うようになった…」


マツ「なるほど…」


ペキ「…そんなもんでござるか?」

ペキ「…なんとなく、拙者だったら家族なら自分の手で決着をつけてやりたいと思う気がするでござるが」


スナフ「お前、家族が病気になったとして。もう助からない、苦しむだけだから家族のお前がトドメを刺してやれと言われたらどう思う? できるか? 誰かにやってほしいとは思わんか?」


ペキ「そう言われると、そんな気もするでござるが…」




  +  +  +  +




ユクラと思われるアンデッドが目撃されたという場所の付近を捜索しているペキとマツ With バリー。


しばらく歩くと、森の中からこちらを伺う視線があった。


マツ「あれは…ユクラさん? ですよね?」


ペキ「間違いないでござるな、腐りかけてはいるが、ユクラ殿でござる」


ユクラ「……!」


ユクラはペキを見ると、ゆっくりと近づいてきた。


何か不自然に見えた気がしたが、近づいてみて理由が分かった。ユクラは自分の頭を手で抱えて運んでいたのである。


マツ「そういえば、ペキさん首を刎ねてましたね」


ペキ「武士の情け……ひと思いにやるでござる」


鬼切丸を抜いたペキ。


だが、それを見たユクラは慌てて手を前に出し、何かを訴えているようであった。


ペキ「……?」


マツ「もしかして、まだ意識があるんですかね?」


ペキ「どうでござろう……」


ペキ「ユクラ殿? 拙者が分かるでござるか?」


ユクラは抱えている自分の頭を上下に揺すった。頷いているつもりらしい。


そして、ユクラは木の枝を拾うと、地面に何かを書き始めた。


ペキ「どうやら喋ることはできないようでござるな」


マツ「ゾンビになったのに、意識があるなんて事、あるんでしょうか?」


ペキ「……読めるでござるか?」


マツ「…ナ…イ……?」


ユクラが地面に文字を書いているようだったが、しかし途中で枝が折れてしまった。


別の枝を探しているがなかなか見つからないようなので、ペキはちょうど良さげな長さと強度の枝を剣で切ってユクラに渡してやると、続きを書き始めた。


マツ「…レ? もしかしてナイレンと書きたいのでは?」


ただ、時々意識が飛ぶのか、字を書く手が止まり、あらぬほうに動き始める。だが、しばらくすると我に帰ったような様子で、再び字を書き始めるので、なかなか何を言いたいのかが伝わらない。


ペキ達がなんとか判別した文字は…


マツ「ナイレン、金、渡す、庭、ですかね」


ペキ「察するに、妹のナイレン殿に金を渡したい、どこかの庭に埋められている、という感じでござるか…?」


また、意識が飛んだようでどこかえ歩いて行ったが、しばらく待つと戻ってきたので同じことを問いかけると、ユクラは頷いた。


ペキ「妹のナイレン殿に金を渡したい、それが未練で死にきれずアンデッドになったでござるか…」


マツ「その庭というのはどこなんですか? え、自分の家? 実家?」


ペキ「では、ナイレン殿には伝えておくので、ここで大人しく成仏するでござるよ。え… ちゃんとナイレン殿に金が渡ったのを確認してから? それまでここで待ってる? 仕方ないでござるねぇ…」


とりあえずユクラを討伐する事は一旦中止して、街に戻る事にしたペキとマツであった。



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