第17話 アンタ誰よ?! なんかキモっ!!

マツ「ギルマスと言うと……一昨日会った、あの…?」

ペキ「うむ、ハゲマッチョのオッサンでござったな。確か名前は…スナ◯キン?」

マツ「違いますよ、一文字足りない、スナフスキンさんですよ」

ペキ「ああ、そうそう、そうでござった」

マツ「受付嬢はマスタースナフと呼んでいましたけどね。気さくな方でしたね」


スナフ「お前達、そういう会話は本人の前に来る前に済ませとけよ…」

スナフ「ストークから聞いたが、勇者の仲間で、異世界から来たんだって?」


ペキ「仲間ではござらん。たまたま同じバスに乗り合わせただけの他人でござる」


スナフ「バス?」


ペキ「ああ~この世界だと、乗合馬車?」

マツ「ちなみに私はそのバスの運転手……馬車の御者みたいな仕事をしていました」


ペキ「全員、同じ馬車に乗っていただけの、赤の他人でござる」


スナフ「なるほど。だから自分たちは勇者ではない、仲間でもない、と」


ペキ「いかにも。勇者には魔王退治の使命があると言われた―――あの二人は言われていたでござるが、拙者達は、使命は勇者に任せてスローライフを送っていれば良いと言われたでござる」


スナフ「言われた? 誰にだ?」


ペキ「オサムサンです」


スナフ「オサムサン?」


マツ「なんか同じ下りを今日やった気がしますが、オサムサンというのは、神様の使いの人、です……でいいんですよね?」


ペキ「良いのではござらんか?」


スナフ「ああ、ストークがそんな事言ってたな」

スナフ「良く分からんが、お前達が【勇者】と一緒にされたくないと思ってるのはなんとなく分かった」

スナフ「まぁ、あの連中を見れば、気持は分からんでもないが」


マツ「あの…。あの二人、タイガ君とニコちゃんは、どんな様子だったんですか?」

ペキ「ギルマス殿があの二人を連れてきたと聞いたでござるが?」


スナフ「別に俺が連れてきたわけじゃねぇよ。たまたまだ、たまたま」

スナフ「あれは二週間ほど前の事だ―――


――

――――

――――――――


■時は遡り、タイガとニコがこの世界へ転移させられた直後。


オサムサン「~ああ、そろそろ時間だ、じゃぁ頑張ってね!」


タイガ「ああ?! おい! もうす~


     ―――――――

       ―――

        ・

       ―――

     ―――――――


~こしちゃんと説明しろよ!!」


オサムサンに食ってかかろうとしたタイガだったが、言い終える前に周囲の景色はもう変わってしまっていた。


タイガ「あ? オサムとかいう奴、消えちまったぞ…?」

ニコ「てかここどこ? 森の中?」

ゴブリン「ごぎゃぎゃ?」

ニコ「ん? オサムサン? ってアンタ誰よ?! なんかキモっ!!」


ニコのすぐ近くに、一匹のゴブリンが立って居た。


見れば少し離れたところにももう二匹、緑色の醜悪な小人が居る。


突然眼の前に出現した二人にゴブリンは戸惑っていたが、すぐに我に帰り棍棒を振り上げてニコに襲いかかった。


だが振り下ろされる途中で棍棒はタイガの掌で止められてしまった。反射神経の良さは異世界でも健在でる。


タイガ「なんだいきなりこの野郎! やるってのか!」


そしてタイガは喧嘩にも結構慣れており荒事への反応は良いのであった。


だが、タイガっ食ってかかろうとした瞬間には、ゴブリンは三匹とも絶命していた。矢が飛んできて三匹の急所を射抜いたのだ。


『アンタ達、大丈夫?』


そして、森の奥から冒険者が現れた。アン・バル・メロの三人組からなるパーティ【森の涼風】である。


メロ「なんだお前ら? 妙な格好してやがるな」


バル「見たところ、武器も持ってねぇが、なんでこんなところに?」


タイガとニコは日本で着ていた服装のままであった。(ただし、持っていた荷物はすべてなくなっていたが。)


ニコ「何よ妙な格好って、センスないんじゃない? 昨日原宿で買った最新流行よ!」

タイガ「そんな事より、ここはどこだ? あんたらは?」


アン「ここは北の森よ」


ニコ「北ノモリ?」

タイガ「どこの北だよ?」


アン「北の森は北の森よ」

メロ「ノクギーガって街の北側にあるから、北の森、だな」

バル「ばか、正式名称はウークズマの森って言うんだよ、知らんのか?」

アン「へぇ、キタノモリとしか言わないから知らなかったわ…」


バル「俺はバル。こっちの二人はアンとメロだ。お前達は?」


タイガ「ああ…?」

タイガ「……ああ、俺はタイガ。こっちはニコだ」


アン「なんで武器も持たずに北の森に?」


タイガ「知らねぇよ、オサムとかいう奴と話してたら、気がついたらここに居たんだからよ」


ニコ「だからあれでしょ~イセカイテンセイって奴」

ニコ「てことはぁ~、タイガは【勇者】、私は【聖女】にしてくれるって、あの変なオジサンが言ってたじゃない」

ニコ「てか、こんな事が現実に起きるとかアリエナくて笑えるんだけど~」

ニコ「てかスマホどこぉ? 消えちゃったんだけど?」


ニコが手に持っていたはずのスマホがない。ポケットをあちこち漁るが、スマホだけでなく、持ち物が一切なくなっている。


ただ、転移した時点でこの世界の服装に変わっていたペキ達と違い、タイガとニコは日本で着ていた服装のままであった。


バル「勇者…だと?!」

バル「…確かに、妙な格好しているが…」


メロ「勇者ってなんだ?」

アン「アタシ聞いたことある! なんか、魔王を倒すために王様が異世界から勇者を召喚しようとしてるんだって話」

メロ「こんな奴が?」

メロ「……そんな強そうには見えねぇがなぁ?」


タイガ「ああんんだいきなり? 喧嘩売ってんのか?」

ニコ「そうよ! タイガはすごい運動神経いいんだから。足速いし、喧嘩だって強いんだよ」


ニコがそう言った瞬間、【森の涼風】の三人は武器を構えた。


ニコ「ちょ、いきなりなに?」

タイガ「おお? やるってのか?」


バル「馬鹿! 後ろを見ろ!」


言われたタイガが振り返ると、そこには豚顔の大男が立っていた…


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