第52話 もちろん気づいてたでござるよ!
サバル「そうだ……あんな大事になるなんて思わなくてな…。お前は大怪我してしまうし…」
マル「今でも傷が残ってるぞ!」
サバル「…ほんとにすまん……。体の傷だけじゃない、 お前の心にも大きな傷を残してしまった。その後、お前はすっかり蛇が苦手になっちまって…」
サバル「お前、将来冒険者になりたいって言ってただろ。だけど、蛇が苦手なままじゃ、冒険者になんかなれねぇと思って…」
サバル「謝って済む問題じゃねぇと思って、俺なりに考えたんだよ。それで……お前のその性格だ」
マル「性格?」
サバル「お前は、どんなにイタズラされても誂われてもへこたれなかった」
サバル「それどころか、誂われるほどに発奮して、敵意むき出して努力する」
サバル「俺は、その性格を利用すれば、お前の蛇嫌いもすぐに克服できるだろうと思ったんだ」
マル「……はぁ?」
ペキ「じゃぁ、サバル殿は、マルを奮起させるためにずっと虐めていたというわけでござるか?」
サバル「ああ、そうだ。だが、それでもお前の蛇嫌いは治るどころか、却って筋金入りになっちまって……。そのままとうとう成人して冒険者になる年齢になっちまった。俺は、このままじゃ拙いと思って……」
マル「それで……また蛇をけしかけたってわけか、子供みたいに?」
サバル「すまん…。最近のお前は大分蛇にも慣れてきたって言ってたから、あとひと押しすれば一気に…と思ったんだが、逆効果だったみたいだな」
マル「それで、落とし穴に落として上から大量の蛇を降らせたってのか? ふざけんなよ、殺してやろうかと思ったぞ」
ペキ「そんな事したでござるか……」
マツ「それは酷い……」
サバル「……すまん」
サバル「だが、とうとう本当に蛇嫌いを克服できたみたいで、良かった。ヨサクルのお陰というのが気に入らんが。本当は、俺がお前の蛇嫌いを治してやりたかったんだが…」
ヨサクル「なすてオラだと気に入らねんだ?」
マツ「それはほら、サバルさんはマルさんが好きだったんですから、嫉妬ですよ。そうですよね?」
サバル「……」
オーリ「ほら、言えよ、正直になるって決めたんだろ?」
サバル「…ああ、ずっと、初めて会った幼い時から、一目惚れだったんだ。冒険者になったら一緒にパーティを組むのが夢だった。なぁマル、俺達のパーティに入れ! 俺とパーティを組んでくれ!」
ペキ「ほう、これは、俗にいうビーエルって奴でござるな? ま、そういう時代でござるよなぁ」
マツ「ペキさん勘違いしてません? マルさんは女の子ですよ?」
ヨサクル「気づいてながったんか?」
ペキ「…え?」
ペキ「……なんとまさか、マル殿は俺っ娘でござったのか!」
マツ「気づいてなかったんですね…」
ペキ「え、いや、いや気づいていたでござるよ、もちろん! マル殿か隠してるから、あわせていただけでござるよ」
マル「いや、隠すつもりはなかったんだけど…まぁ、サバルに舐められないように突っ張って喋る癖がついちまってて、紛らわしくてごめん…」
ペキ「いやいやいや、分かっていたでござるよ~~~」
マツ「意外と往生際の悪い……」
ペキ「……すまんでござる。気づいてなかったでござる」
マツ「急に素直になりましたね」
マツ「まぁしょうがないですよ、ペキさん、あんまり、繊細な人の心の機微を読むとか、苦手そうですもんねぇ……」
ペキ「しょぼん…でござる」
ダワー「ふふ。これでやっと、“ガキ大将”って通り名卒業できそうじゃねぇか?」
サバル「…くそっ! お前達はそうやっていつも誂いやがって……」
オーリ「サバルがマルの事を誂うから、俺達も乗ってマルの事を馬鹿にするような事を言ってみたんだが、そうすると
ダワー「マルの事を馬鹿にしていいのは俺だけだ、アイツは本当は凄いやつだ、なんて言ってな」(笑)
サバル「だが、コイツラ、俺が怒るの分かってて、わざとマルの事馬鹿にするような事を言い続けやがって」
ダワー「マルの悪口を言われた時のお前の顔色が面白くてな!」
サバル「意地の悪い奴らだよ……」
マル「…っざけんなよ!」
サバル「…マル?」
マル「今更急にそんな事言われたって、納得できるわけねぇだろ!」
マル「俺がどれだけ、苦しんだと思ってんだよ……!」
叫びながらマルの目からは涙がこぼれ落ちていた。
サバル「……だよな。分かっている。これからはもう誂ったり虐めたりはしない。尊敬される人間になるよう努力するよ……」
ダワー「いよっ、さすが“ガキ大将”冒険者!」
サバル「てめぇ、ぶっ殺すぞ」
サバル「すぐには無理だろうが、俺もいつか、マルに尊敬されるような冒険者になってみせる…」
マル「……う、うるせぇ! もう分かったから! いや分からねぇけど! 言いたい事は分かったから、もうあっち行ってろよ!」
サバル「……ああ。すまなかった……」
マル「もう俺に近づいてくんな!」
サバルは悲しそうな顔をしたが、もう一度頭を下げ、黙って去っていった。
ペキ「マル殿…いいのでござるか?」
マツ「そりゃ、まぁ。ずっと虐められたのに、本当は好きだったとか言われても、被害者側はそうですかと納得はできないですよねぇ…」
ヨサクル「ま、少し時間が必要だべよ。冒険者として、時間はいぐらでもあるしな。それより、昇級試験の続き、やるんだべ?」
ペキ「そうでござるな。行くでござる」
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