第58話 幽霊の噂?

マル「なんでお前らが居るんだよ?!」


無事、Eランクの冒険者証を受け取ったペキ・マツ(&バリー)、ヨサクル、マルはギルド併設の酒場でささやかな打ち上げをやっていた。たまたまギルドに居たフォギアも一緒に祝ってくれている。だが…


…なぜかいつのまにかサバルとその仲間のオーリとダワーもテーブルについていた。


サバル「別に…他に席が空いていなかっただけだ」


マル「空いてんだろうが!」


サバル「……お前のEランク昇格を俺達も祝ってやろうと思ってな」


マル「祝う? サバルが? 俺を? 気持ち悪いんですけど?」


マツ「まぁまぁいいじゃないですか、目出度い事はみんなで祝えばよいのですよ。過去の蟠りは水に流して、いや酒に流して…」

マツ「あれ、水に流してって表現はこっちにはないのかな?」


マル「酒のんだくらいで簡単に流せるような蟠りじゃないんだが…?」


ペキ「“酒に流して” でニュアンスは伝わってるようでござる」


マル「どうせまたネチネチ嫌味を言いに来たんだろ、サバルコイツは?」


マルのそのセリフにサバルは渋い顔をし、オーリとダワーは半笑いで肩をすくめた。


ペキ「どうやら、本気のようでござるな?」


どうやらサバルがマルを仲間にしたいと考えているのは本当らしい。


ペキ「マル殿もどうでござる? サバル殿に、もう一度だけチャンスを与えてやってみるというのは…?」


マル「気が進まない」


ペキ「ではもし今後、サバル殿がマル殿に意地悪をしたり、意地悪な事を言ったら、その時点でサバル殿とは縁切り。サバル殿は二度とマル殿には近づかない。約束を守っている間はチャンスをやる、と言う事でどうでござるか?」

ペキ「サバル殿も、マル殿への思いが本物なら、約束できるでござろう?」


サバル「~~~い、いいだろう」


マル「え~~~マジかぁ? てか、絶対守れないだろ?」


サバル「約束は守る」


マル「信じられない」


ペキ「でも、ヨサクル殿はサバル殿達とパーティを組むのはまんざらでもないようでござるよ?」


マル「え? ヨサクルが?」


オーリとダワーはマルはどうでもいいが、ヨサクルには興味を示し、仲間にならないかと勧誘していたのだ。サバルは恋? のライバルになりそうなヨサクルの加入について渋い顔はしていたが、反対はしなかった。


マル「…ヨサクルが一緒なら、まぁ……」


サバル「本当か?!」


マル「あくまでお試しだからな! 約束を守らなかったら即終わりだからな」


サバル「ああ、大切にする」


マル「なんか言い回しが気持ち悪いっての!」


サバル「仲間を大切にするのはおかしいことではないだろう?」


ヨサクル「んだんだ。マルはオラが守るがら安心してけろ」


ヨサクルは既に酔っているようで顔が赤い。

マルは酒は飲んでいないが、ヨサクルのセリフを聞いて赤くなっていた。それを見たサバルは苦々しい顔をする。


フォギア「そういえばペキ」

フォギア「森に…幽霊レイスが出るって噂、聞いたか?」


ペキ「幽霊レイス…というとアンデッド系の魔物の? 実体のない霧のような魔物だとか?」


フォギア「ああ。この街の周辺の森には、ほとんどアンデッド系の魔物は出なかったんだけどな…」


ペキ「物理攻撃が効かないのでござろう? アンデッドに有効な攻撃というと…ターンアンデッドとかあるでござるか?」


フォギア「よく知ってるな。ターンアンデッドが使えれば、アンデッド系魔物に対しては無双できるが、聖属性魔法が使える者はみんな神官とかになってるから、冒険者には少ないんだよなぁ」


ペキ「となると、厄介でござるな」


フォギア「まぁ向こうもこちらに物理攻撃はしてこないんだけどな。その代わり、ドレインタッチっていう厄介な攻撃をしてくるが、アンデッド避けのお守りを装備してれば触ってこないから、用意しておいたほうがいいかもな」


マツ「ドレインタッチ?」


ペキ「おそらく、生命力を吸い取る系の攻撃でござろう」


フォギア「そう、特に物理的なダメージはないんだが、何度もやられるとだんだん体調が悪くなってくるという嫌らしい攻撃だ」


ペキ「お守りというのは教会で売っているでござるか? ならば、明日にでも買いにいくでござるかね…」

マツ「そうですね、幽霊は私もちょっと苦手でして…」


ペキ「マツ殿は、地下墓地のアンデッド掃除の依頼では平気だったように思ったでござるが…」


マツ「いえ、“お化け”でも実体があるタイプは平気なんです。でも、幽霊のように触れない系は苦手でして…」


ペキ「なるほど」




  +  +  +  +




翌日。これからどうするか決めていないペキだったが、とりあえず冒険者ギルドにEランクで受けられる依頼にどんなものがあるか確認に来た。


ちなみに結局、マルとヨサクルは、サバル・オーリ・ダワーの三人とパーティを組む事にしたようだ。(もともとサバル達は三人だけだったので、もう少し人数を増やしたいと思っていたらしい。)


ペキとマツ(&バリーさん)は今まで通り、二人と一匹での活動である。


ペキ「そろそろ拙者達もパーティ名を決めないといかんでござるかな」


マツ「ペキさんが決めてくださっていいですよ、私はそういうの、センスないので…」


ペキ「拙者もないでござるよ。拙者につけさせると、【ペキ&マツwithバリー】とかになるでござるよ。略してペキマツ」


マツ「はは、ありましたね、名前をバンド名にしちゃう感じ。でもそれはちょっとアレですよねぇ…」


ペキ「バンドではないでござるが」


ミムリィ「あ、ペキさん、ちょうど良かった。マスタースナフが呼んでいます」


ペキ「ギルマス殿が? なんでござろう…」


   ・

   ・

   ・


ギルマスの執務室に通されたペキ。


スナフ「最近、森にアンデッドが現れるようになったという報告があってな」


ペキ「ああ、昨日フォギア殿に聞いたでござる。幽霊レイスが出るという噂があるとか」


スナフ「いや、レイスではない、いや、レイスも居るのかもしれないが未確認だ。実際に目撃報告があったのはリビングデッドだ」


マツ「リビングデッドというと」

ペキ「いわゆるゾンビでござるな」


ペキ「それで、なぜ拙者達が呼ばれたでござる? 拙者達は聖属性魔法は使えないでござるが?」


スナフ「ああいや、討伐しろという話じゃない。実はな、そのゾンビ・・・、ユクラに似ていたらしいのだ…」


マツ「え?!」

ペキ「あ~……」


スナフ「お前達、ユクラを森で倒したと言ったな? その後、死体はどうした…?」



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