第13話 森で危険な魔物に遭遇す
ストークに連れられてやってきたのは街の南側にある森。街の南側には平野が広がっており、それほど大きくはない森が存在している。
ストーク「街の南側の森は比較的弱い魔物しか居ない。だがいいか、北側の森には初心者のうちは近づくなよ? あっちは奥に行くと高ランクの魔物が出てくる可能性がある。さらに奥に行けば、ダンジョンがあるからな」
ペキ「おお! やはりダンジョンがあるでござるか!」
ストーク「ふん。いずれ高ランクの冒険者になったらダンジョンに入って魔物を減らす仕事もできるようになる」
ストーク「魔物はダンジョン内で発生して外に出てくるからな。ダンジョンの中で駆除できればそのほうが街の住民の危険が少なくなるんだ」
ストーク「お前達も早く一人前になってダンジョン攻略に参加してくれよ…」
道端に生えている薬草や毒草を教わりながら森の奥へと進むと、数匹のスライムを発見した。
ストーク「スライムは弱い魔物だ、身体の中にある核を砕けば簡単に倒せる。だが油断をするなよ。顔に張り付いての窒息攻撃は厄介だぞ」
スライムは溶解液を分泌してくるので、長時間身体にくっつかれると火傷のようになり、最後には皮膚が溶けてなくなってしまったりもするそうだ。
なので、可及的速やかに倒す事が求められる。
とは言え、剣で核を斬ってしまえば大した相手ではなく、難なく倒す事ができた。
ただ、一人、核を斬ろうとして大ぶりして外してしまった者が居た。昨日オーク狩りに参加した事があると言っていたヨサクルである。
ヨサクルの剣を躱した? スライムがジャンプしてヨサクルの顔に張り付いてしまう。パニックを起こすヨクサル。持っている剣は長すぎて顔に張り付いたスライムの核をうまく狙えない。というか、目を開けていられないので核の場所がよく分からない。
ストーク「だから言ったろうが…」
ストークが落ち着いてスライムをひっつかみ、引っ張りながら短剣で核を刺して倒してくれた。
ストーク「剣を正確に的に当てる練習もしておけよ」
ヨサクル「…はい」
ヨサクル「うえ、顔がヒリヒリする」
ストーク「溶解液のせいだな、これを顔に塗っておけ」
ストークが懐から小さな瓶を取り出し、中身をヨサクルの手に少し注いでやった。ヨサクルがそれを顔にペタペタ塗ると、赤くなっていたヨサクルの顔が正常に戻る。
ペキ「お、ポーションでござるな!」
マツ「ポーション?」
ペキ「治療薬でござるよ。治療魔法が使えなくても、治療薬があれば怪我をしても治せるでござる」
マツ「へぇ」
ペキ「反応が薄いでござるな。この世界の治療薬は、地球の薬とは訳が違うのでござるよ?」
マツ「そうなんですか?」
ストーク「何してる?! 先へ行くぞ!」
ペキ「おっと、ポーションについてはまた後で説明するでござる」
マツ「よろしくお願いします」
さらに奥へ進み、参加者が何匹かスライムを倒していくと、今度はゴブリンが現れた。
ストーク「少し多いが、こっちも人数は十分だ。よし、お前らやってみろ」
参加した新人冒険者達が一人一殺という具合にゴブリンを薙ぎ払っていく。
一人で数多くのゴブリンに襲われたりしたら危険だが、今回は人数が同等程度なので楽勝であった。
ペキも大剣で一匹のゴブリンを薙いだ。大剣の一撃ならゴブリン程度は両断されても良さそうなものであったが、手入れされていない剣なので切れ味はそれほど良くはなく、ゴブリンは中途半端な斬れ方で吹き飛ばされていった。(とは言ってもトドメは必要なさそうな程度には深手であったが。)
マツも鉄の剣でゴブリンを一匹仕留めている。余談だが、今回はあくまで研修なので、従魔による攻撃は禁止されていた。(と言っても場リーさんを置いていくわけにはいかないので一緒に連れてきてはいるのだが。)
マツ「おや、何か音が鳴りましたよ?」
ペキ「お、レベルアップでござるな。ステータスを確認するでござるよ」
マツが自身のステータスを見てみると、レベルの項目が1から2に変わっていた。
ストーク「おい、ボーッとしてんじゃねぇ!」
ストーク「くそ、数が多いと思ったら、リーダーが居やがったか!」
見ると、ゴブリン達の奥に、少し身体の大きいゴブリンが居た。肌の色も若干濃い。
ペキ「リーダー…ゴブリンリーダーでござるな?」
ストーク「そうだ、アレはお前達には荷が重いだろうから俺が相手をする」
ゴブリンがFランクだが、その上位種であるゴブリン・アーチャーやゴブリン・ソルジャーとなると一段階危険度が上がってEランクとなる。さらに、ゴブリン・メイジ、ゴブリン・リーダーとなるともう一段階上がってランクはDとなるのだ。
ちなみに教官でありギルドのサブマスターでもあるストークは元Aランクの冒険者である。
冒険者のランクは
F:初心者
E:半人前
D:一人前
C:職人
B:達人
A:人外
という認識となる。
Cランクともなれば、一流の職人として尊敬されるレベル。Bは人間国宝級の達人という事になる。
冒険者の実力ランクは不確実なものではない。ランクが一つ違うだけで、上のランクには絶対に勝てないと言われるほど確実な実力差があるのだ。
それは、魔物に対しても同様である。引退したとは言え、元Aランクの冒険者であるストークの実力であれば、Dランクの魔物など相手にならない。
だが…、ストークを警戒していたはずのゴブリン・リーダーが突然、ストークに背を向けた。
ストーク「む?! 逃げるのか?!」
だが違った。ゴブリン・リーダーはどこで手に入れたのか金属製の剣を構え、背後に向かって威嚇を放っていた。
ストーク「ちっ、あれはまさか…! ダビルヴァイパーか!? ちっ、なんでこんなところに……!」
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