桓玄22 義軍進軍

○晋書


劉裕りゅうゆうが義軍を率い竹裏ちくりに出たと聞くと、桓玄かんげん上宮じょうきゅうに移り、百僚もそこに従った。侍官を招集し、みな省中にとどめた。ようじょえんせい六州に大赦をなし、桓謙かんけん征討都督せいとうととく假節かせつを加え、殷仲文いんちゅうぶん桓脩かんしゅうの代任とし、頓丘太守とんきゅうたいしゅ吳甫之ごほし右衛將軍うえいしょうぐん皇甫敷こうほふを発し、義軍を防がせることとした。


劉裕らは江乘こうじょうにて戰い、呉甫之を斬り、羅落橋ららくきょうに進めば與皇甫敷と戦い、その首級を上げた。


桓玄はこれらの戦果を聞くと大いに恐れ、道術の使い手たちを集め、いかようにすれば勝てるかを占わせたり、属僚たちにも手立てを問うた。


そのときの、曹靖之そうせいしとのやり取りである。

「朕は敗れるのか?」

「神怒り人怨まば、おそるべきことに」

「人は怨もう、なぜ神が怒る?」

しんの宗廟をないがしろとしたのみならず、大楚だいその祭とて曽祖以上に及ばぬこと、まこと神がお怒りです」

「卿はなぜ諌めなかった?」

「近習らが陛下をぎょうしゅんよと称える中、どなたが聞く耳を持つとおっしゃるのですか?」


桓玄はいよいよ恐れ怒り、桓謙や何澹之かたんし東陵とうりょうに駐屯させ、卞範之べんはんしには覆舟山ふくしゅうざんの西に潜ませた。兵力は合計二万。対する劉裕は蔣山しょうざんに至ると、病人けが人らに油に浸した旗をもたせ、山を登らせた。それぞれの旗ををみちみちに立たさせた。


桓玄の偵察隊が、蔣山の様子を報告する。

「劉裕の軍は各所を抑えており、到底数え切れませぬ」



○魏書


桓玄は表向き怒り狂っていたがその内心では何も手立てが見つからず、うろたえていたと語る。




裕率義軍至竹裏,玄移還上宮,百僚步從,召侍官皆入止省中。赦揚、豫、徐、兗、青、冀六州,加桓謙征討都督、假節,以殷仲文代桓脩,遣頓丘太守吳甫之、右衛將軍皇甫敷北距義軍。裕等於江乘與戰,臨陣斬甫之,進至羅落橋,與敷戰,復梟其首。玄聞之大懼,乃召諸道術人推算數為厭勝之法,乃問眾曰:「朕其敗乎?」曹靖之對曰:「神怒人怨,臣實懼焉。」玄曰:「人或可怨,神何為怒?」對曰:「移晉宗廟,飄泊失所,大楚之祭,不及于祖,此其所以怒也。」玄曰:「卿何不諫?」對曰:「輦上諸君子皆以為堯舜之世,臣何敢言!」玄愈忿懼,使桓謙、何澹之屯東陵,卞範之屯覆舟山西,眾合二萬,以距義軍。裕至蔣山,使羸弱貫油帔登山,分張旗幟,數道並前。玄偵侯還云:「裕軍四塞,不知多少。」

(晋書99-22)


玄加桓謙征討都督,召侍官皆入止省中。玄移還上宮,百僚步從。赦揚、豫、徐、兗、青、冀六州。遣頓丘太守吳甫之、右衞將軍皇甫敷北拒劉裕於江乘。裕斬甫之,進至羅落橋,又梟敷首。玄外粗猛,內恇怯,及聞二將已沒,志慮荒窘,計無所出,日與巫術道士為厭勝之法。乃謂眾曰:「朕其敗乎?」黃門郎曹靖對曰:「神怒民怨,臣實憂懼。」玄曰:「民怨可然,神何為怒?」對曰:「移晉宗廟,飄泊無所;大楚之祭,不及於祖。此其所以怒也。」玄曰:「卿何不諫?」對曰:「輦上諸君子皆以為堯舜之世,臣何敢諫。」玄使桓謙、何澹之屯于東掖門,卞範之屯覆舟山西,眾合二萬。

(魏書97-16)




伝説の名言「ひとはともかく、なぜ神が怒るのか」が現れましたので満足です。桓玄伝完ッ!


とは言えまぁ別に神は怒っとらんやろってゆうね。どこまでも人の過ちであり、人に滅ぼされるに過ぎません。


しかしさっきから曹靖之さんの立ち位置がいちいちおいしいな。

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