第29話 晩餐会

 ひと仕事終えて日当も貰ったし業後は今日の稼ぎでパーっと豪華に外食チー牛大盛りだと思ってたら、メイドさんから晩餐会の案内をされた。昼の一件でもはや王宮での食事は恐怖でしかないが、断ると恨まれるやつ。お察しくださいとうるうる目を潤ませて言葉にしない嘆願をするが、回答は残酷だった。拒否権はない。


 「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」といったなにかの広告のキャッチコピーあったよね?王様って遊ぶもんじゃないんですか?いや、遊べるのは本物の王様の話か。官僚機構の人事予算握って首根っこ押さえて制度に根を張ってる本物の王様は遊べるのだろう。アーネストはアルバイトで国王のヤボ仕事を片付けてるだけの取ってつけた国王業務代行だ。ファミコンのカセットのように交換可能で代わりならいくらでもいる。


 成果物一本で存在意義を賭けて勝負するのだから、それが国民の生活を向上させたならば契約も継続して自分の待遇も良くなるのだろう。官僚機構の予算人事牛耳って売国に励んだり大商人とつるむ愚王たちの気持ちがすげえわかる。絶対ラクだよ。


サンディ〜!


心中を察してくれたのか、サンディは慰めてくれた。「お昼はお仕事の一貫の食事、夜は身体にも良いご馳走よ。むしろ楽めるとおもうわ。」


 国民の生活の基礎は一次産業から。農作物、水産物、畜産物の現物に触れて異変がないか、生産者が困ってないか、政府が出来るインフラ整備は何が必要なのかを検討するために版図の産物を国王自ら直接食べて評価検討するという制度で、昨今は世襲の王家により形骸化していたのを最近サンディが復古させたらしい。サンディ〜!💢余計なことしやがって。


 夕食も使われてる素材は品目上は昼と同じだった。しかしそれぞれの分量、用法を弁えた大変上品で身体にスッと溶け込むような見事な料理だった。さすが王宮の料理人たいしたもんだ。こいつらにかかればジャイア◯シチューもごちそうに仕上げるんじゃないか、しらんけど。


 美酒も振る舞われる。クルマで来てるっつうのにこれは罠か?断ると給仕してくれた人が罰せられる……飲む他ないじゃないか。何か適当な、断りとみなされないことわり文句は無いか?


「今日、クルマなんで……。」

アーネストがお察しくださいの断り文句を言い掛けるとサンディがフォローする。


「王宮に泊まるのイヤ? なんなら今日のところは経費でホテルと運転代行頼むけど?」


いや、まあ幽霊とか信じてるわけじゃないけど、直近で大虐殺があった現場ではある。気分の良いものではないが…、どうしてもイヤというほどガキでもない。飲酒運転でしょっ引かれる心配がないならいちいち贅沢言わんわ。仕事は仕事。


「あっ、宿泊あるんですか。じゃあお構いなく。お酒もいただきます。」

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