第38話 今夜は帰さないよ

ペキ「口封じに死んでもらうというのはどうでござるかね?」


マツ「え?! そ…」


マツ「…いや、あ~。ソウデスネ。それもいいかも知れませんね」


バリー「んにゃ」


フォギア「ちょまて! 冗談だよな?!」


ペキ「まぁ、冗談でござるが」


マツ「ですよねー。私もペキさんの性格は大分、分かってきました」


ウール「いや…! 今、一瞬、本気の目をしてた…」


ペキ「ジョーダンでござるよ」


フォギア「あ~まずはその刀、鞘に納めようか?」


※ペキは先程ウールから返却された刀を納刀せずにずっと持ったままである。


フォギア「…分かった! 誰にも言わない、約束する…」


ペキ「それは良かった。無駄な殺生をせずに済んだでござる」


刀をやっと納刀したペキ。


ウール「やっぱり本気…」


ペキ「イヤー、ジョーダンデゴザルヨーー?」


ジト目になるウールであった。


ペキ「……ところで、急いで帰ったほうが良いでござろう。陽も暮れかけているでござる」


フォギア「やべ…。だけど、せっかくのゴブリンキング、置いていくのか? もちろん、お前が倒したんだから全部お前の好きにすればいいが…」


ウール「明日でいいでしょ、運び屋ポーターを雇って取りに来させればいいわ」


ペキ「もしかしてゴブリンでも上位種は高く売れるでござるか? なら持って帰るでござるよ」


そう言うとペキはキングの死体をあれよあれよと収納してしまう。


フォギア「ちょ……あんだけの巨体を三体も、あっさり収納しちまうなんて、どんだけ……」


ウール「収納魔法は、使い手の魔力量によるって聞くわ。ペキ君ほどの魔力量なら、全然余裕って事か…」


ペキ「じゃぁ、帰るでござるか?」


フォギア「待て、ゴブリンの耳も全部切って持って行く。キングは倒したペキのものだからな。俺達の取り分も少しは確保しときたい。通常種のゴブリンは小銭にしかならんが、これだけ数が居れば馬鹿にならん」


ウール「上位種も居るから結構金になるわよ。上位種が使ってた弓と杖も……まぁ二束三文だけど、チリも積もればね」


フォギア「手分けしてやろう、ペキ達は先に帰っていてもいいぞ?」


ペキ「拙者達も手伝うでござるよ」


フォギア「ああそうか? すまんな」


――――――――

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――






――

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――――――――


街に戻ってきたペキ達と【疾風】の面々であるが、残念ながら日没にわずかに間に合わず。街の門は閉ざされてしまっていた。


だが、ストークが話をつけておいてくれると言っていた通り、門の脇にある小さな通用口から中に入れてもらう事ができた。


そして、冒険者ギルドに戻った一行は、そのままギルマスの部屋に通される。


フォギア「ギルマス、戻ってたんだな」


スナフ「さっき帰ったところだ」


ストーク「それで、ゴブリンの巣はあったか?」


フォギア「ああ、あったあった。かなりの規模だったよ。上位種が居て、なんと……」

フォギア「……ゴブリンキングが三体も居やがった!」


スナフ「キングだと!?」


ストーク「くそ、ギルマス、すぐにでも討伐隊を…」


スナフ「だが、キング三体となると、Aランクの冒険者が居ない今は厳しいぞ」


ストーク「数で押すしかないだろう。街の冒険者達を全員かき集めれば…」


フォギア「あ~その必要はないぞ。ゴブリンの巣は殲滅してきた。もちろんキングも討伐済みだ」


スナフ「……倒した? お前達が? お前達だけで?」


フォギア「いや、正確には、キングはペキが一人で倒した。ゴブリンの殲滅は大部分俺達がやったがな」


スナフ「ペキが……?」

スナフ「……なるほどな」


ウール「納得するんだ」

フォギア「そりゃ、ギルマスはペキ達が異世界から召喚されたって知ってるんだからな」


スナフ「…お前達も聞いたのか」


ペキ「内緒だと言っておろうに…!」


フォギア「ギルマスとストークは既に知ってるんだろう? だったらいいじゃねぇか」


ペキ「そうでも知らないフリをするもんでござる」


フォギア「そうもいかねぇよ、その後の報告がおかしな事になるだろうが? 新人のFランク冒険者がゴブリンキングを三体、簡単に倒しましたって言うのか?」


ペキ「だめでござるか?」


「「「「ダメだろ!」」」」


スナフ「倒したキングはどうした?」


フォギア「ペキが持って帰ってきてるよ。とんでもない収納魔法の使い手だよな」


スナフ「見せてくれるか?」


ペキ「ほい」


収納からゴブリンキングの頭部を取り出してみせたペキ。テーブルの上に1メールほどもあるゴブリンキングの頭部がごろりと転がり、スナフと目があった。その迫力に思わず息を飲むスナフとストーク。


スナフ「…っ! …ばかやろ、ここで出すな!」


ギルドの裏手にある解体作業用の倉庫に移動し、ゴブリンキングの死体三体分を出して見せる事になった。


『おお、これは! でかいな!』


検分に立ち会ったギルドの解体主任ボルドーが目を輝かせて見て回っている。


ボルドー「一体は毒を浴びてるな、状態が良くない」


ボルドー「それ以外は高く買い取るぞ?! 売るんだろ?」


ペキ「頼むでござる」


ボルドー「よしよし…! 今夜は徹夜だな!」


スナフ「解体担当の職員は全員帰ってしまっただろう?」


ボルドー「呼び戻す!」


そう言うとボルドーは飛び出してしまった。


ストーク「毒? もしかして…?」


ペキ「ダビル・ヴァイパーの毒でござる。あの時、吐き掛けられたのを収納しておいたでござる」


ストーク「あー…」


収納魔法を使えないのでよく分からないが、収納魔法とはそういう事もできるのだと納得するしかない。


キングの素材の代金は明日以降になるということで、その場は解散となった。


ペキとマツは宿に帰ったが、フォギア達はまだ話がるとスナフに残された。


   ・

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スナフ「…で、どうだった?」


フォギア「ペキとマツの事か? 最初、新人のFランク冒険者がダビル・ヴァイパーを倒したと言われても信じられなかったが…」


ウール「マツはともかく、ペキはやばいわね…」


フォギア「ありゃ、怪物だな」


ストーク「さっき毒がどうとか言っていたが、何があったのか、すべて話せ」


フォギア「え……全部か?」


スナフ「今夜は帰さないぞ?」


フォギア「ハゲマッチョにそんな事言われても嬉しくねぇ~~~!」



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