第28話 王宮の食事会

 テーブルに並ぶ大量の小皿。40はある。しかし中には唐辛子とか胡椒とか大葉だけの皿もある。

 えっ?定食Aとか麺類って選択肢は無いの?


 「こちらは国土それぞれの地域の産物をプロデュースポートフォリオごとに4品目づつ集めました。すべて召し上がってください。残したら産地の人が罰として農地召し上げの減産処分を受けます。」


 なんという罰ゲーム……。自分が罰を受けるのでない分人間性を試されるヤツじゃん。道理で王家一家を排除したあと誰も国王やりたがらないわけだよ。貯まるデスクワークの仕事をやるのは日当が本当に良いので問題無いが、これは厳しい。


「とても気に入って持ち帰ったって事に出来ないかな……?」


特に唐辛子とか胡椒の実とか。こんなものポリポリ食えるか。


「それでもいいですけど、一度それやるとまた増えますよ……。もともと古代より続く歴代の王がそう言って逃げてきた結果がこの量ですから。」


 泣きながら唐辛子や山椒の実をポリポリ食べる。辛いというより口の中が痛い。しかしいらんことを言えば見も知りもしない人を傷付ける事になる。美味しいとしか言うことは許されない。

 感動のあまり泣いているということにしておく。早く水飲みたい。


 産地で大量に扱ってると感覚が麻痺するのだろうが、その品目ごとに適切な分量ってもんがあるのだよ。どうやってそのことを伝えればいいのだろう?


この仕事は単価もよく、後任が決まるまではおそらく定期的に発生する案件で是非優先的に受けたいが、この飯だけは勘弁してほしい。次からは弁当持ってこよう。うん。


食事が一段落して、サンディに結論が出せない資料を分けておいた旨を伝えると、あっさりそれでいいと言われた。


いちいち全部相手してられないからピックアップで継続調査するかもしれないけど今日明日じゃないとのこと。


―――

 午後は確定分により分けた書類にハンコを押すだけだ。これはもう見た書類だから差し替えられてないことだけチラ見しながら何も考えずにハンコ押す。

 なに、こんな作業は一時間もあれば終わる。あとは差し戻し分へのお返事したためて、全部終えたのが午後4時だった。ふぅっ!

 じゃあ日報書いて日当受け取って帰るべ。夜は今日の稼ぎでパーっと豪華に外食チー牛大盛りだ。


 報告書と振り分けた書類を持って大聖堂の聖女のところに報告に行く。要はサンディの部屋だが、向こうはこっちのように代行とかつかない本物の聖女だ。


「終わったよ。こっち成果物、こっち報告書。」


 聖女にはナイトやメイドが侍っていて、こっちのことガン見してる。サンディもあちゃーって顔してる。ヤバい。ここは学院ではなくて大聖堂でサンディは学友ではなくてこの国の国体。口のきき方気をつけないとな。


「もう終わったの? あれ、1年分だから明日も来週もその次もずっとやっててくれてよかったんだけど?」


ナイトもメイドさんもウンウンと頷いてる。えっ終わらしたらいけないやつだったの?


「それは良かった。報告にも書いた通り、結論に至らないのもいくつかあったから、明日相談、次の契約で調査に行こうかと思ってたところだ。」


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