第30話 報告にゃ!

走り出た、というより飛び去ったという方が近い感じでったが、偵察に出たバリーさんは、意外にもすぐに戻ってきた。


ペキ「お? やけに早かったでござるね」


バリー「にゃ! うにゃにゃ!」


ペキ「え~、すまん、分からんでござる。マツ殿、なんと言ってるでござるか?」


バリー「うにゃ!にゃぁお」


マツ「どうやら少し先にゴブリンがたくさん居るのをを見つけたと言っています」


ペキ「やはり…ゴブリンの集落ができている可能性があるでござるな」


マツ「バリーさんが案内してくれると言っています」


ペキ「いや、それはいいでござる。街に帰るでござるよ」


マツ「え、退治しに行かないのですか?」


ペキ「数が多くなればゴブリンと言えども危険性が増すでござる。集落が形勢されているとなると、上位種が居る可能性もあるでござるしな」

ペキ「拙者とマツ殿バリー殿の実力では、上位種を含む多数の魔物相手は、できないとは言わんでござるが、まだあまり無理はすべきでないと思うでござるよ」


マツ「な、なるほど…」


ペキ「街に戻ってギルドに報告するでござる。あとはギルドのほうで偵察・討伐の冒険者を派遣すると思うでござるよ」


マツ「なるほど…」


――――――――

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冒険者ギルドに戻ってきたペキ達。


ペキ「ミムリィ殿、ちょっといいでござるか?」


ミムリィ「ペキさん! はい、なんでしょうか?」


ペキ「森でゴブリンを狩ってきたでござる。ゴブリン退治は常設依頼になっていたでござるよね?」


ミムリィ「はい。討伐証明は持ち帰っていますか?」


ペキ「耳でござるな、ちゃんと持ち帰っているでござるよ」


ミムリィ「右でも左でもいいですが、同じ側の耳でないとダメですよ?」


ペキ「分かってるでござるよ」


ミムリィ「あ~ここでは出さないでいいです! 素材の買い取りカウンターに出して確認してもらってください」

ミムリィ「ゴブリン1体につき、銅貨1枚が報奨金として貰えます」


ペキ「了解したでござる。それで、ちょっと報告なのでござるが…どうも、森にゴブリンの数が妙に多かった気がするでござる。そこでバリーさんに森の中を探ってきてもらったでござるが…」


バリー「にゃ!」


ペキ「ん? どうしたでござる? バリー殿?」


バリーさんがカウンターに飛び乗り何かを主張し始めた。


バリー「うにゃ、にゃにゃ!」


マツ「自分で説明するつもりのようです」


バリー「にゃあ、にゃあおう、にゃ!」


ミムリィ「……ええっと? すみません、バリーちゃんは何と…?」


ペキ「拙者もなんとなくしか分からんでござるが」

ペキ「マツ殿はバリー殿の言葉が分かるようでござるよ」


ミムリィ「ああなるほど、バリーちゃんはマツさんの従魔でしたね。従魔と主はある程度意志の疎通が可能ですものね」


ペキ「で、マツ殿。バリー殿はなんと?」


マツ「ええ、森の奥で、ゴブリンがたくさん居るのを見たと言っています」


ペキ「でござる。もしかしたら、でござるが。ゴブリンの巣ができている可能性があるのではないかと思うでござる」


ミムリィ「数はどれくらいでしたか?」


バリー「にゃにゃおにゃ!」


マツ「…たくさん、と言ってます」


ペキ「バリー殿、最後の戦ったゴブリンより多かったでござるか?」


バリー「にゃあ!」


マツ「多かったと…」


ペキ「最後に遭遇したゴブリンは六匹居たでござるから、それよりは多いと言う事でござるな」


ミムリィ「それくらいだと、なんとも言えない感じですねぇ」

ミムリィ「巣になっているような形跡はなかったですか?」


ペキ「バリー殿、ゴブリン達はそこに住んでいる様子でござったか?」


バリー「…にゃ?」


ペキ「あー何か住んでいる痕跡…寝床とかがなかったでござるか?」


バリー「にゃ! にゃおなお」


マツ「木でできた、屋根のようなものはあったと言っています!」


ミムリィ「それは…! 確かに、集落がつくられている可能性はありますね」


ペキ「拙者が見たわけではないので。ギルドのほうで偵察を出して確認して下さらんかと」


ミムリィ「そうですね、ギルマスに報告しておきます。貴重な情報ありがとうございました」


ペキ「あー、それから……。もう一つ報告があるでござる…」


ミムリィ「なんですか?」


ペキ「ちょっとここでは話しにくいのでござるが…」


ミムリィ「…! では、奥の会議室へどうぞ」


   ・

   ・

   ・


会議室に通されたペキ達。ミムリィはちょっと待っててくれと言い、ストークと一緒に戻ってきた。


ミムリィ「ペキさん達については、何かあったらストークさんを呼ぶように言われていたものですから」


ペキ「構わんでござるよ」


ストーク「おう、お前達。早速何か問題があったか?」


ペキ「実は、森の中で襲われたでござる。拙者達を殺して金を奪うつもりだったようで、戦闘になったでござる」


ミムリィ「え?! 盗賊に襲われたのですか?」


ペキ「盗賊というか、冒険者でござる」


ストーク「何?! それは…冒険者で間違いないのか?!」


ストークが渋い顔になる。


ペキ「間違いないでござるよ、ユクラとその仲間達でござったので」


ストーク「なんだと! …あの馬鹿共が、そこまで落ちぶれたか…」


ミムリィ「それで? 大丈夫だったんですか?!」


ペキ「ああ、拙者達は大丈夫でござるよ。ただ、ユクラ達は……全員死んだでござる…」


ストーク「……そうか。馬鹿な連中だな。ダビル・ヴァイパーを倒す実力がある冒険者を襲えば、奴ら程度の実力では返り討ちになるわな…」


ペキ「応戦しなければ殺されるところだったでござるから、正当防衛でござるよ」


ストーク「…ああ。それは信じるよ。今朝、お前達がヴァイパーの素材の代金を受け取ったところをユクラは見ていたしな」

ストーク「連中は以前から怪しいところがあったんだ…。冒険者が行方不明になった翌日に、連中が豪遊してたりしてな。だが、証拠がなかった」


ストーク「まぁ返り討ちにしたお前達が罪に問われる事はないから安心しろ」


ペキ「それはよかったでござる…」


その時、ドアをノックする音がした。


『ナタリーです』


ストーク「入れ」


現れたのはナタリーであった。ナタリーは部屋の中にペキが居るのを見つけると睨みつけた。


ナタリー「あんたのせいで~」



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