第4話禍々雅が迫ってくる
禍々雅の唐突な告白が配信直後に知らされる。
「それで…どうしてコラボを受けるって話になるの?」
鉄星はバーチャル上でもわかるぐらいに動揺の表情を隠せずにいた。
多少声が震えているようで自らの立場がピンチだと悟っているようだった。
「星ちゃん。どうしたの〜?声が震えてるけど…?」
「だって…雅ちゃん…めっちゃモテるから。二人で街を歩いていても何度もナンパされるじゃん…」
「いや、あれはナンパ街だっただけだよ。それに私は声掛けやすいだけでしょ。星ちゃんは話しかけるなオーラ凄いからね…」
「確かにバリアは張ってるけど…それにしても雅ちゃんはコアなファンも多いし…ガチ恋勢も沢山じゃん。それなのに賢人くんを好きとか言って良いの?炎上しない?」
「炎上?しょっちゅうしているからもう慣れたよ。星ちゃんも賢人くんのことで多少は炎上したんでしょ?」
「うん。かなり怖かった…」
「ははは。純粋だねぇ〜」
二人は対戦格闘ゲームをしながら世間話をするように他愛もない会話を繰り広げていた。
雅が二連勝をしたところで鉄星は悔しがると一度コントローラーを置いたようだった。
「そうだ。流れちゃって忘れてたけど…何でコラボしようと思ったの?」
話をほじくり返すように禍々雅に問いかけると彼女も思い出したように口を開く。
「そうそう。私も忘れてたや。星ちゃんって賢人くんの実家知っているんだよね?この間の配信で言ってたでしょ?」
「う…うん…それがどうしたの?」
「住所教えて。大学生の時に一人暮らししていたアパートは知ってるんだけど。流石にもうそこには住んでいないみたいだったし。連絡先は変わっているし…あ…そうか。連絡先知ってるでしょ?教えてよ」
「え…いやだ…」
「何で?負けたんだから罰ゲームでしょ?教えてよ」
「それとこれとは同じ天秤には乗せられない」
「じゃあどうしたら教えてくれる?」
「絶対に教えない…」
平行線なまま二人の会話は進んでいくが禍々雅が途中で折れると配信も終わりの時間が訪れる。
「途中でギスってしまいましたが…今日の配信も楽しかったね。雅ちゃんもありがとうね。またその内コラボしましょう」
「うん。私こそありがとう。またそのうちね〜」
「ではお別れです。お疲れ様でした〜」
そうして配信が終了すると僕は次の日の仕事の準備に取り掛かっていた。
そこにふっとスマホの通知音が聞こえてくる。
「配信観てた?」
もちろんそれは鉄星こと晴子からなのであるのだが。
「観てたよ」
簡潔に返事をすると彼女は僕を試すような言葉を打ち込んでくる。
「雅ちゃんが誰か知りたいんじゃない?」
その質問に僕は否定の言葉を打ち込む。
「いや、今は良いかな。仕事で精一杯な部分もあるし…」
「そっか…仕事が忙しくなかったら知りたい?」
「どうだろ?運命的に繋がっている縁なら何もしなくても再会できるでしょ」
「私達みたいに?」
「それはどうかな…」
適当なスタンプを送ってメッセージを終了させるとベッドに潜り込んで翌朝を待つのであった。
翌日。
出勤すると部長に声を掛けられて会議室に向かうことになる。
「四条はVTuberって知ってるか?俺はもうあまりついていけないんだが…ネット上の有名人って認識で合ってるか?」
「まぁ。その様な感じで概ね間違いないと思いますけど…」
「うん。それでだな。うちの商品とコラボしたいって言ってるVTuberが居るんだよ」
「そうなんですか。有名な方となら良い相乗効果を生むんじゃないですか?」
「禍々雅さんって言うらしんだが…その人がこの件の担当は是非、四条にしてほしいって言うんだ…知り合いか?」
「あぁ…僕は正体を知らないんですが…相手は僕知っているみたいで…」
「よくわからないが…この案件は四条に任せようと思う。上もそう判断した。良いな?」
「了解です」
「よし。じゃあ後日、打ち合わせになるから。スケジュールはデータで送っておく」
「はい」
そうして僕は流れに任せるようにこの案件を担当することになるのであった。
後日。
打ち合わせの日のこと。
会議室に向かった僕を待ち受けていた禍々雅の正体とは…。
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