第31話 アンタのせいで私は雑用係に降格よ!

ナタリー「アンタのせいで……」

ナタリー「……私は雑用係に降格よ! どうしてくれるのよ!」


ミムリィ「ナ・タ・リー? ペキさん達に会ったらちゃんと謝りなさいって言ったでしょ?」


ペキ「拙者のせい? というと…今朝の件でござるか?」

ペキ「冒険者の個人情報を大声で喋った件…?」


ストーク「ああ、それある。だが他にも色々やらかしていたんでな、その累積だ。お前達のせいってわけじゃないから気にするな」


ナタリー「……」


ミムリィ「ナタリー…? そんな態度だと、ずっと雑用係のまま、受付嬢には戻れないわよ?」


ナタリー「!」

ナタリー「その…ごめんなさい……」


ミムリィ「誠意が込もってない…」


ナタリー「…もぅ!」

ナタリー「よけいな事喋ってすみませんでした!!」


ペキ「ま、まぁ、良いでござるよ。お陰で余計な事に巻き込まれはしたでござるが、解決したでござるしな」


ナタリー「そ、それじゃぁ受付に戻してもらえますね? そもそも厳しすぎでしょ、あの程度の事で…」


ストーク「あの程度…? お前がトラブルにならないように慎重に業務をやっていれば、ユクラ達は死なずに済んだんだぞ?」


ナタリー「……え? 死んだ? ユクラさんが?」

ナタリー「何があったんですか?」


ストーク「……ユクラ達は……森へ入ったペキとマツを追ったらしい。そして、ペキの金を奪おうとして…


……死んだそうだ」


ナタリー「そんな……」

ナタリー「あなた! ユクラさんを殺したの?!」


ストーク「ペキ達に罪はない。他の冒険者を襲って金品を奪おうとして返り討ちにされるなど、ユクラ達の自業自得だ」


ナタリー「そんな…ユクラさんが…」


ストーク「これからは無用なトラブルを起こさないよう、慎重に業務を行え」

ストーク「まぁ当分は雑用係だがな」


ナタリー「……」


ペキ「あの~…、この事・・・も、吹聴されたくないでござるが。余計な恨みを買いかねんでござるゆえ…」

ペキ「(ナタリー殿から漏れると)わざわざ別室で話した意味がないでござる」


ストーク「ああ、そうだな。ナタリー、分かっているな? ユクラ達が死んだ事は…まぁいずれ知れ渡るだろうが、原因については一切口外禁止だ」

ストーク「もし喋ったら、今度は降格程度では済まされんぞ? 今後は守秘義務をしっかり守ることだ」


ナタリー「……」


ミムリィ「返事は?」


ナタリー「……はい……」


ストーク「行っていいぞ」


ミムリィ「あなたは今日はギルドの中を掃除していなさい」


ナタリー「……」


ミムリィ「返事は?」


ナタリー「…はい」


しょぼくれた様子でナタリーは部屋を出ていった。


   ・

   ・

   ・


ストーク「さて、ゴブリンの数が多かったという報告についてだが。早速冒険者を派遣して調査を行うが、お前達にも参加してもらうぞ。ゴブリンを見たという場所まで案内が必要だからな」


ペキ「ああ…仕方ないでござるね」


ストーク「ミムリィ、フォギア達を呼べ」


ミムリィ「はい、こっちにもう待たせてあります」


ストーク「さすが、仕事が早いな」




  * * * *




ストーク「彼らは【疾風】という名のBランクパーティだ」


「フォギアだ」

「ウールよ」

「ナイレン」

「……バーム」


【疾風】は男女二人ずつの四人パーティであった。(ちなみにフォギアとバームが男性である。)


「ペキでござる。先日登録したばかりのFランク冒険者でござる」

「マツです、それとペットのバリーさん」


ウール「ペットなの? かわいー」

マツ「あ、すいません、一応従魔です、登録しています」

ウール「魔物なのね、でもかわいー」


バリー「にゃ!」


バリーをモフり始めるウールだが、嫌がってバリーさんはウールの手を猫パンチしていたが、ウールはそれも嬉しそうであった。


ストーク「彼らをゴブリンの巣と思われる場所に案内してくれるか?」


ペキ「心得たでござる」


フォギア「Fランクの新人? 足手まといだなぁ…」


ストーク「実力はある、期待の新人だ。面倒見てやってくれ」


ストークはフォギアの耳元に口を近づけて小声で何かを言った。


ストーク「……」

フォギア「…!」


フォギアが鋭い眼光をペキに向けた。


ペキ「案内するのはバリー殿でござるが。バリー殿を一人で行かせるわけにも行かないので、マツ殿も一緒に行くしかないでござる。マツ殿が行くなら、その護衛に拙者も行くでござる」


ウール「ペキ君はマツさんの護衛なの?」


マツ「保護者のような? 私一人では色々分からない事が多いので…ペキさん頼りなのです」


ペキ「案内役……いや、“仲間”でござるかな」

ペキ「仲間を守るのは当然でござろう?」


ウール「それは大事な事ね」


ストーク「早速行ってくれるか? 今から行けばなんとか日暮れまでに戻ってこれるだろう。ゴブリンの巣ができているとなると、急ぎ対応が必要なのでな」


フォギア「了解! 日帰りの予定なら特に準備もいらないな。このまま行くぞ!」


ウール「おー」

ナイレン「ん」

バーム「……」


フォギア達の視線がペキ達に向いた。


ペキ「お…おう?」

マツ「はい!」

バリー「にゃおう!」


――――――――

――――

――






――

――――

――――――――

早速街を出て森に入った一行。


バリーさんに先頭を歩いてもらい、その後を【疾風】の四人、そしてペキとマツが続く。


ウール「ねぇ、さっきストークに何を耳打ちされたの?」


フォギア「ああ、ちょっとふざけた事を言われたんだよ。なんでも、この新人達がダビル・ヴァイパーを倒したらしい」


ウール「ええ! ダビル・ヴァイパーって、ランクはB+、Bランクパーティがやっと討伐できるレベルでしょ? それを新人二人が?」


フォギア「ああ…Fランクの新人ができる事じゃない。とんでもない大型新人の登場か、あるいは……」


フォギアは振り返ってペキ達を見た。


フォギア「ただの大ホラ吹きか?」




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