第2話鉄星の歌枠配信

ゲーム配信に歌枠。

雑談配信の他にも鉄星の配信には色々と種類がある。

他にも仲間とのコラボなどなど…。

様々な枠がある中で彼女の歌枠はかなりの人気を誇っていた。

単純に歌が上手いのも人気の理由だし途中の合いの手や感想読みの時間も盛り上がりを見せていた。

本日も歌枠の時間だったのだが…。

懐かしい曲が流れてきて心が少しだけ暖かくなっていくと彼女の歌は終わる。

「上手い!」

「懐かしい!」

「学生の頃よく聴いた!」

その様なコメント欄を目にした鉄星は何度か頷くとコメントを返していく。

「私も学生の頃にこの曲知った〜。懐かしいよね」

鉄星のコメント返しにリスナーは再びレスを返す。

「女子高生時代の星ちゃんがこの曲聴いてたとか…渋いな」

「激熱スギ!」

「女子が聴くイメージ無かったんだが…」

再びコメントを読んでいた鉄星は軽く苦笑すると返事をした。

「あぁ〜…これも好きな人の影響なんだよね〜。賢人くんがカラオケで歌ってて。それがあまりにも上手だったから聴くようになって好きになった感じだね。期待させて申し訳ない」

爆弾発言の様なコメントを残した彼女は次の曲にいくようにマウスをカチカチと操作しだした。

「おい!そいつの話やめろ!」

「もうその人の話聞きたくない」

「話題変えない?」

早速コメント欄が荒れだすが鉄星は気にもせずに淡々と口を開く。

「私の配信が気に入らないなら違う娘の配信を観に行くといいよ。私は自分がしたいこと話したいことしかしないから。私がしたいことを楽しんでくれる人だけがこの場にいれば良いからね。ガチ恋されても構わないけれど。絶対に叶わない夢だって思っておいて。絶対に現実にはならないから。そういう釣りみたいな行為は私は絶対にしないよ。少しでも可能性や甘い夢を見たかったら他の娘のところに行ってね」

鉄星は辛辣な言葉を口にして次の曲のイントロを流し始めた。

リスナーとのやり取りよりも僕は少し前の鉄星の発言が気がかりで仕方がなかった。

「賢人くんがカラオケで歌ってて…」

この発言に引っかかりを覚える。

僕もこの曲が好きで学生時代からよくカラオケで歌っていたのだ。

一緒にカラオケに行った女子はかなりの数いる。

同じ学校の女子に他校の女子。

バイト仲間に先輩。

沢山いる中から鉄星の正体を探るのは非常に困難に思えた。

鉄星が一体誰なのか。

本日も僕はわからないままなのであった。


配信終了ボタンを押す。

一人残された部屋で私は四条賢人を思い出していた。

「賢人くんはどんな人となら付き合うの?」

過去の私が四条賢人にした質問を思い出していた。

「ん?なんだろう。尊敬できる人かな。例えば自分よりも優れた部分がある人とか。そういう人を好きになると思うよ」

「ハードル高いね…賢人くんよりも優れた部分を見出すのは難しそう…」

「そんなことないよ。この世にいくらでもいるでしょ。芸能人とか有名人とか?」

「………そうだね」

四条賢人の何気ない発言で私はこの先の進路を固めた瞬間だった。

何らかな方法で有名になり四条賢人に告白する。

その方法がたまたまVTuberだったのだ。

「もう…迎えに行っても良いのかな…」

私の独り言が部屋の隅へと飛んでいき残響しているようだった。

意志を固めると翌日、四条賢人の実家に顔を出そうと思うのであった。

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