第3話


「まずはこれだねぇ。『好きです。付き合ってください』」


「これ社長への質問であってます?」


「あってるよー」


: 草

: あの人のガチ恋勢も多いからな

: すまんそれ送ったの俺です


「送った奴コメ欄に居るようですが社長ガチ恋勢に通告します。あいつもう結婚してて奥さんとラブラブですので勝算はありませんから諦めた方が良いですよ。ちなみに奥さんめっちゃ可愛かったです」


「逆になんでお前が知ってるんだよ?」


 もう何年あのバカに付き合わされていると思っているのだ。そのくらいの情報は握っている。まあ実際のところお弁当届けに来られた時に会っただけなのだけれど。


「んじゃ次いくよ。えーと、『マヤさんの仕事教えてください』」


「私ですか。主にソフトウェアの開発や改修、サーバーとアオイの管理、収録やライブ、配信のお手伝いなんかもしてますね。後は収録後のライバーさんにご飯を作ってあげたりもしたりします」


「ねえ、今しれっと私を管理してるとか言わなかった?」


「さあ?」


:反撃

:てえてえ

:管理....成程

:Sっ気もあるのな


「んじゃ次、『ライバーの採用基準は?』」


「応募要項見りゃ分かると思いますよ」


「それ言われたらもう質問の意味ないよね」


「分かりましたよ。まあ偉そうなことを言える立場でも何でもないですけど、私が見てきた限りでは視聴者視点に立って見やすい動画編集や思わずクリックしてしまいたくなるようなサムネ、そしてまた続きが見たいと思えるような内容。そんな視聴者が没頭できるようなコンテンツを作り上げられるだけの実力があれば入れると思いますよ」


 正直な所、いつも通りのテンションで配信しているのではあるが社長に向けた質問である以上、ふざけながらもある程度は真面目に答えておくことにする。


「おお~、真面目な回答来たね。みんな、頑張れよー」


「アオイからは何かないんですか?」


「私?元々社員だったからわかんないな。でも一応ライバーにならないか?って話が来た時には普段のテンションと声で選ばれたって言われかなあ」


: 確かに。

: まあ初期メンバーは社員だったからなあ

: でもそれぞれがちゃんと個性があって凄いよな


「個性って言っても声と雰囲気だけだよ。だけどそのポテンシャルを引き出せるトークスキルとか配信を見たいって思わせられるような力があるかどうかじゃない?」


「そういう事らしいですね。私要ります?」


: はえー参考になるわ

: 必要

: めっちゃ必要

: いじけ始めてるマヤさん可愛い


「めっちゃ必要だから安心して?それじゃあ次行こ次。『いつも何してるんですか?』」


「私たちに無茶ぶりしてきます。それもギリギリ無理しすぎずにできてしまう程度の」


「やめよう、アンカーの闇が見えてきちゃうよ」


: アンカーの闇を見た

: 就活生です。御社が第一志望です。

: それでも無理難題は押し付けないの優しい

: マヤさんも大変なんだなあ


「後は広報から公式企画の会議から配信とか、実は暇そうに見えて色々やってるみたいですよ。それと暇なときは大抵配信でやってるゲームとかの作業してますね」


「なんだかんだ言ってちゃんとしてるね」


「ここまで無茶ぶりしておいてなんもしてなかったらスタッフらがキレますよ」


「なんもいえねえ」


 そんなこんなで集められた質問をアオイが選別しながら私と一緒に捌く。

 そんなことを繰り返しているうちに時間は経ち、気が付けば配信時間の半分を消費していた。


「ふう、こんなもんかな」


「いつもあれだけの量捌くって凄いですね」


「初めての配信でここまで出来るのも才能あると思うよ」


:せやな

:ライバーだもんな

:もうモデルも実装されてるもんな

:というか真面目になんで2Dモデルあるんだ?


「あー、モデルについてですか」


「そうだね。多分気になってる人も多いようだよ?」


「まあ、私が出たときも言ってた人居たんですけど。私のモデルとアオイのモデル、似てると思いません?実は両方ともモデル作ったの私なんですよね」


:確かに

:そういえばアオイのイラストレーターもモデラーも詳細無かったな

:言われてみなくても似てるな


「まあ結論から言えばアオイのモデル作った時についでに好みとノリで作ってみたってだけなんですけども」


「ということで技術を持て余した奴の暇つぶしということだったらしいです」


:草

:つええ

:流石つよつよエンジニア


「んじゃこのままマヤの自己紹介でもしてもらおうかな」


「といってもデッキも設定も何もないですよ?」


「そりゃ困ったね」


「あー、じゃあ非公式wikiの添削しに行きましょう。それで良い感じに尺も使えるでしょ」


「公式配信でそういうこと言うのやめない?」


:草

:好き勝手やってますなあ

:やっぱり配信でみんなが言ってた通りなんだよなあ


「えーっと画面映して......これで見えました?」


:見えたぞ


「それでは非公式wikiに飛びましょうか」


「まず非公式wikiを公式で見に行くのがおかしいんだよね」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る