第3話 そして、異世界へ…

タイガ「荷物持ちの魔法かよ…まぁ、便利そうではあるけど?」


碧「あの…! 収納魔法以外に、例えば【空間転移】とかは使えないでござるか?」


オサムサン「レベルが上がれば使えるようになるよ」


碧「おおやっぱり!」


タイガ「んん~? テンイってなんだ? さっき行ってたテンセイとかとは違うのか?」


碧「場所を移動できる魔法でござるよ。移動が楽になる…」


タイガ「…プッ! ダメだ…堪えられねぇ」


笑い出したタイガ。


タイガ「自らモッチーアッシーを希望するとか、さすが。陰キャっぽいオッサンは身の程を弁えてるってか? まぁたしかに? お似合いだけどな?」


※モッチー:荷物持ち役の事

※アッシー:送迎役(足代わり)の事


ニコ「ちょ、失礼でしょ。マトエテって感じだけどぉ~」


※マトエテ:「的を射ている」を誤って縮めたニコの造語。


タイガ「だろ? このオッサン、見るからにヲタクっぽいし、陰キャ確定だろ? てかなんだよ、拙者~とかござる~とか。 話し方がヲタクぽくてキモいっつーの!」


碧「ま…まぁ、君らは陽キャ、パリピって感じでござるよねぇ」


オサムサン「悪いけど時間無いんで、魔法選んじゃってくれるかな?」


タイガ「そう急かされてもな……」

タイガ「そうだなぁ、見るからに派手で目立つ魔法はどれだ?」


オサムサン「見た目が一番派手なのは火属性の魔法かな?」


タイガ「火属性? 火炎放射器みたいな感じか? いいね!」


碧(なんとなく、タイガが火炎放射器を振りかざしながら『ヒャッハー!』と叫ぶ絵面が浮かんでしまうでござるが…)


ニコ「じゃぁ、私も火……いや、タイガが火なら私は水にしよう。そのほうが助け合えそうだもんね」


オサムサン「ペキ君とマツさんはどうする?」


碧「拙者は空間魔法がいいでござる」


タイガがまた笑った気がしたが碧は無視した。


マツ「私はちょっと、何を選んだら良いか分からないんですが…てか、まだその異世界転移? というのに納得できてないというか…」


オサムサン「じゃぁペキ君選んであげてよ」


碧「マツさん、ペット飼ってました? え、動物大好き? 猫を飼っていた? そうですか、じゃぁ……テイマーとかあります?」


オサムサン「あるよ♪」


碧「魔法は、やっぱりレベルは最低からスタートで、育てていかないといけないんですよね?」


オサムサン「そうだね。ただ、今回は迷惑料って事で、ペキ君とマツさんには最初から経験値割増サービスつけてあげるよ」


碧「おお、成長チートでござるな? やったでござる」


マツ「あの、テイマーって一体なんです?」


碧「あとで説明してあげるから」


タイガ「おい、なんで二人だけサービスしてもらってんだよ、ずりぃだろ。俺達にはないのかよ?」


オサムサン「君達には【勇者】と【聖女】って強力なクラスが与えられてるだろ? しかも最初からレベルも高めで。行ったらすぐにでも魔王倒してもらわないといけないからね。ああ、そろそろ時間だ、じゃぁ頑張ってね!」


タイガ「あ、おい、もうs~」


タイガとニコの二人は消えて行った。


だが、何故か碧とマツ残ったままであった。


オサムサン「さて、お待たせ。巻き込まれてきた連中の処理は終了したから、本題に入ろうか」


碧「……え?」




  +  +  +  +




碧「拙者達が巻き込まれた側じゃなかったでござるか?」


オサムサン「うん、まぁ…彼らも選ばれたっちゃぁ選ばれたんだけど、本命は君達、というか君だよ。あの二人は、選ばれたというより、地球の神に見捨てられたって感じだかなぁ」

オサムサン「あ、マツさんは本当に巻き込まれただけかも? その辺は私も良く分かってないんだよねぇ…」


碧「神様に見捨てられるって…なんでまた?」


オサムサン「彼ら、地球で救いがたい罪を犯してるみたいでね…」


碧「あ、そういうパターンでござったか…」


オサムサン「詳しく聞きたい?」


碧「いや、いいでござる…」


なんとなく察した碧は、それ以上彼らの事は聞かない事にして、本題に戻る。先刻オサムサンは『時間がない』と言っていた。もし、転移前のチュートリアルに時間制限があるのなら、自分に関係ない話で時間を食うのは困ると碧は考えたのだ。


碧「じゃぁ、拙者達が、いや拙者が? 本当の【勇者】でござるか?」


オサムサン「いや。【勇者】の称号はさっきの彼に押し付けとけばいいでしょ。使命なんてないほうがいいと思うんだよねぇ、失敗したらペナルティもあるし」


碧「ペナルティ…? マジでござるか…」


オサムサン「まぁ、普通に真面目にやってくれれば失敗はしないとは思うんだけどね」


碧「…それじゃ、拙者達は何をすれば…?」


オサムサン「うん、特にないかな。なんてったけ、ほら、ええっと、そうだ、スローライフってヤツ? それをしてくれればオッケーだよ。後は勝手に世界が動いてくれるって話なんで」


碧「あの、もうちょっと詳しく教えて欲しいのでござるが……空間魔法って、どの程度までの事ができるでござるか?」


オサムサン「大丈夫。ペキ君が考えている通りの性能があるよ。本当は空間魔法はすんごい魔力が必要になるんだけど、ペキ君は空間魔法に関しては魔力消費を抑えられる特典もつけといてあげる。その代わり……というわけじゃないんだけど、彼ら・・がもし失敗したら、代わりに魔王の処理をお願いしたいんだ。スローライフとか言っておいて悪いんだけどね」


碧「拙者が思ってるような性能があるなら、魔王相手でもなんとかなるような気がするでござるが…」


オサムサン「うん、全然大丈夫だと思うよ」

オサムサン「それと、マツさんには、家で飼ってたペットを一緒に連れていけるようにしてあげる。家に残していったら餓死しちゃうからね」


マツ「バリーさんを? それは良かった! それだけが気がかりだったんです……バリーさんは家族も同然ですから」


ペキ「あ、家族が待ってるって言ってたのは…?」

マツ「はい、バリーさんの事です」


ずっと納得行かない顔だったマツさんであるが、ペットが一緒と聞いて、異世界転移を受け入れる気になったようだ。


オサムサン「じゃぁ、そろそろ時間だから、君達も行ってもらうね」


碧「あ、ちょっと待って欲しいでござる、まだいくつか聞きたい事が…」


しかし気がつけば、周囲の景色が変わっており、オサムサンの姿はなくなってしまっていた。


周囲に見えるのは木、木、木……


碧「どうやら異世界の森の中に転移したみたいでござるな…」


異世界転移に詳しい碧は、早速唱えてみる。


碧「ステータス!」


だが、表示された内容を見て思わず碧は叫んでしまった。


ペキ「名前がペキになってる~~~!」


おちゃめな神代理であった。



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