第15話 大蛇撃破! お前…何モンだ!?
大蛇の吐きかける毒を浴びそうだったマツをストークが突き飛ばして助けてくれた。
だが、大蛇は今度はそのストークに向けて毒を吐きかけようとしている。
咄嗟にペキはストークを庇うように前に飛び出し、その体に毒を浴びてしまった。
ストークはペキが死んだと思った。しかしその予想を覆し、ペキは倒れず揺るがず。手に持った大剣を構えると、ヴァイパーに突撃したのであった。
そして大口を開けたままのその喉に大剣を突き刺す。
実は、ダビルヴァイパーの毒吐きかけ攻撃は、一度吐き出すと次の毒をチャージするのに数秒から数十秒の時間が掛かるのだ。
ただしこのヴァイパーは、器用にも毒を一気に吐き出さず、小分けに出していたので連発ができていた。だがそれも、ちょうど先程使い切ったタイミングであった。
次の射出まで、大蛇の体内で毒が生成され毒袋にチャージされるまで時間が掛かる。その間が攻撃のチャンスなのである。
相手を舐め切って油断して大口を開けたままだった大蛇の口内にペキの大剣が突き刺さった。そして幸運にも、差し入れらた大剣はうまく蛇の脳延髄を刺し貫いており、大蛇を即死させたのであった。
― ― ― ― ― ― ―
ペキはとっさに本能的に動いてしまっただけだった。狙った訳ではない。ヴァイパーとの戦い方を知っていたわけでもない。
だが、ペキが持っていた大剣がヴァイパーキラーという蛇系の魔物に特効のある剣だった事が幸いした。(その事をこの段階ではペキはまだ知らないが。)
偶然の幸運? 否。ペキが近い将来ヴァイパーに出会う事を予想していたオサムサンが、この大剣を手に入れられる場所にペキを転移させていたのである。
― ― ― ― ― ― ―
ペキが剣を引き抜くと、大蛇の巨体が地面に落ち、大きな音を立てた。
森の中に静寂が訪れた。大蛇を恐れて周囲から動物たちも逃げ出していたのだろう。
ペキ「……なんとか倒せたみたいでござるな」
ストーク「お前……
……一体どうやって毒を耐えたんだ…???」
ケロっとした顔のペキにストークが問いかける。
ペキ「もちろん【収納】したでござるよ。咄嗟の事でござったが、うまく行くと思っていたでござる」
ペキ「収納魔法も戦闘でも役に立つでござろう?」
ストーク「…ああ……、そうだな。収納魔法ってのは、そんな使い方もできるんだな……」
ペキ「はい? 何か言ったでござるか?」
ペキ「実はさっきからレベルアップの音がうるさくて良く聞こえんでござる……」
そう、Bランクの魔物を倒した事で、大量の経験値がペキに入り、一気にレベルアップを果たしたのである。
その恩恵はすぐに現れた。収納魔法の容量が大幅アップしたのだ。おかげで直径五十センチ、隊長十数メートルもあるダビルヴァイパーがそのまま収納できてしまった。
ストーク「信じられん……こんな大容量を収納できる収納魔法なんて、聞いた事ないぞ……?」
ストーク「お前達、何者だ?」
マツ「私達は、実は異世界から転移してきたんですよ」
ペキ「あ、言っちゃったでござるか…? まぁいいか。そうでござる、地球の日本という国からやってた異世界人でござる」
ストーク「異世界から転移だと……まさか、お前達も【勇者】なのか?!」
ペキ「ああ、違うでござる。勇者は別に来てる者が居るはずでござる。拙者達はオマケというか、巻き込まれというか」
マツ「あれ、お前達
ストーク「ああ、二週間ほど前に、異世界から来た勇者と聖女だと名乗る二人をギルドマスターが連れてきてな…」
ペキ「タイガ殿とニコ殿でござるな」
ストーク「やはり知っているのか…」
マツ「二週間、随分時間差があったんですね」
ストーク「これは、ギルマスに報告しなければならんな」
ストーク「何にしても、お前のお陰で命を救われた。感謝するぞ」
ペキ「なに、礼には及ばんでござるよ」
急ぎ、街に戻る事にした一行。
とりあえずダビルヴァイパーは倒したが、本来危険な魔物が居ないはずの南の森にBランクの魔物が出たのだ。急ぎ報告をあげ、高ランク冒険者を派遣して調査する必要があるだろう。
ストーク「しかし……お前達は腰が低いな? 勇者と聖女はえらく不遜な態度の奴らだったが…」
ペキ・マツ「「ああ…」」
タイガとニコの態度を思い出し、なんとなく想像がついてしまうペキとマツ。
ペキ「それで、その二人はどこに行ったでござるか?」
ストーク「ああ、ギルマスが王都に相談したら、王宮から迎えが来て王都へ連れて行かれたぞ」
ペキ「魔王を倒すため、でござるね」
ストーク「ああ、ここから三つ隣の街が魔王軍のとの最前線になっているんだが、大分押し込まれてヤバイって噂も出ているからな」
ペキ「まぁ、勇者が来たからにはもう大丈夫でござろう。勇者はそのために送られて……いや、召喚? されてきたのでござろうから」
ストーク「……お前達も?」
ペキ「いや! 拙者達は違うでござるよ。魔王は勇者に任せて、拙者達はスローライフをしていれば良いと言われたでござる…」
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