第40話 おい! お前ら!
スナフ「できれば、ペキ達の事はこのまま秘密にしておきたい」
スナフ「ペキ達はAランクと同等以上の実力があるのが確定だ。今、Aランク冒険者は国に(戦争に)取られてしまって人出た足りない。(ペキ達に)街に居てもらえると助かる」
ストーク「できれば……な。だが、彼らに力があり、活躍するほど、王家にバレる可能性は高くなる」
スナフ「黙ってればバレないサ…」
スナフ「…とはいかんか」
ストーク「ダビル・ヴァイパーを討伐した話も、馬鹿な受付嬢見習いのせいで既に広まりつつあるしな」
ストーク「だいたい、ゴブリンキングの素材が市場に出れば、嫌でも誰が討伐した? って詮索される事になるぞ?」
スナフ「それは…そうだな、フォギア達がやった事にしてしまえばいい」
ストーク「……まぁ、フォギア達には明日、言い含めておくとして…」
ストーク「ペキ達はどうする?」
スナフ「どうするとは?」
ストーク「さすがにFランクのままにしておく事もできんだろう?」
スナフ「できれば彼らは駆け出しの新人冒険者という事にしておきたいが…。幸い、本人たちもあまり昇級に興味はなさそうだしな」
ストーク「だが、実力に見合わん低ランクは、逆にトラブルの元だぞ。ユクラやフォギア達のように舐める奴が後を絶たないだろう」
スナフ「んん、実力的には既にAランクだが、いきなり新人をAランク認定などしたら、逆に目立つ事この上ない。では、Eランクに昇級させるか?」
ストーク「Eではまだ舐められる。最低でもDには上げたほうがいい」
ストーク「とりあえず、俺は解体所に行ってくるよ。解体作業員達に余計な事を言わないよう口止めしないとな」
スナフ「おおそうだな。俺も行こう。厳しい箝口令を敷くぞ」
* * * *
翌朝、冒険者ギルド。
ペキとマツとバリーさんはゴブリンキングの素材の代金を受け取りに、納品カウンターに向かった。
ペキ「昨日納品したモノの代金は受け取れるでござるか?」
納品カウンターに居たのはスコルという男だった。
スコル「
ペキ「え? ああ、すまんでござるな」
スコル「登録したてのFランクか。で、何を納品したんだ? ゴブリン? まぁ新人冒険者と言えばゴブリンだよな」
スコル「どれどれ……ん? 受付はされてるようだが、査定はまだ終わってないとさ。ってか、なんでゴブリンごときでそんな時間が掛かってるんだ…?」
スコル「…お? なんだこりゃ……? “マル秘扱い” “質問はギルドマスターまで” だと」
スコル「なんだかよく分からんが、
ペキ「そうでござるか。ではまた出直すでござるよ」
スコル「新人ども、金がないなら、先にいくらか渡してやろうか? 査定が上がってきたらそこから精算ってことでいいぞ?」
ペキ「いや大丈夫。急いではおらぬゆえ、また後日で良いでござるよ」
スコル「そうか。じゃぁさっさとどけ。後ろが閊えてるよ」
ペキ「ああ、すまんでござるな」
後ろに並んでいた冒険者は『ちっ』と舌打ちをし、すれ違いながらペキを睨みつけて行った。
マツ「……なんか、ガラ悪い人、多いですよね、異世界…」
ペキ「教育レベルが低いし、冒険者は荒くれ者が多いでござる。冒険者には意図的に敬語を使わない風習もあるあるでござるから…」
ペキ「気にしないのが一番でござるよ」
マツ「…そうですね…」
・
・
・
マツ「今日はどうしますか? また森に?」
ペキ「当分はレベリングを続けるつもりでござるが…せっかく来たので少し依頼の掲示板でも見ていくでござるか?」
その時、ペキ達に声を掛ける冒険者が居た。
『おいお前ら!』
見れば、先程納品カウンターで舌打ちをした若い冒険者が居た。
冒険者「ダビル・ヴァイパーを狩った新人が居るって噂だが、もしかしてお前らか?」
ペキ(やれやれ、困ったものでござるね。すっかり噂になってしまっているようでござる…)
マツ(惚けてしまいましょうか? ただの噂だと否定し続ければそのうち収まるのでは?)
バリー(にゃ)
ペキ(でも、それだと嘘をつく事になるでござる。拙者、嘘はつかない主義なので、やっていないとも言えないでござるよ)
マツ(おお、それは、サムライ魂ですね?)
ペキ(別に拙者、サムライではないでござるが?)
マツ(え?! そんな喋り方してるのに?!?!)
バリー(にゃんと?!)
ペキ(拙者…日本ではパワハラ上司の居るブラック企業に勤めていたでござるが、そこで、嘘をつくと結局後でまずい事になるパターンを散々経験したでござるよ)
ペキ(多少都合が悪い事でも、嘘でごまかそうとせず、正直・誠実にやるほうが結果的には被害が少なく済むでござる。パワハラ上司相手であればなおさらでござるよ)
マツ(なるほど…それは分かる気がします。喋り方については納得行きませんが…)
冒険者「何をごちゃごちゃ言ってやがる!? いいか、嘘付いたって無駄だぞ! 俺には分かるんだ!」
ペキ「ほら…」
冒険者「新人にBランクの魔物が倒せるわけねえだろうが! ホラふくんじゃねぇよ!」
マツ(あ、ちょっとニュアンスが違ったようデス)
バリー(ニャッ?)
ペキ「……それはあくまで
マツ(あれ、嘘はつかないんじゃ?)
ペキ(ギリギリ嘘はついていないでござるよ)
冒険者「やっぱり嘘なんだな? 良かったぜ、後輩に抜かれちまったら格好悪いからな」
冒険者「俺はマル・ワンだ。先輩として色々教えてやってもいいぜ、新人」
だがそこで、酒場で飲みながらやり取りを見ていた冒険者が吹き出した。
酒場の冒険者「なぁに先輩風ふかしてんだよ! お前だって2週間前に登録したばっかりの新人じゃねぇか」
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