第3話 拷問の時間

 リンの確保は余裕だった。

 男を詰めた段ボール箱をワゴン車に押し込み、逃げるように走り去る。

 そのまま、車は過疎化して、廃村となった郊外の村へとやって来る。

 空き家が並ぶこの地は彼女達にとっては都合の良い場所だった。

 とある空き家に段ボールを運び込む。

 段ボールの中には拉致したリンが眠っている。

 「よく寝てるガオ」

 クルスはリンの寝顔を眺める。

 「起こせ」

 マオに言われて、クルスはリンの襟元を掴み、上半身を起こした状態にして、平手打ちを数発、頬に食らわせる。

 それで目を覚ましたリンは突然の事に悲鳴を上げようとするが、猿轡が邪魔で声にならかった。

 「黙れ。煩いと痛くする」

 マオに言われて、リンは黙る。それから猿轡が外された。

 「捕まった理由は解るな?話す事を全部、話せ。そうすれば助かる」

 マオは冷徹にリンに命じた。

 「嫌だね。どうせ、喋っても殺される。なら、殺せ」

 「意外と覚悟が出来ているな。指を落とせ」

 「了解ガオ」

 クルスは腰からナイフを取り出す。それを見て、マオは怒鳴る。

 「馬鹿だな。指を落とすのに道具を使うなよ」

 それを聞いたクルスは一瞬、考え込む。

 「なるほど」

 クルスはナイフをしまい、リンの左拳に手を伸ばす。

 「な、なにしやがる?」

 リンはクルスの怪力に強引に握り拳を開かされた。

 「まずは中指からね!」

 クルスはそう言うと、リンの手を左手で抑え、右手で彼の中指を握った。

 そして、力任せに引っ張ったのだ。

 半端じゃない激痛がリンに襲い掛かる。1秒程度でリンの中指はひっこ抜かれるようにして、手から離された。皮膚と肉が引き千切られ、骨がむき出しになる。

 激痛を通り越して、リンは意識を失う。

 「起こせ」

 冷徹に命じるマオ。クルスは引き千切った指を放り捨て、リンの顔面に平手打ちを何発か打ち込む。その痛みでリンは起き上がるも、手にある激痛で悲鳴を上げる。

 「煩いガオ」

 クルスは黙らせる為に再び平手打ちをする。

 激痛に耐えながらリンは黙っていた。

 「どんどん、行こう」

 マオは少し笑みを浮かべて、クルスに命じる。

 クルスはすぐにリンの左手の人差し指を掴む。そして、力任せに引っ張る。

 激痛でリンは意識を失い掛ける。だが、クルスは力を緩め、リンを気絶させない。

 「マシロ。出血が酷い。止血してやれ」

 マオがマシロに命じると彼女はガスバーナーに火を灯す。

 青白い炎が噴き上がる。

 「さぁて・・・治療してあげるからね」

 マシロはダラダラと血が流れ出すリンの左手の中指の根本を炎で炙った。

 リンは悲鳴を上げる。肉の焼ける臭いが漂う。

 「美味しそうな匂いだガオ」

 クルスの言葉にマオがゲンナリする。

 「冗談でも気持ち悪い事を言うなよ」

 「冗談じゃないガオ。今日は焼肉が良いガオ」

 「マオ。そいつは本気だ」

 マシロは笑いながらガスバーナーの火を消す。

 リンは気を失っていたが、クルスが再び指を引っ張り出すと激痛で意識を取り戻す。彼は悲鳴を上げた。

 それが3時間程、続いた。

 リンの左手から指が全て、無くなった。

 「た、助けて・・・」

 リンは憔悴したように助けを求め続けている。

 「はいはい。解放されたければ、言う事があるだろ?全部、吐け。助けてやる」

 「嘘だ。全部吐いても殺すだろ?」

 リンは悔しそうに吐き捨てる。

 「はぁ・・・まだ、右手と両足の指があるな。それが終わったら、腕と足を根本から抜いてやろうか?目玉をくり抜こうか?」

 「腕と足を引っこ抜くのはやった事がないガオ」

 クルスが楽しそうに指を鳴らす。

 「や、やめてくれ。言う。言う。言うから楽にしてくれ」

 リンは覚悟した。全てを終わりにしたかった。

 「それでは質問に答えて貰う。嘘だとわかったら、罰を与える」

 そうして、地獄のような質問タイムが始まった。

 

 「結局、死んでしまったガオ」

 クルスはねじ切った頭をまるでボールでも扱うように片手でポンポンとお手玉にしている。

 「必要な情報は手に入った。不要だから良い。片付けを手伝え。血は処理剤で綺麗に消しておけよ」

 マオとマシロはリンの死体を死体袋に入れて、その場に残った血などを掃除していた。この場所は便利だが、常に監視された場所ではない。誰かに入られて拷問の形跡などを発見されたら問題なのだ。

 彼女達は公的機関ではあるが、極秘なのだ。このような非合法な方法を用いるが、公的に認められるわけが無く、世の中に知られてはいけない。その為、こうして、しっかりと後処理が必要だし、派手な事は出来ない。

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