第49話 サバル vs ヨクサル

マル「ヨサクル、やめとけって!」


ヨサクル「…マル。オラはな、結構な覚悟で村を出できだんだぁ。一端の冒険者にならねば、村に帰れね」

ヨサクル「これから冒険者としてやって行ぐなら、こんなこたままあるど思う。そういう事も乗り越えて、オラは強ぐなりてぇんだ」


マル「ヨサクル…」


ヨサクル「それに、オラが負けるとは限らんだべ?」


サバル「何ごちゃごちゃ言ってやがる! 怖気づいたのか?!」


既に訓練場の中央で木剣を持ってまっているサバル。


サバル「おい、ヨサクル、喜べ。俺が勝ったらお前は俺の舎弟にしてやろう」


ヨサクル「そげな事……でええんだか?」


サバル「ああ、ただし、奴隷のように扱き使ってやるがな」


ヨサクル「んだば、もしオラが勝ったら?」


サバル「お前が勝つなんて事はありえねぇが」


ヨサクル「…もしオラが勝っだら、マルに謝れ。聞いたど? 今までさんざん虐めてきたそうでねが? そっがら今後は二度とマルを虐めねぇと約束しろ」


サバル「それは……」

サバル「……いいだろう」


すると、野次馬の冒険者の中から一人、ノリグという者が出てきて言った。


ノリグ「俺が審判をやってやる。賭けがきちんと成立しないと困るからな」


ノリグ「どちらかが参ったと言うか戦闘不能になったら終了だ。多少の怪我は仕方ないが、殺すのは禁止だ。殺した場合は反則負けとするぞ」


サバル「ふ、死なない程度にボコボコにしてやる」


ヨサクル「できっかな?」


ノリグ「では……始め!」


開始の号令と共に木剣で激しく斬り結び始める二人。


だが……


サバルとの実力の差は歴然であった。自信有りげだった態度とは裏腹に、ヨサクルはサバルに圧倒されていく。


なんとか大ダメージは避けているものの、みるみるボロボロになっていくヨサクル。


サバルのほうも、意地悪く削る・・ような攻撃ばかりしているようだ。


マル「言わんこっちゃない…。サバルは腕はいいんだよ、腹立たしい事に」


ヨサクルがサバルに蹴り飛ばされ、マルの傍に転がってきた。


マル「ヨサクル、ボロボロじゃないか! もうやめろ、降参するんだ!」


サバル「降参すればヨサクルは俺の小間使だぞ?」


マル「…俺がなる」


サバル「?」


マル「俺がサバルの舎弟になる。だからヨサクルには手をだすな!」


サバル「ほう、それはいい案だな。それでいこうか」


ヨサクル「これはオラとオメの勝負だ、マルは関係ねぇべ」


サバル「ふん、仲良しごっこには反吐が出る…」


ヨサクル「たぁしかに、剣では歯が立たねぇかもしんねぇけんど…」

ヨサクル「この間、訓練場の模擬剣漁っててみつけだだよ」


マル「ヨサクル、何を言ってる…?」


ヨサクル「おい、センパイ・・・・! 剣では歯がたたね。オラの得意な武器に変えさせてくんろ」


サバル「ふん、武器を変えたって同じだ。槍でもなんでも好きにしろ」


ヨサクルは訓練場の端にある模擬剣置き場に行くと、奥から斧を引っ張り出してきた。(もちろん木でできた模擬剣ならぬ模擬斧である。)


サバル「…ほう、斧使いだったのか」


冒険者の中には戦斧バトルアックスを武器として使う者も居るので練習用に用意してあったようだ。ヨサクルはそれを見つけていたのだ。


ヨサクル「ん~やっぱ剣よりこっちのがしっぐりくるなぁ。オラの実家は樵だったんで、子供の頃から斧は振ってだんだぁ」


サバル「だが、そんな重そうなエモノで、俺の剣のスピードについてこれ…」

サバル「…!?」


だが、ヨサクルが木を切るように斧で素振りをしてみせると、そのスイングの鋭さにサバルは絶句する。


ヨサクル「オラ、木を切るのは得意だでな。シンバチの木だって切った事あるだよ。ミルミルも褒めてくれただ」

ヨサクル「さぁ行くど。オメだってシンバチの木ほどは硬くはあんめぇ?」


サバル「シンバチとかミルミルとか、知らねぇっての!」



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