第8話「ポップコーン」
徳島県を抜けて、高知県に入ったタケゾウ。
徳島県では、完全な歩き遍路ではなく、
途中、民宿で一緒になった車遍路をしてる人に誘われ、車で亀が見れる施設に行ったり、温泉にもいった。ロープウェイに乗って巡拝もした。
さすがにバスや電車は使わず、なるべく歩くようにはしていた。
❃
第26番札所
参拝を終えて今夜の宿を探すタケゾウ。
この辺に、今晩の民宿が有るはずなんだが……
小さな交差点の反対方向から若い女性が歩いてくる。
若い女性とすれ違うと、いきなり右側から犬に吠えられた。
実はタケゾウは犬が苦手である。子供の時に何度か噛まれている。
犬に吠えられ腰を抜かし、無意識にすれ違った若い女性のお尻をつかんでしまった。
若い女性はビックリして、買い物のカゴを落とし、タケゾウを見つめた。
「お尻を触った! チカン、チカン」と騒ぎ出した。
若い女性は買い物のカゴの中に玉子が入っていて割れてしまったとタケゾウをなじる。
タケゾウの金剛杖を取り、杖でタケゾウを押している。
「それは、お大師様の化身だから……」
「知ってるわよ! お尻を触るから、お大師様がお怒りなのよ!」
もめているとパトカーがやってきた。
近所の商店の人が通報したようだ。
タケゾウと若い女性は派出所に連れていかれた。
❃
派出所の中。
警察官がタケゾウにたずねる。
「名前は?」
「……坂本……龍馬……」
「坂本龍馬ね……ふざけるな! 坂本龍馬がチカンなんかするか!」
タケゾウは親に連絡されたり、警察まで呼ばれたりしたら大変だと思い、大学の友達の名前をかたった。
「中牧シンジ……」
「中牧シンジね……」
警察官が調書に名前を記入する。
若い女性は高校生で夏休みのお手伝いで買い物をして、いきなりお遍路さんにお尻を触られて買い物の玉子が割れたと訴えた。
犬が吠えたと、犬の飼い主も呼ばれ、女子高生の母親も呼ばれた。
小さな町なので吠え癖のある犬だとわかり、犬の飼い主が割れた玉子を弁償することで解決した。
タケゾウは故意にお尻を触ったというわけではないということで釈放された。
「中牧シンジ、
三十歳くらいの警察官がたずねる。
この女子高生は、近所でも可愛いと評判の女の子だった。
「はあ? どうとは?」
「お尻は……どうだった?」
この警察官も女子高生のお尻を触りたいんだなと思い、タケゾウはからかった。
「そうですね、突き立ての餅のように、ふんわりと柔らかくて最高でした」
警察官は拳銃に手をかけ、しばらくして手を拳銃の形にして、タケゾウの頭を撃つまねをした。
❃
民宿に着くと、さっきの女子高生がいた。
民宿の娘だった。
「チカンのお遍路さん」
そう言うと自分の部屋に消えていった。
タケゾウはお風呂に入り、ご飯を食べ、時間があるので、宿泊しているお遍路さんに足心官道をしていた。
さっきの女子高生かタケゾウの所にきた。
「お母さんが、いちおう謝ってきなさいっていうから、ごめんね」
女子高生は足心官道に興味があるようで見ている。
「やってみるか?」
タケゾウがたずねる。
「ふくらはぎをもむの?」
「足の裏から膝まで……」
「ちょっと、やってもらおうかな……」
女子高生の足をもむタケゾウ。
(ふくらはぎ、けっこう硬いな。可愛いい顔なんだけど、いつも怒っているのは、さては慢性の便秘か?)
「ふくらはぎは、腰や腸の血流と関係が深いから、良くもむといいよ」
「やっぱりね……腸、良くないのよね……」
女子高生は自分でもふくらはぎが硬いことに気づいた。
「野菜とか食べてる? ゴボウや玉ねぎとか?」
「野菜は、あまり好きじゃない」
「ヨーグルトとかは?」
「あれは、ドロっとしてるから嫌」
「俺のおやじは、ポップコーンには植物繊維が入っていて便通に良いって、家で映画を観る時はいつも食べてるよ」
「ポップコーンなら食べれるけど、お母さん、駄菓子は食べちゃだめって言うんだ。食品添加物の入った物はなるべく食べないようにって、カップラーメンもダメなんだ」
「俺なんかカップラーメンばっかりだがな……それなら、お母さんにポップコーンを試しに食べれるように言ってやろうか?」
「本当!?」
「お母さんの足ももんでやるから連れてきな」
タケゾウは、母親の足をもみながらポップコーン1袋にレタス3個分の植物繊維が入ってるなど説明して、しばらく試していいことになった。
❃
良く朝、タケゾウの顔の前に小さな犬が現れた。
女子高生がふざけて自分の犬でタケゾウを驚かせた。
タケゾウはビックリして尻もちをついた。
小さな犬でも苦手だった。
「お母さん、しばらくポップコーン食べていいって。ありがとう。それと、あれから、二回も出たのよ。ふくらはぎのおかげかな?」
「二回も……出たのか……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます