第6話 収納魔法
ペキとマツとバリーさんは、このまま森の中に居ても仕方がないので街を目指す事にした。
森の中を進む二人と一匹。当然、木が生えていない(少ない)場所を草を踏み分け進んでいく事になるが、なんとなく、それはかつて道であった痕跡ではないかとペキは考えた。果たして、ペキの予想は当たっていたようで、進んでいくうちに、明らかに“道” と呼んで良い場所へと出る事ができた。そこには明らかに草の生えていない “轍” があったのだ。
ペキ「自動車…いや馬車が通る道でござるかな? 草が生えていないのは頻繁に通行があるという事でござる」
ペキ「きっとこの道を進めばきっと街に出るでござるよ」
道に沿ってあるき始めた二人と一匹。バリーさんはマツが抱いているので歩いているのは二人だけであるが。
ペキ「臭いは三十秒で慣れるって、何かで読んだでござるが…」
マツ「うん、まぁ、あまり気にならなくなっては来たけどね…」
ゴブリンの血の臭いはまだしているはずだが、あまり気にならなくなってきた。
道すがら、ペキはマツさんに異世界ファンタジー的な知識を教える事にした。ただ、まったくその手の知識のないマツさんに一から教えるのはなかなか大変であったが。
一通り説明を終えた後で、マツがペキに尋ねた。
マツ「そう言えば、“テイマー” ってなんなんですか?」
あの謎空間でオサムサンに魔法を選べと言わたが、異世界や魔法に詳しくないマツには選びようがなく。代わりにペキが選んでやった魔法は【テイム】であった。
実はその魔法の名前も覚えていなかったマツだったが、自身のステータスを確認したところ、
マツ「テイム、でしたっけ? 後で教えてくれるって言ってましたよね?」
ペキ「そうでござった。テイマーというのは、動物や魔物を手懐け、使役できる職業とかスキルの事でござるよ。強力な従魔を手に入れれば、マツ殿は戦わずとも従魔が無双してくれるでござる」
ペキ「というか、さっき、マツさんはバリーさんのステータスを見れたでござる。と言う事は、バリーさんは既にマツさんの従魔として登録されているのではござらんか?」
マツ「おお、本当だ」
マツがバリーさんのステータスを改めて表示してみると、たしかにバリーさんはマツの従魔と表示されていた。自身のステータスにも
従魔:バリーサン(ストームキャット)
という記載があるのが確認できた。
マツ「種族が、ただの猫ではなく、【ストームキャット(幼体)】となっていますね」
ペキ「やっぱり。転移したときに魔物化してるようでござるな。ストームと言うからには風属性でござるかな? ゴブリンを瞬殺したのは、恐らく爪に風系の魔法を纏わせたのか?」
ペキ「ただ、まだ幼いので魔力を使いすぎて魔力切れになってしまったのでござろう」
マツ「そう言えば、ペキさんは、空間魔法…でしたっけ? それに拘っていましたよね? それはどういう魔法なんですか?」
ペキ「よくぞ聞いて下さった! 文字通り、空間を操る魔法でござるよ。例えば…さっきゴブリンを倒した事で経験値が入ったようで、空間魔法のレベルが少し上がって【収納】という魔法が使えるようになったのでござる」
マツ「シューノウ? モノをしまう、あの収納ですか?」
ペキ「そうそう、その収納でござる」
ペキ「ほい!」
何も持っていなかったはずのペキの手の中に、先程のゴブリンが持っていた大剣が現れる。
マツ「あ、それは…さっきの魔物が持ってた剣? いつのまにかなくなっていたので、てっきり捨ててきたのかと思ってましたが」
ペキ「モノを収納できる魔法の空間を作り出すことができるでござる」
マツ「なるほど、それは便利そうですね」
ペキ「…それだけではござらんよ、空間魔法というのは異世界転移モノでは定番とも言える最強魔法なのでござる」
マツ「最強? ものを収納する魔法がですか?」
ペキ「単にモノを収納するだけではござらんよ、空間を操る魔法でござる。収納魔法はその一部に過ぎないのでござるが、それだけでも使い方によっては強力な武器にもなるでござるぞ?」
マツ「収納が……武器に?」
ペキ「例えば…、マツ殿、この剣を持って下され」
立ち止まってマツに剣を渡すペキ。
ペキ「それを拙者に向けるでござる」
言われるままに剣を持つマツ。ペキは道端に落ちていた手頃な木の枝を手に持って、剣を持つマツと対峙した。
マツ「剣というのは意外と重いもんですね」
ペキ「それは剣の中でもかなり大ぶりでござるからな」
ペキ「さて、木の枝と大剣では、木の枝に勝ち目はないでござるが…ほれこうすると」
マツ 「おお?」
ペキが持っていた木の枝で剣に触れた瞬間、マツの手の中にあった剣が消えてしまった。ペキが【収納】したのである。
ペキ「やはり、木の枝でも成功したでござるな」
ペキ「少しずつ検証していたのでござるが、どうやら触れないと【収納】はできない仕様のようでござる。ただし、直接手で触れなくても拙者が持っているモノで触れれば収納できるようでござる」
マツ「ほう、なるほど…」
ペキ「つまり。触れる事さえできれば、相手の武器や防具を取り上げてしまう事もできるという事でござる」
マツ「おお、なるほど!!」
ペキ「それだけではござらんよ。例えば、巨大な岩を亜空間に収納しておいて、それを敵の上に放り出す、なんて使い方も考えられるでござる」
マツ「岩なんて大きなものを収納する事もできるのですね?」
ペキ「……」
ペキ「今はまだできないでござるが、レベルが上がれば多分……」
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