桓玄4  王国宝打倒


○晋書


桓玄かんげん荊楚けいその地に何年も過ごしていたが、その期間にはさして大きな動きも見せなかった。とは言え荊州刺史けいしゅうししとして赴任した殷仲堪いんちゅうかんからは大いに警戒され、また敬意を払われてもいた。


中央で中書令ちゅうしょれい王國寶おうこくほうが権勢を握ると、地方長官たちの勢力を削減せんと動き出す。建康内外はこの動きに騒然となった。中でも王恭おうきょうが国を憂う、という形で反対の表明を上げる。桓玄は内心、ここで功績を上げておくべきと考え、殷仲堪に説く。

「王國寶とあなた様はもともと対立しておられた。動き出すのが単に遅いだけに過ぎないでいた。しかしやつはいま王緒おうしょと手を組み、ことを動かそうとしている。そこにはまともな志らしき志もない。これに引き換え王恭殿は孝武帝こうぶてい陛下のもと皇后の兄上でおられ、朝野にの輿望を受け、重んじられている。いまはまだ動きを見せておらぬが、もし動き出せばあなたは同胞の筆頭として見られることとなろう。あなた様は孝武帝こうぶてい陛下より抜擢を受け地方司令として配されておられるが、いまだ任地の人心を掴みきれているとは言えぬ。みなはあなた様が知恵者であらせられることは知っているが、方面司令の器ではない、と考えているのだ。もしあなた様に中書令としての招集が掛かり、殷顗いんぎ殿を荊州けいしゅう刺史ししとする、といった辞令が発されたとしたら、あなた様はどう対処されるお積もりか?」


殷仲堪は言う。

「わたしもその事態になることを長らく気に病んでいた。あなたはなにか計略をお持ちだろうか?」


桓玄は言う。

「王國寶の邪悪さはすでに天下の知るところ、中でも王恭殿のやつへの憎しみは、いまはもはや誰よりも募らせておられよう。あなた様は使者ひとりを密かに送り、王恭殿に決起を促されるべきだ。春秋しゅんじゅうの昔、晋の趙鞅ちょうおう晉陽しんようにて知氏ちしを討ち滅ぼしたがごとく。そして朝廷の傾いたありようを正すのだ。おれもまた荊楚の兵を総動員し、長江を下り馳せ参じよう。そして王恭殿を盟主となし、皆で決起をなせば、成し遂げられぬことなぞあるまい。ことがなれば、その功績はせい桓公かんこうしん文公ぶんこうしゅうを盛り立てたにも等しき功績となろう」


殷仲堪は疑念をいだき、なかなか決心しきれずにいた。やがて王恭よりの手紙が寄せられた。そこには殷仲堪や桓玄に、ともに朝廷を立て直すべし、とあった。


かくして殷仲堪と桓玄は決起。司馬道子によって王國寶が殺されると。すぐに兵を引いた。桓玄が廣州こうしゅう刺史の座を求めると,司馬道子もまた桓玄を警戒しており、特に桓氏の勢力基盤たる荊楚に桓玄を置いたままにしたくなかったため、この要望を受け入れた。



○魏書


司馬德宗しばとくそうが皇帝として立つと、その叔父である司馬道子が実権を握る。側近として王國寶おうこくほうを寵愛し、そのことが人々より忌み嫌われた。桓玄は荊州刺史の殷仲堪を説得し、王恭を盟主として担ぎ上げ、王國寶を討つこととした。殷仲堪もそれに従った。王恭に建業に攻め上らせ、その途中にて合流。同時期の大挙を誓い合い、ついに決起した。間もなくして王國寶らが平定された。




玄在荊楚積年,優遊無事,荊州刺史殷仲堪甚敬憚之。及中書令王國寶用事,謀削弱方鎮,內外騷動,知王恭有憂國之言,玄潛有意于功業,乃說仲堪曰:「國寶與君諸人素已為對,唯患相弊之不速耳。今既執權要,與王緒相為表裏,其所回易,罔不如志。孝伯居元舅之地,正情為朝野所重,必未便動之,唯當以君為事首。君為先帝所拔,超居方任,人情未以為允,咸謂君雖有思致,非方伯人。若發詔征君為中書令,用殷顗為荊州,君何以處之?」仲堪曰:「憂之久矣,君謂計將安出?」玄曰:「國寶奸凶,天下所知,孝伯疾惡之情每至而當,今日之會,以理推之,必當過人。君若密遣一人,信說王恭,宜興晉陽之師,以內匡朝廷,己當悉荊楚之眾順流而下,推王為盟主,僕等亦皆投袂,當此無不回應。此事既行,桓文之舉也。」仲堪持疑未決。俄而王恭信至,招仲堪及玄匡正朝廷。國寶既死,於是兵罷。玄乃求為廣州,會稽王道子亦憚之,不欲使在荊楚,故順其意。

(晋書99-4)


皇始初,司馬德宗立,其會稽王道子擅權,信任尚書僕射王國寶,為時所疾。玄說荊州刺史殷仲堪,令推德宗兗州刺史王恭為盟主,以討國寶,仲堪從之。會恭使亦上,相逢於中路,約同大舉,並抗表起兵。尋平王國寶等。

(魏書97-3)




なんだろう、桓玄の発言がめっちゃ読みづらい。どうしても超訳になってしまう。どうしたもんかしらねこれ。まぁよくわからんのでこのままにします。

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