孫恩3  不失作句踐

さて、孫恩そんおんは八郡が呼応した、という話を聞くと配下にこう言っていた。

「天下に平和が取り戻されたならば、諸君らと共に朝服をまとい建康けんこうに立つこととなろうな」


やがて劉牢之りゅうろうし長江ちょうこうを渡り始めた、という報せが届くと言う。

「わしは浙江せっこうを境として割拠しよう。勾践になれぬことなぞあるまいよ」


しかしすぐさま劉牢之が長江渡河を終えたと聞くと、言う。

「朕は逃げるを恥とせぬわ」


そして男女二十万人あまりを引き連れてあっという間に海上の島に逃れた。このとき官軍に追いつかれるのを懼れ、道々に宝物や女子供を捨てていった。この頃会稽周辺はそれでも物資そのものは豊かであったため、豪華でないものもなく、劉牢之らの軍はそうした宝物子女の回収に暇なく、このため孫恩は脱出が叶ったのである。


朝廷は謝琰しゃえん會稽内史かいけいないしとし、徐州じょしゅうの文武に海岸エリアを守備させた。






初,恩聞八郡回應,告其屬曰:「天下無復事矣,當與諸君朝服而至建康。」既聞牢之臨江,復曰:「我割浙江,不失作句踐也。」尋知牢之已濟江,乃曰:「孤不羞走矣。」乃虜男女二十餘萬口,一時逃入海。懼官軍之躡,乃緣道多棄寶物子女。時東土殷實,莫不粲麗盈目,牢之等遽於收斂,故恩復得逃海。朝廷以謝琰為會稽,率徐州文武戍海浦。


(晋書100-3)




先に魏書で見ちゃったから感動が半減しちゃったのが悲しいところではあるんですが、やっぱり何度見ても孫恩さんの名言製造マシーンぶりはヤバいですね。まぁけどこれ見てたらさすがに小説版孫恩さんのキャライメージにはならなかっただろうからこれはこれで良し!

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