第4話 絶望的に貴方に捧ぐ。
〜サンディ(本名はヨシオ)視点〜
あの日海に沈めかけられていた私を救ってくれたあのお方。あの日燃え上がった二人の恋はたしかに存在した永遠の思い出になるはず。そう思っていました。
そもそもわたくしは転生者。前世はいじめられっ子の男の子ヨシオでした。その最期は同級生たちによって口にガムテープ、手足はロープに縛られ学校の屋上から落とされました。享年10歳。
そんな前世のわたくしにも、ささやかな楽しみはありました。おうちに帰って見るナイト・ライダーです。主人公はあまりパッとしない方でしたが、スーパーマシンに乗って巨悪をバッタバッタと凪飛ばす爽快なテレビドラマです。どんな辛い日々もナイトライダーの次の放送を見るまでは死んでなんていられません。自殺なにそれ?美味しいの? 自殺ではなくて他殺で終わった前世とともに続きの物語が見れませんでしたわ。
そんなこんなでも今世では17歳なので既にこっちのほうが長いです。前世はあるにしてもそこに戻ることは出来ませんし、ナイト・ライダーの続きも見ることは叶いません。なにせ異世界で、こちらにはテレビドラマと言う物自体ありません。すべて遠い昔の戯言ですわ。
転生者の例に漏れずバリバリのハードチートをもらって魔術学院のある国の隣国で聖女をやっています。
ハードチートで魔術は無双ですが、国の役職であるところの聖女は本人が無双なだけではだめだそうです。後続の育成のためにも体系立てて学んできなさいということで国費で留学してきました。
よくわかりませんが国際関係を背負ってる人にこの国の恥部は見せられないとAクラスに編入されました。Aクラスの皆さんはとても親しみやすく、すぐに仲良くなれそうです。ところで恥部とはなんのことでしょうか?
それはそれとしてお気づきでしょうか?その、なんといいますか本来なら月のものと付き合うように出来てない魂が女性の肉体にインストールされてまして、そのあの……。留学先の魔術学院の初登校日、その日は特に多い日でした。貧血で倒れました。
魔術学院の初日、校長の話は五劫の擦り切れかと思うほど長く、同じ話を何度でも何度でもしつこく最初の5秒でいった以上のことは2時間掛けても一度も出てきませんでしたわ。本当に頭の中腐ってるんじゃないかしら。
Eクラスの皆さんは校長の話が完全に一字一句同じになるタイミングで、「はいみなさんご一緒に!」の音頭を取ったり、キャッチボール始めたり。ぞろぞろと教室に帰り始めたり面白い人たちです。あのクラスに行きたかったわ。
そう思った頃、貧血で倒れました。意識を取り戻したときには校長の話もちょうど最終コーナーを回ったところで、意識が戻ってから30秒で終わりました。図らずもラッキーと思ってしまいましたわ。
あの面白いEクラスの人たちを一目見ようと近づいていったらアーネストに再会して、運命を感じたのに………。
貧血で倒れていたのを見られていたみたい。恥ずかしい。もうお嫁にいけない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます