無双編
第21話 期末テスト
魔術学院は冬休みに入る前に期末テストってもんがある。バイトに追いやられる事が多いEクラス平民組はたいてい赤点だが、補講は無い。何故なら学院にとって教育効果が上がろうが上がらなかろうがなんの関係もないからだ。
しかしそれ以上に生徒がもっとめんどくさいから教員および校舎や設備を守るためという側面も否定できない。入って学費おいてそのまんま何もせずに出ていってくれることを教職員一同心より願っている。それがEクラスだ。
他方、建前上は能力に応じた授業をやって励まし合ってより高みに向かうとも言っているので、得点表は全校順位、偏差値を貼り出す。この建前でやっているがもちろん、本音はEクラスを見下すことで優越感を植え付けてA−Dクラスに教育効果を上げるためである。
子供は優越感を得るとより高みに向かおうとするものだ。劣等感はバネになんかならない。そのことを知っての「実力順」クラス分けなのだ。要はお前はバカだバカだ言われ続けるとひねくれる。
その構造を利用する学園運営側にとって、AクラスのサンディとEクラス平民組のアーネストがつるんでいるのは非常に都合が悪い。
アーネストは平民故にEクラスなのであって、答案の正答率は控えめに言ってCクラス中くらいはある。これをどうにかしてEクラス内下半分以下に落とすために、書き順とか字が汚いなどを理由にバツをつけているのだが、サンディと見せっこなんかされたら一発でバレる。
かと言ってまともに採点したらEクラス平民より下になるCクラス以下の貴族たちが保護者含んで黙ってはいない。校長詰んだ。
ということで、試験内容を大幅に変更し、座学では絶対に得られず、貴族にしかできない召喚魔術の実技試験の配点を高めて試験を行うことになった。
―――
試験監督の教官が言う。
「これは試験である。それぞれ無機物を召喚し、帰還させてもらう。 配点は90点。評点は召喚したものの重量によって決する」
召喚魔術は貴族で英才教育を受けていないと出来ない。そしてそれができる者は支配者側として、出来ない者を支配して当然という謎の序列がこの国にはある。出題からしてEクラス平民組を狙い撃ちして赤点にしようとする意志が明確だ。
召喚魔術でも無機物の場合はせいぜい財布とか筆記具くらいが限度で、それ以上の大きさ重量になると加速度的に召喚が難しくなる。噂ではAクラスに居るこの国の第二王子が聖剣を召喚できるらしい。聖剣のような重量物を召喚するのは奇跡とも呼べる難易度となる。このテストは王族の権威付けも兼ねているんだろう。
Eクラス貴族組は、ネジとかゼンマイとか召喚してみせる。おおっ本当の魔術だ!確かにすごい。バナナはおやつに入るんですかとか言ってたからバナナでも召喚して有機物だから失格とか言うのかと思ったが、テストとなると真面目だねぇ。貴族の証なんだね。
まあ品性下劣な、いじめっ子のこいつらにだけ負けたくはないね。簀巻きにして殴る蹴るの暴行をしてたのはこの貴族組だ、忘れねえからな。
続いてEクラス平民組筆頭である大商人の息子、サムエル君は、「シロ!おいで!」と詠唱して近くにいたペットの犬を召喚した。
尻尾を振っておすわりするわんこをハグして撫でて「よしよし、いい子だ。」と首輪を外し召喚物として計量する。モフモフ羨ましいぞ。
うん。こりゃ一本取られたわ。さすが商人の息子。有機物を媒介にして無機物を召喚する。目的物以外が一緒に来てはいけないという条件はない。そしてネジとかゼンマイとかより圧倒的に重い。敵は討ってくれた。
でもきっと奴らはこれをインチキ呼ばわりして無効だと主張するだろう。オレたちふたりで守ってやるからな任せてくれ。二位の順位はオレたちふたりで占めるから四位以下に追いやることになるがそこは許してくれ。
アーネストは腕時計リモコンに、「ライトニング、ちょっと来てくれ!」と詠唱してライトニング号を召喚(物理)し、帰還(物理)させる。重量1000Kg。
同日に行われたサンディもライトニングを召喚した。やっぱりな。そう来てくれなくちゃね。サンディは貴賓枠なんだ。それに失格は出せない。同じものを同じ手順で呼んだアーネストはもちろん、芋づる式にサムエル君にも失格は出せなくなる。
Aクラスにいるこの国の第二王子が10分の詠唱をして聖剣を召喚した5kgが第三位だ。もちろん同点一位はサンディとアーネストの召喚したライトニング号だ。
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