桓玄27 追討軍と対峙

○晋書


魏詠之ぎえいし桓歆かんいん曆陽れきようで破り、また諸葛長民しょかつちょうみん芍陂しゃくはで破った。桓歆は單馬にて淮水わいすいを渡り、逃亡した。


劉毅りゅうき劉道規りゅうどうき下邳太守かひたいしゅ孟懷玉もうかいぎょくを率い桓玄かんげん崢嶸洲そうれきしゅうで戦った。このとき追討軍は数千であり、対する桓玄軍の兵力は圧倒的なものであった。しかし桓玄は万一の敗戦を恐れ、自らの戦艦のそばにはすぐ脱出できるよう、輕舸が結びつけられていた。これを見た兵士たちは、もはや戦意をまともに支え切れずにいた。


追討軍は風に乗じ火を放ち、我先にと攻めかかる。桓玄の軍は大敗し、輜重を焼いて夜に逃亡した。ここで郭銓かくせんは投降した。桓玄の旧将であった劉統りゅうとう馮稚ふうちらは手勢四百人ほどを集め尋陽城じんようじょうを襲撃、一時は陥落させたが、劉毅は建威將軍けんいしょうぐん劉懷肅りゅうかいしゅくを発し鎮圧させた。


桓玄は穆帝の皇后であった何皇后と安帝の皇后である王皇后を巴陵はりょうにて解放した。このとき殷仲文いんちゅうぶんは桓玄の乗る戦艦に同乗していたのだが、散り散りとなった軍を再編したい、と偽って別船に移りたいと申し出、そのまま桓玄より離反、何氏及び王氏を回収し、夏口かこうに逃れた。


桓玄は江陵城こうりょうじょう入りすると、馮該ふうがいが使者をもたらし、さらなる抗戦を求める。桓玄は從わず、漢水かんすいを北上、梁州刺史りょうしゅうしし桓希かんきのもとに亡命を考えたが、このとき桓玄は完全に人心を失っておりもはやあらゆる命令が行き渡らなくなっていた。


桓玄は馬に乗り江陵城を脱出、門に至ったところで、闇の中左右から斬りかかられた。すんでの所で当たらずに済みはしたが、周辺がたちまち乱戦となり、桓玄は奇跡的に船に到着することが叶った。


桓玄のいなくなった江陵では、荊州別駕けいしゅうべつが王康産おうこうさんが安帝を奉に南郡なんぐん府舍入りし、太守たいしゅ王騰之おうとうしが文武を率いその警護に当たった。



○魏書

新規情報はない。




魏詠之破桓歆于曆陽,諸葛長民又敗歆於芍陂,歆單馬渡淮。毅率道規及下邳太守孟懷玉與玄戰于崢嶸洲。于時義軍數千,玄兵甚盛,而玄懼有敗衄,常漾輕舸於舫側,故其眾莫有鬥心。義軍乘風縱火,盡銳爭先,玄眾大潰,燒輜重夜遁,郭銓歸降。玄故將劉統、馮稚等聚黨四百人,襲破尋陽城,毅遣建威將軍劉懷肅討平之。玄留永安皇后及皇后于巴陵。殷仲文時在玄艦,求出別船收集散軍,因叛玄,奉二後奔于夏口。玄入江陵城,馮該勸使更下戰,玄不從,欲出漢川,投梁州刺史桓希,而人情乖阻,制令不行。玄乘馬出城,至門,左右於暗中斫之,不中,前後相殺交橫,玄僅得至船。於是荊州別駕王康產奉帝入南郡府舍,太守王騰之率文武營衛。

(晋書99-27)


初,玄留德宗妻子巴陵,殷仲文與玄同舟,乃說玄求別舫收集散軍,遂以德宗妻歸于建鄴。玄入江陵城,南平太守馮該勸玄更戰。玄欲出漢中,投梁州刺史桓希,夜中處分將發,城內已亂,禁令不行,將親近腹心百許人出城北。至城門,左右即於闇中斫玄面,前後相殺,交橫盈路。玄僅得至船。德宗入南郡府。玄既下船,猶欲走漢中。

(魏書97-19)




魏書の方があとで書かれているだけあって、情報の時系列がスッキリしていますね。まぁ情報量は晋書のほうが圧倒的ですが。


ネタバレ。次話、桓玄は死ぬ。

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