第35話 まさかの……

ペキ「まずいでござるな」


言われた通り、ペキとマツとバリーさんは後方の岩陰気に隠れながらフォギア達がゴブリンの集落に攻め込むのを眺めていたのだが。


最初は快調に殲滅を進めていたフォギア達だったが、集落の奥から遠隔攻撃が飛んできた事で形成が一気に逆転してしまった。


ペキ「どうやら遠隔攻撃ができる上位種メイジが居たようでござる」


マツ「あれは…ロケットランチャーか何かですか? 上位種というのは武器を使う魔物ですか?」


ペキ「そう言えばマツ殿は攻撃魔法を見るのは初めてでござったな。あの飛んでくる火の玉は、火球ファイアーボールという魔法でござるよ。火属性魔法の基本でござる」


マツ「はえ、あれが魔法による攻撃ですか。なかなか厄介ですね」


ペキ「矢も飛んできているでござる、弓を使う上位種アーチャーもいるようでござるな」


マツ「魔物もなかなか頭が良いのですね。フォギアさん達、大丈夫ですかね?」


ペキ「Bランクと言っていたから、ゴブリンごときが相手なら、数が多いと言っても大丈夫でござろう!」


ペキ「…と言いたいところでござるが、ちょっと形勢不利のようでござるな。油断して不意打ちを受けたかも? (上位種が)居ると分かっていればさすがにああはならないのではないかと思うでござる…」


マツ「自信満々でしたが…」


ペキ「……さて。上位種も確認したし、帰るでござるか?」


マツ「え? フォギアさん達を放って帰るのですか?」


ペキ「…と言いたいところでござるが、そうもいかんでござるか」


ペキ「もともと、拙者達は報告だけ、討伐はギルドの上位ランカーに任せるつもりでござったのに……」


そう言ってる間にもフォギアが矢を足に受け、ピンチに陥ってしまっている。


ペキ「仕方ない、助太刀に行ってくるでござる」

ペキ「マツ殿はここで待っているでござる」


短距離転移三連続でフォギアの前に移動したペキ。


そこに殺到してくる魔法と矢の攻撃に対し、ペキは何をするでもなく棒立ちであるが…


ペキ「収納! …でござる」


すると、飛んできた火球と矢は、吸い込まれるように消えてしまう。


ペキ「別に口に出す必要はないのでござるが、なんとなく雰囲気で言ってみたでござる」


ペキ「しかし良かったでござる。攻撃を分散されたら拙者も対応できなかったでござる」


ペキ「さっさと治療するでござるよ」


ペキは収納から上級ポーションを取り出すと後ろ手にフォギアに渡す。


その時、ゴブリン達の遠隔攻撃が止む。見ると、バリーさんがゴブリンの間を走り抜け撹乱してくれている。


マツも、自身は何もできないが、なんとか援護射撃ができないかと、バリーさんに撹乱を頼んでいたのだ。もちろん無理はさせない、バリーさんが怪我をしない範囲でと指示したが。


陣形の中に入り込み高速で走り回るバリーさんをゴブリン達は捉えられず混乱している。


バリーさんもさすがに一気に殲滅とはいかないようだが、一匹、また一匹と爪撃で倒していく。


そこに、さらに飛び込んでくる竜巻。ナイレンであった。


ウールも参戦、矢を連射しながら駆け回る。


そこにポーションで怪我が治ったフォギアも参戦する。混戦になれば、遠隔攻撃が主のゴブリンメイジ・ゴブリンアーチャーは敵ではない。戦局は決したように見えた…が……


その時、集落の最奥に何やら巨大な影が立ち上がった。


ペキ「お、まだ何か居るでござるか?」


見えたのはゴブリンである。だが、普通のゴブリンではない。かなりの巨体であった。


ペキ「おお、でかいでござるな」


ペキは転移でフォギアの近くに移動した。


ペキ「アレ・・は…なんでござるか?」


フォギア「まさかの……」


ペキ「?」


フォギア「ゴブリンキングかよ…!」


フォギア「リーダーもジェネラルもすっ飛ばしていきなりキングとは…まずいな」


ペキ「アレ・・は、強いのでござるか?」


フォギア「知らねぇのかよ? ゴブリンキングは危険度Bプラス……が三体だとランクAだな。つまり、Bランクの俺達では勝てんと言う事だ…」


フォギア「撤退したほうが良さそうだが、遅かった…囲まれちまった」


ペキは振り返り、ウールに迫るゴブリンキングBを見た。ウールが矢を射掛けているが、キングの体に当たるも刺さらず落ちてしまっている。


もう一体、ゴブリンキングCは後方で懸命に支援魔法を掛け続けていたバームを襲う。だがそこにナイレンが回転斬りを仕掛け、ゴブリンキングCの注意を引いた。


ナイレンの回転斬りはクリーンヒットしたものの、しかしゴブリンキングCはかすり傷しか負っていなかった。


ペキ「どうやら、なかなか丈夫でござるな」


ナイレンは怒ったゴブリンキングCの蹴りを食らい、吹き飛ばされて地面に転がってしまった。



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