第24話 ギルドカードの窃盗は重罪のはずでござる
取り上げたペキの
ユクラ「ふ、Fランク。
ペキ「返すでござるよ。
ユクラ「おいおい、ちょっと見せてもらっただけだろうが。さっきから失礼な奴だな、先輩を盗人呼ばわりか?」
ペキ「現に拙者の
ユクラ「へへ、返して欲しかったら奪い返してみせたらいいだろ? それくらいできないと冒険者なんてやってられねぇぞ?」
ユクラ「ああ言っとくが、これは窃盗じゃねぇ、教育だ。親切な先輩が新人にちょっと稽古つけてやろうって言ってるだけだ」
ペキ「そんな教育は結構でござるよ。返さないのならいいでござる。ギルドに正式に盗まれたと訴えるでござる」
ペキ「あ~そこのギルドの職員の人、ちょっと話が~」
ユクラ「ちっ! 軽いジョークだろうが!」
慌ててユクラはカードをペキに押し付けてきた。そこにナタリーが戻ってくる。
ナタリー「ユクラさん、新人イビリはダメですよ~」
ユクラ「イビリじゃねぇ、教育だよ」
ペキ「相手が臨んでない教育の押し付けは迷惑でござるよ」
ナタリー「ペキさん、これが代金です」
カウンターの上に金貨が入った袋をどすんと置くナタリー。
ユクラ「ほう、これは…」
息を飲むユクラ。ユクラだけではない、他の冒険者達もカウンターを見ている。
ペキ「ナタリー殿……。このギルドの教育はどうなっているでござるか?」
ナタリー「はい?」
『ナタリー? どうかした?』
そこにやってきたのはこのギルドのナンバーワン受付嬢のミムリィとギルドサブマスターのストークであった。
ペキ「この受付嬢が、拙者の報酬額を大声で宣伝するものでござるから、
ミムリィ「ナタリー、あなたまたやったの? 冒険者の情報は守秘義務があるっていつも言ってるでしょう?」
ユクラ「
ストーク「泥棒呼ばわり?」
ユクラ「報酬を大声で言うなってのは、こいつの金を周りの冒険者が狙ってるって意味だろうが?」
ストーク「ああ…なるほど。それで泥棒扱いね」
ミムリィ「そもそも、ナタリーが報酬を言わなければ問題なかった事よね、ごめんなさいペキさん。ユクラさんも、どうか許して頂けませんか?」
ユクラ「あ、いや、その、ミムリィに謝ってもらうような事じゃ…ないさ」
ユクラの顔が少し赤くなっている。明らかにナタリーの前とは違う反応である。そして誤魔化すようにユクラはストークのほうに向かって言った。
ユクラ「…ってか、ストークさんよぉ、こいつ昨日正式登録した新人だっていうじゃねぇか? それがいきなりダビル・ヴァイパーを倒したとか、おかしいだろうが? 何か
ストーク「言っとくが、そいつがダビル・ヴァイパーを倒したのは本当の事だぞ、俺の眼の前でやったんだからな」
ユクラ「え? …マジで…?」
ストーク「ああ、あんな戦い方がるとは思わなかったよ」
ユクラ「一体どうやって…?」
ストーク「それは言えないがな。冒険者の手の内は秘密にするのがマナーだからな」
ユクラ「なんだかあやしい……」
ストーク「んん? はっきり言っておくが、ペキは俺の命の恩人だ。あの時ペキが庇ってくれなかったら、俺はダビル・ヴァイパーに殺されていただろう」
ユクラ「ストーク、さんの恩人…?」
ストーク「ああ、その恩人にくらだねぇ絡み方するなら、俺が相手になるぞ?」
ユクラ「いや、その、絡むだなんてそんな事は…」
ペキ「ストーク殿、拙者も冒険者の方々を馬鹿にする気はないでござるが…」
ペキ「本当のところ、この街の治安は良いのでござるか?」
ストーク「街の治安はまぁまぁ良いのではないか? 悪い事をする者が居ないわけではないが、たいていは衛兵に逮捕されて解決している」
ペキ「冒険者ギルドの綱紀風紀にも乱れはない、という事でござるね? 先程、受付嬢のナタリー殿も『この街の冒険者に悪い人は居ない』と言っておられたし」
ペキ「そうであるなら、拙者も先輩冒険者の方々を疑うような事を言った事、謝罪するでござる」
ストーク「ああ…それは……。その~言いにくいんだが、冒険者の中にも規律を守らない者、犯罪を犯す者は、まったく居ないとは言えない、かなぁ……。むしろ、一般の住人よりも多い、かなぁ…」
ストーク「だが! そんな奴が居たら直ちにギルドに知らせてくれ! 職員が頼りにならないなら俺かギルドマスターに直接言ってくれていい」
ストーク「冒険者ギルドとしては、規律を乱す者は厳しく粛清していく方針だ」
ストークはギルドの職員に向かって言った。
ストーク「お前達もいいな?!」
ギルド職員達「…はい…!」
ギルド職員達の返事を背にユクラは小さく舌打ちをしながらギルドを出ていった。
ペキ「さて…大人しく引き下がってくれると良いのでござるが…」
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