第9話 学園祭(設営バイト)

 魔術学院には付属の初等部がある。日本で言う中学校のようなもんだ。Eクラスのような隔離クラスもない代わりに、名門のご子息ご息女以外入るすべが存在しない。

 ここでの成績が魔術学院の高等部に来たときA−Dクラスへの振り分けに使われるというのは建前で、通常は家の格によって決まりはじめから最後まで変化することはほとんどない。

 クラス分けはむしろ国の体制側で大きな変化が生じたときや、偶発的に家格の序列が変わった事によって変わる。Eクラスのアーネストとは関わり合いのない話だ。

 じゃあなんでアーネストがここに来てるのか。学生課で見つけたバイトの現場だ。学園祭の出し物ってのは生徒が主体になって生徒自身でプロデュースするモノとなってるが、貴族のご子息ご息女は小さい頃から人を使う事に慣れるのも勉学であると発注書を出すだけなのだ。

 別にクソガキが現場出てきて生意気にああせいこうせい指示出してくるわけではないが、生意気なクソガキどもがお客様であるという構図は確かにそうなのだが、その不快感を書面という媒体で隔離しているのだ。

 クソガキが書いた発注書を解釈してバイトが設営する。リハーサルなしの一発勝負であるため、発注書の解釈違いで思ってるものと違ってもそのまま学園祭を行わなければならない。そういった出たとこ勝負の対応力も帝王学の一貫なのだそうだ。良いご身分だこと。

 実はこのバイトに限ってはEクラスの生徒が歓迎される。発注書の文字面は確かに実現してるが、「違う、そうじゃない!」と言わせるのが抜群に上手い人間が揃っているからだ。この洗礼を受けて毎年間違いようがない発注書を書けるようになっていき、ゆくゆくは国の指導者になっていくのだ。

 オリハルコンで出来た小道具などという仕様となんの関係もない指示があるとちょっと前に流行ったけどもうオワコンになったガラクタを用意するというのは定番だ。アーネストはEクラスとしては生真面目なので、先輩たちの武勇伝を学ぶ事がこのバイトをやる上で最も重要な隠されたマニュフェストである。

 Eクラスのバイト仲間とともに魔術学院初等部の校内をいい具合にゴミやツバを撒き散らかし半壊ボロボロに仕上げて、現場責任者氏から感謝されて給料を受け取る。こいつもなかなかパンクな奴だな。

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