桓玄11 元顕自壊

○晋書

桓玄かんげん新亭しんていに至ると、司馬元顯しばげんけんの軍は自潰した。


桓玄は建康けんこう入りし、詔勅を捏造する。

「義の旗が建康に集った。罪は司馬元顯にあり。司馬道子しばどうしには既に別に沙汰を言い渡してあるゆえ、そなたらがいま武装解除することは、また義心に添うものである」


さらに詔勅をねつぞう、そこには桓玄に百揆ひゃっきを統べさせるべく、侍中じちゅう都督ととく中外諸軍事ちゅうがいしょぐんじ丞相じょうしょう錄尚書事ろくしょうしょじ揚州牧ようしゅうぼく領徐州刺史じょしゅうししとし、また假黃鉞かこうえつ羽葆鼓吹うほこすい班劍はんけん二十人,置左右長史さゆうちょうし司馬しば從事中郎じゅうじちゅうろう四人,甲杖こうじょう二百人上殿を加えるものとした。


桓玄は上表して司馬道子及び司馬元顯の惡事を連ね、、司馬道子を安成あんせい郡に放逐、司馬元顯を公開処刑とした。桓玄は司馬道子の居城であった太傅府たいふふ入りすると太傅中郎たいふちゅうろう毛泰もうたい、毛泰の弟の遊擊將軍ゆうげきしょうぐん毛邃、太傅參軍たいふさんぐん荀遜じゅんそん、先の豫州刺史よしゅうししであった庾楷ゆかい及びその息子の庾鴻ゆおう吏部郎りぶろう袁遵えんじゅん譙王しょうおう司馬尚之しばしょうしらを処刑。また司馬尚之の弟である丹陽尹たんよういん司馬恢之しばかいし廣晉伯こうしんはく司馬允之しばいんし兄弟と、驃騎長史ひょうきちょうし王誕おうたん太傅主簿たいふしゅぼ毛遁もうとんらを交州こうしゅう廣州こうしゅう諸郡に配流とし、また道中にて司馬恢之、司馬允之を殺害させた。


兄の桓偉かんい安西將軍あんざいしょうぐん荊州刺史けいしゅうししとし、南蠻校尉なんばんこういをけんむさせた。西府軍の総取締である。いとこの桓謙かんけん尚書左僕射しょうしょさぼくしゃとして中軍將軍ちゅうぐんしょうぐん領選りょうぜんを加え、その弟の桓脩かんしゅう右將軍うしょうぐん徐兗二州刺史じょせんにしゅうししとし、桓石生かんせきせい前將軍ぜんしょうぐん江州刺史こうしゅうししとした。長史ちょうし卞範之べんはんし建武將軍けんぶしょうぐん丹陽尹たんよういんとし、王謐おうひつ中書令ちゅうしょれい領軍將軍りょうぐんしょうぐんとした。


そして大赦し、大亨だいりょうと改元。桓玄は丞相については辞退、代わって太尉たいいとなり、平西將軍へいせいしょうぐん豫州刺史よしゅうししを兼務した。また袞冕こんべんの服,綠糸戾綬りょくしれいじゅを加え、班劍を六十人に増やし、劍履上殿,入朝不趨,贊奏不名という、ほぼ皇帝に近い特権を自らに与えた。



○魏書


内容はほぼ同一、そこに司馬元顕伝をふりかけている。




玄至新亭,元顯自潰。玄入京師,矯詔曰:「義旗雲集,罪在元顯。太傅已別有教,其解嚴息甲,以副義心。」又矯詔加己總百揆,侍中、都督中外諸軍事、丞相、錄尚書事、揚州牧,領徐州刺史,又加假黃鉞、羽葆鼓吹、班劍二十人,置左右長史、司馬、從事中郎四人,甲杖二百人上殿。玄表列太傅道子及元顯之惡,徙道子于安成郡,害元顯於市。於是玄入居太傅府,害太傅中郎毛泰、泰弟遊擊將軍邃,太傅參軍荀遜、前豫州刺史庾楷父子、吏部郎袁遵、譙王尚之等,流尚之弟丹陽尹恢之、廣晉伯允之、驃騎長史王誕、太傅主簿毛遁等於交廣諸郡,尋追害恢之、允之於道。以兄偉為安西將軍、荊州刺史,領南蠻校尉,從兄謙為左僕射、加中軍將軍、領選,脩為右將軍、徐兗二州刺史,石生為前將軍、江州刺史,長史為卞範之為建武將軍、丹陽尹、王謐為中書令、領軍將軍。大赦,改元為大亨。玄讓丞相,自署太尉、領平西將軍、豫州刺史。又加袞冕之服,綠糸戾綬,增班劍為六十人,劍履上殿,入朝不趨,贊奏不名。

(晋書99-11)


玄至新亭,元顯棄船,退入國子堂,列陳宣陽門前。元顯欲挾德宗出戰,而軍中相驚,言玄已及南桁,乃回軍赴宮。既至中堂,一時崩散。元顯奔東府,惟張法順一騎隨之。玄乃為侍中、都督中外諸軍、丞相、錄尚書事、揚州牧、領徐州刺史,持節、荊江二州、公如故;假黃鉞、羽葆、鼓吹、班劍二十人;置左右長史,從事中郎四人;甲仗二百人入殿。於是收道子付廷尉,免為庶人,徙于安城郡;殺元顯并其子,及豫州刺史司馬尚之、吏部郎袁遵、張法順等。又滅庾楷於豫章。徙尚之弟丹楊尹恢之、輔國將軍允之,及國寶、王緒諸子于交、廣州。玄白德宗,大赦,改年為大亨。玄讓丞相、荊江徐三州及錄尚書事。乃改授太尉、都督中外、揚州牧、領平西將軍、豫州刺史;綠綟綬,加袞冕之服,劍履之禮,入朝不趨,讚拜不名,增班劍六十人,甲仗二百人入殿。

(魏書97-8)




桓玄さんのこの拙速ぶりって別に教訓にするまでもなく「そんなムチャすればそりゃコケるだろ」以上の感想がわかないわね……。

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