第11話 体育倉庫(隆之介視点)
「起立、礼、ありがとうございました」
ホームルームが終わった。すぐに体育倉庫に行かないと!!
「おっ、隆之介ちょっと来てくれるか」
俺が教室を出ようとした時、担任の水野先生に呼び止められた。
「急いでるんですけど、他の人じゃダメですか?」
「この机を一緒に職員室まで運んで欲しいんだよ。女子には頼めないしな」
男子ならまだいるじゃないか。
「隆之介なら、頼みやすいしさ」
「じゃあ、運びますよ!」
「ちょ、ちょっと待てよ」
「用事あるんですよ!」
「分かった、分かった」
ここで押し問答して時間を無駄にはできない。てか、無茶苦茶重くないか。
「中に何か入ってるんですか?」
「大事なものだからね。気をつけてよ」
一体何が入ってるんだか。揺らしてみるとゴトゴト音がする。
「ちょ、ま……揺らさないでくれよ」
なんだ、これ……。階段を気をつけて上がり、机を職員室まで届けた。
「はあっ、疲れたよな。少し休んでくか? お茶くらいなら出すよ」
「だから、急いでるんですって!」
俺は慌てて体育倉庫に向かおうと職員室を出た。
「あっ、隆之介くん?」
「ごめん、ちょっと急いでるから……」
「この娘、熱が出たらしいの。保健室まで連れて行ってくれないかな」
間違いない。これは俺を体育倉庫に向かわさないとするフラグだ。
「ごめんなさい。他を当たってよ」
「ちょっと!!」
後ろから声がするが聞こえないふりをした。好感度重視のゲームなら変な噂になるのだろうか。
「おそーぃ!!」
俺が急いで行くと、体育倉庫の裏から顔を覗かせる美憂の姿があった。
「こっちだよ。もうすぐ来るから隠れてよ。私がいいって言ったら出てよね」
「分かった」
俺も美憂の隣に隠れる。
「ちょっと、先生に机運んで欲しいと頼まれてね」
「今後はそんなのは全部無視してね」
「いや、それは悪いと言うか」
「全部の頼み事聞いてたら、助けられなくなるからね」
やはり可憐救助を阻止するフラグなんだろう。
それにしても美憂は可愛いな。体育倉庫の裏側には小さな換気用の窓が開いてるんだが、そこに届かないのか小さな椅子に乗って覗いていた。
「どうしたの?」
「いや、可愛いなと思って」
「もう、背はそんなに小さくはないんですからね」
美憂の顔は真っ赤だった。いつも並ぶ時一番前にいるから、美憂は小さいと思う。
「女の子は小さい方が可愛いよ」
俺がそう言うと明らかに不満そうに口を尖らせた。
「隆之介くんは、その……背の大きな娘と小さな娘どっちの方が可愛い?」
「俺は小さい娘が頑張ってると応援したくなります!」
「子供じゃないんだよっ!」
なんか核心部分を踏んでしまったようだ。美憂は明らかに不満そうに頬を膨らませた。
その時、スカートのポケットから小さい何かが落ちた。
「あっ、ごめん。取ってくれるかな?」
「へえ、朝霧さんって、鈴なんて持ってるんだね」
「別にネコじゃ無いよ。これ持ってると安心するんだよ」
ネコそのまんまじゃないか、と心の中で思ったが、言うとややこしくなるから俺は心の中で言うだけに留めておいた。
美憂は大事そうに鈴を両手で持ってポケットに入れた。小さい時からずっと持ってたのかな。その鈴はかなり古びて錆び付いてるのか音も鳴らないようだった。
「あっ、来たみたい」
美憂の声が真剣さを増す。
「その、こんな人気のないところで何を……」
小窓から見ると体育倉庫の外に立つ可憐と海斗の姿があった。
「分かるだろ。体育倉庫の中でやることと言ったらさ」
体育倉庫の中でやることと言ったら体育用具の出し入れだと思うのだが……。
「ほら、来いよ」
海斗の腕が可憐の肩を抱くのが見えた。
「えと、その……こんなところで……その……」
「ここの方が燃えるだろ」
「燃えるなんて、そんなことない……よ」
くそっ、何を言ってやがる。海斗の頭の中は性欲だけかよ。俺は動こうとした。
「ちょっと待って……、もう少しだけ……」
俺が飛び出そうとすると、美憂に止められる。
海斗は可憐の肩を抱いて倉庫の中に入る。抵抗できないのか。
「えと、その……ここ埃っぽいし……いけないよ」
「そんなこと言って、ここは濡れてるじゃないか」
海斗の手が可憐の股間を弄る。
「あっ、……ダメだよ。そんなところ……汚いよ」
可憐は頬を赤らめて涙目で訴えかける。やっとのことで海斗に背を向けた。
「でもよ、ここは正直だよ。なあ、たまらないんだろ! 俺もさ、ほら見てみろよ」
海斗は可憐の頭を後ろから無理やり押す。
「ほら、おっきくなってるだろ! 嬉しくねえか。可憐がおっきくしたんだよ」
「わたし、何もしてないよ」
「これからするんだよ!!」
海斗はズボンのチャックを下げて、可憐をそこに押し付けようとした。
「行ってあげて!!」
俺は急ぎ体育倉庫に入った。そこにはパンツをずらした海斗と、股間に顔を押し付けられようとしてる可憐がいた。
「お前!! 何、勝手に入ってきてるんだよ!」
「お前の方こそふざけるなよ!! 嫌がってるじゃねえかよ!!」
「嫌がってるだと……、ははははっ、可憐お前嫌がってるのか?」
本当にいやらしい顔だ。
「嫌がっては……」
フラグ世界の呪いか。やはり可憐を救うことなんてできないのか。ここで同意されると救えない。俺は思い切り目を閉じた。
「どうしたんだよ。早く言えよ」
寝取られフラグが確定してるんだ。可憐は俺に出て行ってと言うしかない。
「嫌……です!」
「はあっ! 聞こえなかったんだが」
「嫌です!! 隆之介助けて!!」
無理だと思ってた。とても助けを求めてくるなんて思えなかった。でも、可憐は俺に手を伸ばしてきた。
「可憐、逃げるぞ!!」
俺は可憐の手を取って体育倉庫から逃げ出した。
「隆之介、お前、ふざけんなよ!!」
俺の後ろから海斗の声が響き渡った。
――――――――
隆之介くん、今回は頑張りました。
えと、このお話は自分が小説を書き出した時にやりたかった事なんだと思います。
自分の他作と比べてもおそらく明らかに毛色の異なるものになると考えています。
どこまでできるか分かりませんが、終わった時にあー、そう言うことかと思っていただければ良いなって思います。
これまでやりたかったけどやれなかった、そんなお話になればいいなと思ってます。
本当は言いたくて仕方がない。
我慢です 冷汗
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