第28話 厳正に検討した結果

ペキ「ユ…クラ殿とバ…そっちの御仁は、残念ながら助ける気はないでござるよ」

ペキ「特にユクラ殿。其処許はパーティのリーダーでござろう? 既に一人死んでしまっておるし。リーダーとして責任があるでござろう」


ユクラ「そ…んな……頼む……謝るから……金も払う……」


ペキ「街の外で襲われたら殺す」

ペキ「それも冒険者あるあるでござる」


マツ「厳しいですね。日本なら、過剰防衛……正しくは、逮捕して裁判を受けさせて罪を償わせるべきなのでしょうが…」

マツ「ここは日本ではないですからね……ペキさんの判断を信じます」


ペキ「こういう世界・・・・・・では、まともに罪を問えるか、償わせることができるかもあやしいでござる。下手したら拙者達のほうが悪者にされる可能性も?」

ペキ「それに……初めての犯行というわけでもなさそうでござるしな。野放しにすれば、また被害者が出るでござろう」


ユクラ「…頼むよ…助けてくれ…心を入れ替えるから…」


その時、視界の端で動く者があった。バブスである。ずっと黙ったままなので気を失っているのかと思いきや、目立たないように這って逃げようとしていたのだ。(どうやらポーションを隠し持っていたようで、手足の出血は止まっている。)


片手片足で必死に這って行くバブス。だが、その先に誰かの足があった。ペキがバブスの逃げる先に転移で移動していたのだ。


ペキ「逃げる気でござるか…」


バブス「……くそったれが!」


バブスは上体を起こすと懐から何かを取り出し投げた。その何かがペキに当たる…


…だが、何も起きなかった。


ペキが【収納】してしまったのである。


バブス「?!」


ペキ「やれやれ…」


ペキは刀を抜き魔力を通すと、無造作にバブスの首を刎ねた。首から血が少し飛んだが、既にかなり出血していたせいか、量は多くなかった。


ペキ「おや、人間を殺しても経験値が入るようでござる。ではマツ殿、ユクラはマツ殿が殺すでござるよ」


マツ「…え?! 私がですが?」


ペキ「今後、こういう事にも慣れておいたほうがいいでござるよ」

ペキ「人の…人だけではないでござるが、命が軽い世界では、殺すべき時に殺せないと、自分が殺される事になるだけでござる」


マツ「……な…るほど。やってみます」


ユクラに近づくマツ。


ユクラ「ひ…、頼む、殺さないで…死にたくない…」


命乞いに一瞬躊躇したマツ。


ペキ「マツ殿、容赦は無用でござるよ。ソイツは、拙者達を剣で斬り殺そうとしたのを思い出すでござる」

ペキ「脅しではなく、本気で殺しに来ていたんでござるよ。きっと他にもたくさん殺してきた、殺人鬼でござる。生かしておけば、こちらが殺される事になるでござるよ」


ペキの言葉に意を決したマツは、バックラーでユクラの顔面を思い切り殴った。


ラダン特製棘付きバックラーの鋭いツノがユクラの顔面に突き刺さる。


角度的に角は脳まで達しているだろう。


ユクラはブゲという声を発して動かなくなった。


ペキ「さて、残るはそちらの御仁だけでござるが…」

ペキ「マツ殿、そちらのゴ…ナンチャラ殿も殺るでござる」


ゴロウ「へ?! 俺は助けてくれるんじゃ…」


ペキ「気が変わったでござる。其処許を助けても何もメリットがない気がするでござる」

ペキ「それよりも、マツ殿の経験値になってもらったほうがメリットが大きいでござる」


ゴロウ「そんな…酷い…」


ペキ「許されよ、拙者達も余裕がないのでござる。それに、其処許も、殺しは初めてというわけではないのでござろう?」


ゴロウ「それは……あ、いや」


ペキ「何人殺したでござるか?」


ゴロウ「それは……いや! いやいやいや! 殺してない、一人も殺したことありません」


ペキ「やれやれ…信じられないでござるなぁ」

ペキ「正直に言えば助命を検討しないでもないでござるよ? 殺した事あるでござるよな?」


ゴロウ「……はい…あります……」


ペキ「何人くらい殺したでござるか?」


ゴロウ「じゅう……いや2~3人です」


マツ「今、十って言いましたよね?」


ゴロウ「言ってません、二人です! それも襲われたので仕方なく、でした」


ペキ「マツ殿、殺るでござる」


マツ「そうですね」


ゴロウ「酷い、正直に言えば助けてくれるって…」


ペキ「検討すると言っただけでござる」

ペキ「厳正に検討した結果、やはり殺したほうがよいという結論になったでござる」


マツ「そもそも、全然正直に言ってないの、バレバレですよね…」


ペキ「残念ながら今世ではご縁がなかったでござるが、来世でのご活躍を心よりお祈り申し上げるでござるよ」


ゴロウ「そんな…」


マツが無造作にゴロウに近づく。


ゴロウが残った手を懐に入れようとした。そういえば、先程バブスが何かを投げつけてきたのをペキは思い出した。


ペキ「は、しまった!」


慌てて刀の柄に手を伸ばしたペキだったが、その時にはバリーが風刃を飛ばしてゴロウの腕を斬り飛ばしていた。


ペキ「っと…。バリー殿、ナイスでござる」

バリー「にゃ!」


飼い主であるマツが攻撃されそうになった事で、バリーはいち早く反応したのであった。


そして、マツがバックラーでゴロウを殴る。今回は一撃とは行かず、何度か顔面を殴って、やっとゴロウは動かなくなった。


ペキ「怪我が魔法や薬で一瞬で治ってしまう世界でござるからな。生き返られても困るので、一応念のためでござる」


ペキは刀を抜き、ユクラとゴロウの首を順番に刎ねた。魔力をたっぷりと通したので、ペキの刀は豆腐を切り分けるように簡単に首を離断していった。


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