小人閑居な毎日の、大人大騒ぎな一日

 俺が誰かさんのせいで遅ればせながら教室に入った頃には四時間目は終わっていたので、親睦を深めようということで、班のメンバーで昼食を共にすることになった。

「ぼっち飯回避したの初めて! 泣きそう!!」

「うんうん、よかったね、うっちー」

「お前ら仲いいじゃん。朝山はアレか? ツン……ドラ?」

「ツンデレ。二人の仲を凍りつかせてるんじゃないわよ」

「なんだって?! 二人はそんな関係だったのか……!」

「麗奈ちゃん……! よかった……! 本当によかった……!」

「ちょっと待っていやマジで違うホントに」

「おいおい照れんなよ、麗奈。Naturally《ナチュラリー》,自然体でいこうぜ」

「死にてぇのか貴様」

「すみませんでした」


 こんな幸せな時間があっていいのか。自分でも信じられないような、そんな昼休みだった。


 昼休みが終わり、ライブがあるといい無断早退する晴貴を快く見送り、俺は再び授業を受ける。

 五時間目も後半に差し掛かり、集中量が切れてきた俺が、藤岡特製金庫&スマホカバーの礼は何にしようと考えていると、席の後ろのほうが何やら騒がしい。

 どうやら窓の方を向いているようだ。『おい、五月蠅いぞ』という教師の声も気に留めず、むしろ声は大きくなる。

 真面目系クラスメイトもついに窓の外をちらりと見、そのまま硬直する。

 

 これはただごとではない。教室を見渡すと朝山も天ヶ瀬も時矢も外を見ている。

 異常を悟った教師が教壇から降り窓へ向かう。

逆張りしているどころではないと空気の読める素晴らしい俺も、それに倣う。



 そこには、今となっては遥か昔のような、ほんの五時間前に言葉を交わした老婆と、黒スーツの男達。街を出るんじゃなかったのかよ、なんて揚げ足を取れる雰囲気じゃない。俺がコミカルに突っ込めるような雰囲気ではない。

 ぶっちゃけ人殺せそうなオーラだ。なにぶん距離があるので表情までは見えないが、もう、凄みがある。タクト事件のときの比じゃないくらいだ。

 

 もしかして。いや、時期的にそれしかない。文脈的に、それしかありえない。


      


       「怪人二十面相」

 

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