第43話 昇級試験の課題は…
ピーナ「昇級試験の課題
ピーナ「ひとつは~、街の住民の依頼を三件以上達成すること。
ふたつめは~、森で指定された薬草を採集してくる事~
みっつめは、ゴブリン討伐10匹以上です~」
マル「よし! ペキ! 勝負だ! 負けないぞ!」
ピーナ「だめでーす」
マル「なんでだよ? 何がだめなんだ?」
ピーナ「依頼はペキさん達と一緒に協力して受けてもらいます」
マル「一緒に? それじゃぁ勝負がつかないじゃないか」
ピーナ「昇級試験は勝負ではありませんから~。受けた人全員が受かってほしいのです~」
ピーナ「それに、街の外に出る依頼の場合は、最近は魔物が強くなってて危険なので、人数が居たほうが安全なのです~」
ピーナ「なので、他にも受験者を募りました~」
『ど、ども…よろしくおねげぇするだよ』
ペキ「あれ、そこもとは確か…」
マツ「新人研修で一緒でしたね」
ペキ「確か…ヨサク殿」
ヨサク「ヨサクじゃねぇ、おらはヨサクルだよ」
マツ「ヨサクじゃ樵ですよ」
ヨサクル「ん? なんでおらの実家が樵だって知ってるんだ?」
ペキ「…ほら!」
マツ「…すぐ乗っかりますよね、ペキさん」
バリー「…にゃ」
ペキ「臨機応変! “機”は逃さず、細かいことは気にしない! 主義でござる」
ヨサクル「おら、本当はまだ昇級なんて
ペキ「拙者達も勉強のために受験するので同じでござるよ」
ヨサクル「おめだつも落ちる前提か? なら気が楽だなす」
マル「違うぞ、こいつらはもうEランク昇格が決まってるんだよ。後付けで試験受けたって体裁にしようとしてるだけだ。ギルマスの知り合いだか知らんけど? ずりぃよな、依怙贔屓だよまったく」
ピーナ「依怙贔屓じゃないって言ってるのに~、ギルマスに言いつけますよ~」
マル「…ちっ…」
マツ「それではまずは、街の住民の依頼から片付けますか」
ペキ「お、マツ殿、やる気満々でござるな」
マツ「ええ、いつまでもペキさんにおんぶに抱っこじゃ拙いですからね」
ペキ「それで、街中の依頼とは、どんなのがあるでござるか?」
ピーナ「色々ありますよ~。
マル「雑用ばっかじゃねぇか! それも汚れ仕事ばっかり」
ピーナ「そうですよ~、人手が足りなくて冒険者に色々依頼が出るんです。街の中の依頼は、GランクやHランクの冒険者でも受けられるので、子供達の生活の糧になってる側面もあるのですが~」
ペキ「お、Fランクより下のランクがあるとは聞いてないでござるよ?」
マル「ほんとに何も知らねぇんだな。GとかHは、街の中の依頼限定の、孤児とか障害持ちとかワケアリの人間用のランクなんだよ」
ピーナ「そうで~す。なので、子供達の仕事を奪わないように、簡単な仕事は選ばないで下さいね~。皆さんに片付けてほしいのは“塩漬け”案件です~」
ペキ「塩漬け?」
ピーナ「依頼を受けたまま、長期間誰も引き受けない案件を塩漬け案件と言います~。冒険者は街の外での依頼が中心なので、街中の依頼で子供では難しいような案件が残ってしまうんですよね~。そういう塩漬け案件をランクアップ試験にかこつけて冒険者に片付けてもらおうという、ギルドの魂胆なのです~」
マツ「魂胆て、それ、言っちゃて良かったやつです?」
ピーナ「別に~? 隠すようには言われてませんので~」
ペキ「…子供向け案件と言うと例えばどんな…?」
ピーナ「買い出し、店番、売り子、配達、農作業補助、製造補助とかですね~」
ペキ「なるほど。では、子供達には難しい塩漬け案件にはどんなのがあるでござるか?」
ピーナ「例えば~、あ、これとか~?」
マツ「…下水の掃除?」
ペキ「基本的に汚れ仕事、と言う事でござるか」
ピーナ「それもあるんですけど~。そこの下水道はちょっと特殊でして~。凶暴な生物が住み着いてしまったみたいで~危険なので最近清掃に入れてないのです~」
マツ「ああ、なるほど……」
ピーナ「他には、地下墓地の幽霊退治とか~」
ペキ「幽霊?」
ピーナ「アンデッド系の魔物です~」
ペキ「ああ、実体のある奴でござるか…」
ピーナ「レイスとか実体がない魔物も居ますよ~」
ペキ「しかし、ピーナ殿。その間延びした話し方…」
ピーナ「…なんですか~?」
ペキ「…良いでござるね、和むでござる。殺伐とした冒険者の中で、緊張感を和らげる効果があるでござる」
マル「気が抜けるっての!」
ピーナ「ペキさんも面白い話し方されますよね~」
ペキ「拙者の
マツ「嘘ですからね~」
バリー「にゃ~!」
ペキ「お、これなんかも、子供には難しいのではござらんか?」
ピーナ「…あ~それ~、そ~ですね~。異国から来たペキさん達には向いているかも知れませんね~」
マル「なんだ? どんな依頼だよ?」
ペキ「街の料亭の、新メニュー考案でござる」
マル「うぇ、俺、料理なんてできねぇぞ…」
ペキ「拙者は意外と得意でござるよ?」
マツ「私も…離婚してからずっと一人暮らしですからね」
ピーナ「おや、マツさんはご結婚の経験がおありなんですね~?」
マツ「いや、まぁ、昔の話です…」
ペキ「あまり良い思い出ではないようでござるな」
マツ「良い思い出の離婚なんてそうはないでしょう」
ペキ「そりゃそうでござるか」
ペキ「では、下水に住み着いた魔物退治と、地下墓地のアンデッド退治、それから料理屋の新メニュー考案のみっつで良いでござるか」
ピーナ「あ~一人三件なのでぇ~、ペキさん、マツさん、マルさん、ヨサクルさん四人で十二件こなして下さいね~」
マル「げぇぇぇぇぇまじかよっ!」
ピーナ「すみませ~ん、こういう機会になるべく塩漬け依頼を減らしてしまおうというギルマスの方針なんです~」
ピーナ「ちなみにDランク以上の昇級試験では~、街の外の塩漬け依頼をこなすのが条件になってきます~」
ペキ「それはまた…」
マツ「子供にできない仕事で、塩漬けになってる依頼って、そんなに数はないのでは…?」
ピーナ「Eランク以下向けの塩漬け案件が十二件ありますので、ちょうどいいです~」
ピーナ「あ、あと、全員で協力してやって構いませんので。例えば一人で依頼を全部こなして、後の人達が何もしていなくても、十二件達成できればOKです~」
ペキ「チーム戦と言う事でござるな」
ヨサクル「おら、子供ん頃から村で大人だつの仕事の手伝いしてだから、雑用は得意だっぺよ」
マル「なんか体よくギルドに利用されてる気がするけどなぁ」
マツ「実際そうなんでしょうね。まぁやるしかない、楽しみましょう」
マル「楽しくなんかねぇよ…」
ペキ「まぁ、コツコツこなして行くしかないでござる。さぁ行くでござるよ」
マル「仕切ってんじゃねぇよ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます